※写真はイメージです 移動に欠かせない交通手段のひとつである電車。しかし、通勤や通学の時間帯は混雑するため、殺伐とした雰囲気がある。車内では譲り合いの精神を持って、お互い気持ちよく過ごしたいものだ。
今回は、電車内で他の乗客の身勝手な振る舞いに困惑したという2人のエピソードを紹介する。
◆車内に広がる濃厚なニオイ
中村浩一さん(仮名・40代)は、仕事帰りの電車内で思わぬ光景に遭遇した。
「夜10時を過ぎていて、もう空腹と疲労でヘトヘトでした。やっと座れたと思ったら、独特なニオイが漂ってきたんです」
ニオイの正体は、蒸したての“肉まん”。中年女性が、肉まんの入った紙袋を膝の上に乗せていたという。
「最初は、“袋に入っているだけかな”と思って我慢してたんです。でも、車両を包み込むぐらい濃厚なニオイでした」
そして次の瞬間、その女性は想像を超える行動に出た。
「目の前で堂々と箱を開けて、食べはじめたんです!」
遠くからは舌打ちも聞こえ、車内の空気は一変した。しかし、女性はお構いないに“むしゃむしゃ”と食べ続けたそうだ。
◆“別の意味”で「納得がいかない(笑)」
中村さんは食欲を刺激されつつも、“別の意味”で怒りを覚えたという。
「実は、肉まんが大好きなんです。だからニオイ自体は我慢できました。でも、どうしても許せないのが……“からし”をまったく使わなかったことなんです(笑)」
肉まんには必ずといっていいほど“からし”がついてくる。それをつけてこそ本来の味が引き立つと信じる中村さんにとって、女性の食べ方には納得できなかったようだ。
「からしの小袋は箱のなかに入っているのに、見向きもしません。『なんで使わないんだ』って心のなかで叫んでいました」
食べ方にムカついた中村さんだが、翌日は家族と一緒に、からしをたっぷりつけて肉まんを味わったという。
「もう、そのときは余計においしかったですね」
◆足を広げて座席を独占
田中大輔さん(仮名・30代)は、仕事帰りに満員電車へ乗り込んだ。
「空席はないと思ったら、3人掛けの座席が空いて見えたんです。急いで向かったら、真ん中に男性が“どかっ”と座っていました」
足を大きく広げ、左右のスペースを完全にふさいでいたのだ。
「両側には誰も座れなくて、立っている人は“少し詰めてくれ”っていう無言の圧を出していました。でも、誰もなにも言えませんでした」
車内の空気が不穏になりかけたそのとき、思わぬ展開が待っていた。
「次の駅で、大柄な外国人男性2人が陽気に話しながら乗ってきました。そして、そのわずかな隙間に無理やり体を押し込んだんです」
◆両側から押され縮こまる男性
突然の圧に、男性は素早く姿勢を変えたという。
「さっきまで広げ放題だった足を閉じ、両側を外国人に挟まれて小さくなっていました」
ところが、今度は外国人同士が言い争いをはじめたとのこと。
「声がどんどん大きくなって、身振りも激しくなっていきました。その手や腕が、ときどき男性の体に当たっていたんです」
男性は下を向き、寝たふりをしながらじっと耐えていたそうで……。
「なにも言えずに小さくなっている姿が、なんだか気の毒でした。でも正直ちょっとだけ笑ってしまいました」
やがて外国人が降りると、車内は静けさを取り戻した。
「そこに残ったのは、きっちりと足を閉じて座る男性です。数分前とは別人みたいでしたね」
電車では個人のマナーが大いに問われる。だが、不快に感じても声をあげにくい空気があるのは事実だ。自分の何気ない行動が周囲の迷惑になっていないか、あらためて意識する必要があるだろう。
<取材・文/chimi86>
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。