「冤罪の原因はっきりさせたい」 裁判所の責任も問う袴田さん訴訟

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2025年10月09日 21:25  毎日新聞

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国家賠償請求訴訟を起こし、記者会見する袴田巌さんの弁護団の小川秀世弁護士(右)と笹森学弁護士=静岡市葵区で2025年10月9日午後2時15分、藤渕志保撮影

 1966年に静岡県清水市(現静岡市清水区)で一家4人が殺害された事件で、再審無罪が確定した袴田巌さん(89)が9日、国と県を相手取り約6億円の損害賠償を求める訴訟を静岡地裁に起こした。逮捕・起訴した警察・検察に加えて、死刑判決を出して一度は確定させた裁判所の責任も問うた。冤罪(えんざい)の原因究明を訴訟の核心と位置づける。


 「再審無罪判決が出た今も、何が原因で冤罪事件が起きたのか明らかではない。訴訟を通じてはっきりさせたい」。袴田さんの代理人弁護士たちは提訴後の記者会見で訴えた。


 冤罪被害者が違法捜査の責任を問うことは珍しくない。今回は裁判所の責任を追及している点で異例だ。


 袴田さんは捜査段階でパジャマを着て事件を起こしたと「自白」し、検察側も原審の静岡地裁の公判でパジャマが犯行着衣だと主張した。しかし、公判中の1967年8月、袴田さんの勤務先のみそ製造会社のみそタンク内から、大量の血痕が付着した「5点の衣類」が見つかる。すると検察側は犯行時の着衣は5点の衣類で、袴田さんが逮捕前にタンク内に捨てたと主張を変えた。


 確定した死刑判決は、5点の衣類を袴田さんを犯人とする柱に据えた。しかし、再審請求で弁護側が実施した衣類に関する実験から5点の衣類に捏造(ねつぞう)された疑いが浮上。再審無罪判決は「捜査機関による捏造」と断定した。


 主任の小川秀世弁護士は「(警察と検察は)証拠を隠し、袴田さんを犯人に仕立てあげる工作ばかりしてきた。裁判所にも猛省を促したい」。笹森学弁護士は「袴田さんに死刑の恐怖を味わわせたのは裁判所以外にない」と指摘する。


 ただし、裁判官の責任を問うハードルは高い。


 判例は「裁判官の賠償責任が認められるのは、不当な目的で裁判を遂行するなど付与された権限の趣旨に明らかに背いた場合などに限る」とする。通常要求される捜査を尽くしたかどうかが基準となる検察官以上に厳格だ。あるベテラン民事裁判官は「無罪の証拠が法廷に出ていたのにもかかわらず、裁判官があえて無視したといった具体的な立証が必要になるだろう」と話した。【安元久美子、藤渕志保】



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