
2025年10月からTV放送が始まる『不滅のあなたへ Season3』。不死身の存在・フシが、人々との出会いや別れ、宿敵・ノッカーとの戦いなどを経験しながら、長きにわたって世界を見守っていく物語だ。
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「前世編」と位置づけられたSeason1、2を経て、Season3ではついに「現世編」に突入。Season2から数百年後の世界で、新たな旅が幕を開ける。
フシ役の川島零士さんも待ち望んでいたSeason3。現世編ならではの共感や、演技で新たに意識したポイントもあったという。フシとともに歩んだ道のりを、川島さん自身の声優人生も含めて振り返る。
[取材・文=ハシビロコ 撮影=Ayumi Fujita]
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■「フシわかってる〜!」現世編で思わず共感したシーン

――『不滅のあなたへ Season3』のTV放送が近づいてきた、今のお気持ちをお聞かせください。
僕自身大切にしている作品なので、続きをアニメで演じられてとてもうれしいです! 作品のテーマは一貫しつつも、今回の現世編では新たなキャラクターやキャストも登場するので楽しみにしていてください。
Season3はこれまでとはまったく違った雰囲気で、僕たちが生きている世界と似ている場所に、あのフシがやってきます。どのように物語が展開されていくのか、気になっている方も多いのではないでしょうか? Season2のラストでニューヨークのような場所にフシが立っているシーンを見たときには、僕も「ええー!?」と驚かされました。
――現世にやってきたフシを見たときの印象を教えてください。
フシがタピオカを飲んで笑顔になるシーンを見て「フシわかってる〜! タピオカおいしいよね!」と共感しました(笑)。僕も好きな食べ物をフシが気に入ってくれてうれしかったです。
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フシが現世の刺激すべてを楽しんでいるのも、とても印象的でした。まさか満員電車に乗っていても笑顔になるなんて! でも思い返してみれば、僕も初めて行った場所に対してすべてに楽しさを感じた経験があります。だから「わかるなあ」と思えました。
――Season3冒頭のフシのように、自由を手に入れたらやってみたいことや、行ってみたいところはありますか?
たくさんあります! 強いて挙げるならウユニ塩湖。アニメでもよくウユニ塩湖のような背景が出てくるので、実際に見たいです。ほかにも砂漠や北極など行きたいところだらけで、1年に1ヵ所制覇したとしても時間が足りません。離れた場所にもすぐに行けるフシの能力がうらやましいです。
僕は「知らないことを知りたい、まだ感じていないことを感じたい」という気持ちが強くて。だから以前『不滅のあなたへ』で海外イベントに行けたのがとてもうれしかったです。Season1の放送が始まったのはコロナ禍だったので、海外の方々の反応をリアルタイムで感じにくい時期がありました。だからこそ現地の熱量を直接感じられる機会はありがたいですね。
――知らないことや感じたことのない気持ちに興味があるのは、フシと川島さんの共通点かもしれません。
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そうかもしれません。僕が『不滅』屈指の名言だと思っている、「大人になるってしっていくってことでしょ?」というマーチのセリフがあって(Season1第5話)。「その通り!」と共感しましたし、純真無垢なマーチが言うからこそ、心に刺さりました。だから僕も新しいことを知っていこうと、これまで以上に重きを置くようにしています。

■「こんな指示は初めて見た」アフレコで驚かされたディレクション
――Season3のフシを演じるうえで、意識したポイントはありますか?
Season1、2ではフシの成長を見据えて、逆算して役作りをしていました。言葉や感情など、話数ごとにフシが獲得していくものがあったので、それ以上に行き過ぎてはいけない。全体のバランスを見つつ、演技を組み立てていきました。
一方Season3では、成長したフシが何に悩んで何を解決していくのか、といった部分を意識しています。作り込みすぎず、目の前のフシが今感じていることを追体験しながら、一緒に奔走していきました。
――アフレコ中に印象的だったことを教えてください。
『不滅』ではさまざまな動物も演じてきましたが、Season3のカメに対するディレクションは衝撃的でした。「ここからここまでのモノローグはラップ調で」と、台本に書かれていたんです。
――ラップですか!?
しかもその指示が、台本上部の端に書かれていたんです。普段は何も書かれていないような場所だったので、つい見逃していました。だからアフレコのとき、音響監督の高寺(たけし)さんに「ここのモノローグ(独白)はラップな感じでお願いします」と言われて初めて気付いて。たしかに韻が踏まれていて耳心地がいいモノローグと思っていましたが、完全に見逃していましたね。これほど珍しい台本をもらったのは、声優人生のなかでも初めてです(笑)。ぜひ文字が音になったときの、アニメならではのおもしろさを感じていただければと思います。

――Season3から新たに加わったキャラクターへの印象を教えてください。
前世では考えられなかった平和なテンションのキャラクターもいますし、シリアスな過去を背負っていない人もいて新鮮でした。でも『不滅』なので、影を落としている部分はもちろんあります。明るい部分と重たい部分の対比がさらに際だって、心のジェットコースターが激しく揺さぶられるはずです!
アフレコ現場では、とにかくミズハに振り回されました。高寺さんでさえ「ミズハの気持ちに共感できず難しかった」とおっしゃっていて。僕も最初はミズハがめちゃくちゃ怖かったです(笑)。ミズハ役の楠木(ともり)さんの演技にも、ミズハの持つ影がかなり出ていて。でも、周囲から好かれている人気者でもあり中学生の女の子でもある、というバランス感を大切にされていたと思います。
――ミズハはSeason3の鍵を握る存在でもありますよね。
そうです。作中でもさまざまな変化がありますし、『不滅』のなかでもかなり難解なキャラクターだと思いました。楠木さんともアフレコ現場で「ミズハに共感できる?」「これってどういう言動なんだろう?」と、よく話しましたね。現場全体がミズハに翻弄されている雰囲気がありました。
■フシを演じて「獲得したもの」
――川島さんにとってアニメ初主演作である『不滅のあなたへ』。あらためて、フシ役が決まったときのお気持ちをお聞かせください。
フシのオーディションに受かったのは、声優としてのキャリアを歩み始めて4年目だったと思います。なかなか仕事が決まらず、この先どうなるのかという不安があった時期だったので、オーディション合格を聞いたときは「ここまで長かった!」と感じました。気付けばデビューから8年ほどが経ち、キャリアの半分をフシと生きてきています。『不滅のあなたへ』がなかったら、今の声優としての自分はなかったかもしれません。
――キャリアのターニングポイントになった、大切な作品なのですね。
そうです。『不滅のあなたへ』ほどの重厚な作品を演じてきたことは自信にもつながりました。ほかの作品で大変なことがあっても、『不滅』をやってきたから大丈夫だと思えます。『不滅』やフシからはたくさんのものをもらったので、今後もシリーズが続いていくとしたらきちんと演技で返していきたいです。
――フシと向き合うなかで「新たに獲得したもの」はありますか?
僕の生き方の根幹が定まりました。フシはさまざまなものを感じ取れる力があるので、人の喜びだけでなく痛みなどもわかってしまいます。でも悲しみや痛みといった、どちらかといえば負の感情であっても、ひとつひとつに幸せを感じている。だから僕も日常生活でしんどいことがあっても、「今は苦しくても、その分これからのうれしさや幸せをより強く感じられるはずだ」と考えるようになりました。悩みすらも、平和で時間があるからこそ抱けるのかもしれません。フシのように全部の感情をきちんと味わおう、と思っています。

■「川島くんの声は○○が似合う」新たな気付きが武器になった
――フシ役以降、着実に役柄の幅を広げている川島さん。演じていて楽しい役や、向いていると感じた役柄はありましたか?
ありがたいことに、中性的、熱血、コメディ、クズなどさまざまな役を演じられました。でも最終的に戻ってくる場所はどこだろう、と最近考えています。「川島零士といえばここだよね」と思ってもらえるような場所です。僕としては、フシのような演じがいのあるキャラクターに帰ってくるのかな、と思っています。声優としての僕自身がどこにたどり着くのか、とても楽しみです。
――フシは川島さんの演技の軸にもなっているのですね。
最初に受かった大きな役だからこそ、僕の持っているいちばん光っているものがフシと合致していたのかもしれません。だから僕のいちばんの武器はここなんだろうな、と。そんなフシの演技をSeason3でもぜひ体感してほしいですし、「僕の軸はここだぞ!」と伝えたいです(笑)。
――「いちばん光っているもの」とは、どのような部分なのでしょうか?
きっと僕は痛みを表現することに長けているのだと思います。物理的な痛みだけでなく、心の痛みもそう。フシを経て、その実感がより強くなりました。以前ハイロ役の石川界人さん、音響監督の高寺さん、そして僕の3人で話していたとき「川島くんの声は悲劇が似合うよね」と言っていただけて。業界全体をフラットに見ている方々からの金言に、「これは僕の武器なんだ」と気付きました。たしかにこれまで演じた役柄も、痛みを経験するようなキャラクターが多かったです。
――痛みを演じるときに心がけているポイントはありますか?
僕はナチュラルな芝居が好きなので、細かい息づかいでの表現や、型にはまりすぎない演技を心がけてきました。とくに痛みを表現するときは、大きな感情に負けず、人の心のあいまいな感情の揺れ動きを丁寧にすくっていき、大切に演じようと考えています。「痛みといえばこうでしょ」というステレオタイプにはなりたくない。たとえ同じことが起きても、痛みの感じ方はキャラクターごとに異なるはずです。そこはきちんと役作りをして、丁寧に掘り下げています。

――最後に、『不滅のあなたへ Season3』を楽しみにしている方々へのメッセージをお願いします。
現世は肉体の代わりに心が痛い時代だと思います。Season3はそんな心の痛みにフォーカスして物語が紡がれていくので、ぜひ注目してください。
世界観も身近になって、自分たちの日常とリンクする部分もあると思います。だからこそ『不滅』がより近くにやってきて、視聴者の心も突き刺していくはずです。そこから感じ取れる痛みや喜びを素直に受け取ってみると、さらに作品にのめりこめると思います。積み重ねも楽しい作品なので、この機会にぜひSeason1の1話から見返していただけるとうれしいです!

【放送情報】
アニメ「不滅のあなたへ Season3」
NHK 総合 2025 年 10 月 4 日より毎週土曜 23:45(放送予定は変更になる場合があります)
【原作】
大今良時『不滅のあなたへ』(「週刊少年マガジン」所載)
【スタッフ】
総監督:佐山聖子
監督:横手颯太
シリーズ構成:藤田伸三
キャラクターデザイン:薮野浩二
音楽:川崎龍(※崎はたつさき)
音響監督:高寺たけし
アニメーション制作:ドライブ STUDIO MASSKET
主題歌:「ふめつのあなた」 作詞・作曲・編曲 中田ヤスタカ(CAPSULE) 歌 Perfume
【キャラクター】
<フシ>CV.川島零士
<観察者> CV.津田健次郎
<ミズハ> CV.楠木ともり
<サトル> CV.花森ゆみり
<アオキユーキ> CV.潘めぐみ
<ハンナ> CV. 内田彩
<イズミ>CV.伊藤静
<イツキ>CV.三木眞一郎
<みもり>CV.大久保瑠美
<ひろとし>CV.畠中祐
(C)大今良時・講談社/不滅のあなたへS3製作委員会
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