200万円の巨大ハニワも!廃墟のような建物に“無数のハニワが溢れる”茨城の珍スポット。駐車場の時点で強烈だった

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2025年10月03日 16:31  日刊SPA!

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前庭には1体200万円というひときわ大きなハニワが目立っていた
 廃墟、巨大工場、珍スポット、戦争遺跡、赤線跡など全国に存在するリアルな《異空間》《異界》スポットを紹介し続ける旅行マガジン『ワンダーJAPON』。当連載は、編集長である私、関口 勇がこれまで誌面で取り上げたなかでも、「特にインパクトが強かったスポット」をピックアップしたうえ、順次紹介していくものだ。
 茨城県の筑波山北麓にある「はにわの西浦」は、創作ハニワを販売するお店だ。「創作」と聞くと「一流シェフの創作料理の店」みたいに連想しがちだが、こちらは「トンデモ創作系」。もちろん「愛すべき」という言葉が付く。

◆廃墟のような建物に並ぶ大量のハニワ

 外観は、廃校の一部をリノベーションしたかのような大型の木造建築。蔦に覆われ、かなり植物に侵食され、一見「廃墟かな?」と思う。古電柱を再利用し建てられた建物の中は、1階も2階もものすごい数のハニワが並んでいる。前庭や入口にも大量のハニワが溢れ、建物と別棟の周囲も草まみれのハニワが塀のようにズラリと取り囲む。

 さらに交差点を越えた所にある第二駐車場の大部分も無数のハニワが占拠。ツル性植物がからみついたハニワも多く、植物の力で割れるのではないかとヒヤヒヤしながらも、あまりにも強烈な様子にシャッターを押す手が止まらなくなる。

◆学者が「こんなものはハニワじゃない」と怒り出した

「はにわの西浦」は、本物のハニワをモチーフとしつつもアレンジを加え、サボテンや丸型郵便ポストなど実際にはありえないものまでハニワとして売っている。時代的にはるかに古い縄文時代の遮光器土偶や火焔土器のハニワもある。同じ粘土の素焼きでも、土偶・土器は野焼きなのでススで黒ずみ、ハニワは窯で焼くので黒くならない。以前学者が訪れて、「こんなものはハニワじゃない」と怒り出すこともあったらしいが、そんなことはおかまいなしだ。

 先代の山中征一さんが、素焼きの植木鉢を製造する「西浦製陶」を創業したのが1960年頃。当時、鉢植えの花が大人気で、植木鉢を作れば作るだけ飛ぶように売れた。だが、70年代に入るとプラスチック製の植木鉢が主流に。周りの同業者は次々廃業するなか、もともとハニワ作りが好きだった先代は業態転換を決意。ちょうど店の前に県道が整備されるのを機に、ハニワの店としてオープンする。運よくNHKで紹介され、全国からお客さんが訪れるようになり、値の張る大きなハニワも飛ぶように売れたそうだ。

◆本物そっくりに作らず。モチーフも多彩

 数年前に亡くなった先代の後を継いだ息子の誠さんは言う。「おやじは現物を見たらその通りに作れる腕があるのに、本物そっくりに作らない」と。無表情の馬や猿も愛くるしい笑顔に変えてしまう。しまいにはハニワではありえない、カバやカエル、お地蔵様などなんでもモチーフにしてしまう。

 先代からはしょっちゅう「本物よりもかわいくしないと売れない」「細めのハニワはふっくらさせた方が受ける」と言われ続けた。なるほど、有名な「踊るハニワ」にしても、出土した本物よりも丸みを帯びてて実にカワイイ。「最初は何作ってるんだ、おやじは」と思ったそうだが、今ではその凄さを認めているようだった。

◆今では制作不可能な「200万円」の巨大ハニワ

 テレビで紹介された頃ほどには売れなくなってもせっせと作った創作ハニワはものすごい量で、広くて古びた空間に、1階も2階も無数のさまざまなハニワが所狭しと並んでいるため、なんとも不思議な雰囲気が漂っている。価格は小さなもので数百円から中程度で数千円〜数万円。1mぐらいの高さの踊るハニワで15万円というのもあった(ちょっとほしい)。庭にある3m以上ありそうなもので200万円だという。かなり強気だ。昔は分割して苦労して焼いたけど、大きなものはかつてのようにはなかなか売れないし、今では制作も不可能だという。

 2階の片隅に火焔土器ばかり大量に並んでいるコーナーがある。誠さんは笑いながら「亡くなる少し前に『自分が死んだらこれを売ればいい』とおやじが遺産として大量に作ったやつです」と教えてくれた。あまり売れてないようだが、なんとなくここはこのままでいいのだろう。

 ものがユルいハニワなだけに、商売っ気もそんなに強くないのかも……なんて言うと怒られそうだけど、「実物を見て買ってほしいからネット販売はやらない」と断言される姿には、ここにしかない魅力あるハニワを売っているのだという自負を強く感じた。
 
<TEXT/関口勇>

【関口勇】
『ワンダーJAPON』編集長(フリーランス・発行元はスタンダーズ)。廃墟、B級スポット、巨大構造物、赤線跡などフツーじゃない場所ばかり紹介。武蔵野美術大学非常勤講師。X(旧Twitter):@isamu_WJ

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