<田中将大を知る男たち>(前編)
【楽天時代知る平石洋介氏】
巨人田中将大投手(36)が日米通算200勝を達成した。「田中将大を知る男たち」と題し、2回にわたってレジェンド右腕の素顔に迫る。前編は、楽天時代の先輩にあたる平石洋介氏(45=日刊スポーツ評論家)。
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将大で真っ先に思い出すのは、やはり13年の日本シリーズ第7戦だ。私も楽天のコーチとしてKスタ宮城(現楽天モバイルパーク)にいたが、3点リードの9回に将大の名前がコールされたときの球場の雰囲気、大歓声には鳥肌が立った。確か霧雨で、「あとひとつ」が流れて。ああいう場面には、前にも後にも出合ったことがない。
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試合中から、最後は将大が投げるのは何となく分かっていた。実は、試合前のコーチミーティングでこんな一幕があった。将大は前日に160球を投げ完投負け。最初はベンチ入りメンバーから外れていた。すると、星野監督が「本人に確認しろ! 今日で終わりなんだぞ!!」と担当コーチに怒った。急いで確認したら、投げるつもりだと。それで、第7戦もベンチ入りが決まった。
将大が入るのは当然だった。野手からすれば、実際に投げる、投げないは別。ベンチにいるだけで「行く気だ」となって引き締まる。そういう存在だった。試合が始まると、ブルペンで準備を始めていた。それを見て「最後は将大だな」と思った。
東日本大震災から2年後の球団初優勝&日本一だった。楽天は復興に向かう東北のシンボルになっていた。その中心が将大だった。勝つたびに、東北の皆さんが元気になってくれたと思う。何しろ、シーズン24勝無敗。今、思い返しても神がかっていた。彼が投げるときは2、3点負けていても野手が取り返すし、藤田(現DeNAコーチ)をはじめ、好守を連発する。チーム全体が「田中を負けさすわけにはいかない」と、1つになっていた。
一投手としては、とても研究熱心。キャリアを重ねるにつれ、ひたすら打者に向かっていくスタイルから強弱をつけ、ここぞでギアを上げるようになった。プロ入り当初は直球にスライダーだったのが、スプリットも覚えた。
最近はさらに違いを感じる。巨人では野手によく声をかけ、時に笑顔も見せる。前から声かけはする方だったと思うが、年齢が上がり、チームでの立ち位置も変わった。若い頃はマウンドで目をつり上げる姿が印象的。あれはあれですごかったが、経験を重ねた今、楽しんで野球をやっているようにも見える。いいなと思う。
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200勝は「おめでとう!」の一言しかない。ただ、本人も思っているだろうが、これで終わりではない。201勝、202勝と目指していって欲しい。
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