「うつわのような佇まい」がコンセプトの象印STAN.シリーズは出しっぱなしでもキッチンに馴染むデザインがポイント!

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2025年10月01日 19:01  BCN+R

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象印STAN.シリーズ新製品の電気ケトルと加湿器
 象印が2019年から展開するSTAN.シリーズに、このほど電気ケトルと加湿器が加わった。近年、家電メーカーでは機能や性能に加え、デザインを重視する傾向が強くなっている。同社は9月中旬、ロゴマークも含めたデザインに対するメディア向け説明会を開催した。

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●創業101年目の年にSTAN.シリーズを発売

 象印が展開するシリーズ名のSTAN.とは、STANDBYとSTANDARD、STANCEの3つのキーワードに共通する頭の4文字が由来だ。STANDBYは、『暮らしにスタンバイする』ことで、STANDARDは『スタンダードをつくり続ける』こと、STANCEは文字どおりSTAN.の『スタンスを伝える』ことを意味している。

 同社がSTAN.シリーズを発売したのは2019年。前年の2018年が創業100周年で、101年目の新たなスタートを切るという意味も含め、次の時代を担う世代に向けて新しい暮らしの道具を提案しようとの方針で生み出されたのが、STAN.シリーズである。

 機能と使いやすさ、日常生活に溶け込むシンプルなデザイン性をコンセプトとしてIH炊飯ジャーと電動ポット、コーヒーメーカー、ホットプレートの4製品を2019年にリリースした。

 2020年にはIH炊飯ジャーと電動ポットにホワイト色を追加し、2021年は自動調理なべ、2022年にはオーブンレンジとオーブントースターが加わり、STAN.シリーズのラインアップは7製品となった。2025年8月までのシリーズ累計販売は約65万台で、売上合計は100億円超を達成しているという。

 STAN.シリーズの新製品として9月1日から追加された製品は電気ケトルCK-PA08とスチーム式加湿器EE-FA50の2アイテム。電気ケトルは転倒湯もれ防止構造や自動電源オフ、空だき防止など6つの安全設計とともに注ぐ量をレバーで2段階に調整できる機能を搭載している。

 スチーム式加湿器は、フィルターレスと広口容器によって手入れが簡単。電源のアイコンをタッチすると操作キーが浮かび上がり、消灯モードにすると最小限の表示で就寝時も邪魔にならない明るさだ。また、2つのセンサーと3段階の加湿モードで室内を快適な湿度にコントロールする。

●製品に表示するロゴは象のシンボルマークのみにシフト

 製品に表示されている企業のコーポレートマークは、デザインの一要素でもある。誰でも一度は目にしているであろう象のイラストを採用した同社のロゴマークは、時代によって変わってきた。現在のイラストと社名を組み合わせたロゴマークは2003年からの導入である。

 同社の堀本光則商品企画部長は「もともと象のマークはシンボルマーク、アルファベットの社名はコーポレートロゴとして分けてデザインされており、両方を組み合わせる形で使用していました」という。

 STAN.シリーズ以前の2018年にステンレスタンブラーを発売する際、その形状が非常にシンプルなため、マークだけを採用してみた。その後、STAN.シリーズのデザインコンセプトが『うつわのような佇まい』と決まり、「シンプルなうつわのイメージはステンレスタンブラーと同じで、STAN.シリーズではシンボルマークのみにすべきと考えて採用しました」と堀本氏は語る。

 STAN.シリーズの発売に際して、東京・北青山に期間限定でコンセプトショップを開設したが、そのショップでも「シンボルマークに目を向けてもらうために象のマークを目立たせて配置しました」。来場者はもちろん、SNSでも改めて象のシンボルマークに注目が集まり、評価するコメントが多く寄せられたという。

 シンボルマークのみの表示に切り替えた成果として堀本氏は「2021年に6件のグッドデザイン賞を受賞し、弊社としては過去最多の受賞でした。しかも翌2022年には受賞が10件に増えました。これは少なからずシンボルマークのみの表示が貢献したのではないかと考えています」と述べ、現在では原則的にシンボルマークのみの表示をスタンダード仕様にしてきていると話した。●デザインビジョンは「くらし やさしく、ここちよく」

 STAN.シリーズのプロダクトデザインを担当したのは、クリエイティブユニットTENT。前述したようにSTAN.シリーズのデザインコンセプトは「うつわのような佇まい」で、このコンセプトについてTENT代表取締役の治田将之氏は次のように語った。

 「炊飯ジャーのデザインを依頼されたとき、たまたまユーザーの方から使用中は炊飯ジャーをキッチンに出しておくけど、使い終わるとしまうという話を聞きました。ものづくりに携わる者にとっては残念な気持ちになりました。しかし、食器のようにキッチンに馴染んだデザインであれば、しまわれずにキッチン全体の風景の一つになるのではないかと考え、そこを軸にしてデザインを展開しました」

 実際に部屋やインテリアの写真共有サイトであるRoomClipには、STAN.シリーズの製品が置かれたキッチンの写真が数多く投稿され、STAN.シリーズのコンセプトが伝わっていることを同社も治田氏も実感したという。

 新製品の電気ケトルでは通常、水量を示す窓が本体に付いているが、「シンプルにまとめたいと考えたときに窓はあまりに主張が強い」と考えて窓をなくした。加湿器は前述のとおり、触ると操作キーが浮かび上がるようにしてノイズのないデザインとなっている。

 象印では外部のデザイナーとのコラボだけでなく、社内でもデザイン面を強化するため、2022年に『くらし やさしく、ここちよく』というデザインビジョンを策定。同時にこのビジョンを商品に表現していくメソッドとして設定したのが、『やさしさのカタチ』だ。

 同社の岡島忠志商品企画部デザイングループ長は、「『やさしさのカタチ』は、おもいやり、きびしさ、つよさ、なじむ、うけつぐ、かわるという6つのキーワードから成り立っています」と語る。

 前半の3つのキーワードは使う人のことを考えて、製品を厳しくチェックして長く使えるようにするためのもの。後半の3つは「生活に溶け込んで象印らしいものづくりの姿勢を伝承し、ときには変化もアリということを表しています」と岡島氏は解説する。

 近年、表面がマット調でやさしい質感を持った製品が増えており、岡島氏は「弊社のデザイナーも『やさしさのカタチ』を取り込んだデザインを指向するようになってきています」という。

 また、製品の色についてはモノトーンが主流になってきているが、同社ではたとえ白と黒でも他社製品とはニュアンスの異なるこだわりを持ったカラーにしているとのこと。「象印の家電は、家電っぽくなくなってきたなと感じていただけたら嬉しいですね」と岡島氏は結んだ。

 キッチン周りの家電製品は基本的な用途や機能がある程度決まっており、デザイン面ではどのメーカーもさしたる違いはないと思われがちだ。だが、象印はユーザーの使い心地やキッチンとの親和性も高い“暮らしの道具”として家電製品をデザインしている。

 単に見た目だけにとどまらない同社のデザインはSTAN.シリーズが体現しているが、今後発売する製品にも確実に同社のデザイン思想が盛り込まれているはずだ。家電量販店の売り場では、このような観点で改めて象印の製品を見てみよう。(BCN・風間理男)

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