なるほど、だからか。スマホで録音・文字起こしできる「Notta」があえてAIボイスレコーダーを作った訳

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2025年10月14日 21:50  All About

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AI文字起こしサービスの「Notta」が、専用のAIボイスレコーダー「Notta Memo」を発売しました。スマホで録音から文字起こしまで行えるサービスを提供しながら、専用のレコーダーを発売するからには、意味があるはずです。メーカーへの取材を交えながらレコーダーの使い勝手を検証します。
かつて、筆者のような取材して記事を書くことが多いライターや編集者は、インタビューなどを録音して、それを聞きながらテキストファイルに起こす、いわゆる「テープ起こし」「文字起こし」といった作業を頻繁に行っていました。

もっとも、短いインタビューの場合は、録音を聞きながら直接原稿を書いたりもしていましたが、文字起こしのファイルがあると、やはりとても作業が楽だったのです。

しかし、いつの間にか技術の進歩は、その作業を不要にしていきました。今では、スマホで録音し、無料のWebサービスで文字起こしし、それをAIで整理して、簡単に会議の議事録などが作れるようになっています。

筆者も、取材後の文字起こし作業は、すっかりその手のサービスに任せてしまっています。おかげで、短時間で多くの取材記事を書けるようになりました。

もっとも、議事録などの使われる言葉がある程度決まっていて、内容も要約したほうが全体が把握しやすいものなら、今の文字起こしサービスで十分な成果が上がるのですが、インタビューとなると内容よりも口調や語尾、言葉の選び方や特殊な用語、固有名詞などが重要になります。

そういったことはAIの苦手分野ということもあり、文字起こし用のテキストと実際の録音の両方が必要な時もあるのですが、その度に思うのは、「録音品質の重要性」です。

なぜ「Notta Memo」は作られたのか

薄くて軽いけれど、バッテリーはフル充電で30時間連続録音可能なほどパワフル。待機時間は約28日

「Notta Memo」は、スマホからの文字起こしサービスも行っているNottaによる、文字起こし専用のボイスレコーダーです。なぜわざわざ、ハードウェアを作ったのかという点に疑問を感じた筆者は、メーカーに質問してみました。

それに対して、メーカーからは「スマホに内蔵されたマイクの品質は機種によって異なるため、⽂字起こしの精度にばらつきが生じる可能性があります。これを防ぐには、均⼀化された製品が必要です」という答えをいただきました。

やはり、録音の音質は文字起こしの品質に大きく影響するということなのでしょう。資料によると、Notta Memoは4つのMEMS(※)マイクを内蔵しています。

MEMSマイク自体はスマホなどにも使われていますが、それを録音専用に4つ搭載しているというのは、録音品質に大きな影響があると分かります。

実際、Notta Memoを使った文字起こしは、かなり安定していると感じました。録音時に本体の向きを気にせず使えるのも、複数のマイクによる録音範囲の幅広さのおかげでしょう。

※MEMSとは……Micro Electro Mechanical Systemsの略。微小なチップにセンサーや駆動機構を備える電子機械システムのこと

スマホに貼り付けるだけで◎

付属のケースを使えば、スマホの裏にマグネットで貼り付けることができる。この状態で使うと、通話内容も録音、文字起こしが行える

文字起こし専用のボイスレコーダーは、いくつかのメーカーが販売していますが、Notta Memoが面白いのは、スマホでの通話をケーブルなどを使わずに録音できることです。

しかも、レコーダーを付属のマグネット付きケースに入れれば、スマホに貼り付け可能。本体が薄いため、ケースに入れても500円玉くらいの厚みで邪魔になりにくく、普段から貼り付けておけて便利なのです。

取材や会議の録音時にもレコーダーを忘れることがなく、通話の録音もそのまま行えます。

「通話の録音には⾻伝導技術を採⽤しており、スマホの背⾯に貼り付けることで、その振動から相⼿の⾳声を拾います。また、⾃⾝の⾳声は4つのMEMSマイクを⽤いて収録され、双⽅向での⾳声取得が可能です。

さらに、内蔵ソフトウェアで⾃動的にノイズを除去しますし、マイクと⾻伝導の感度調整機能も備わっていますから、⾳源との距離やスマートフォンのケースの厚さに応じても感度を最適化できます」というメーカー側からの回答通り、電話の録音の品質には、スマホの裏に貼り付けただけなのに、こんなに双方の声がクリアに録音できるのかとかなりビックリしました。
充電は付属のUSBケーブルを使って行う。背面の端子にマグネットでくっつける特殊な仕様は薄さを実現するため

この「スマホにマグネットで貼り付けて使う」という機能を実現するため、本体がかなり薄く軽く(約28g)作られています。

それ自体はとても素晴らしいのですが、その分、バッテリーの持ちが心配だったり、充電のために特殊なケーブルが必要だったりと、やや特殊な使い方が必要になるのは、仕方ないことでしょう。

充電ケーブルをなくす心配もしてしまいそうですが、それについては、今後USB-Cで充電できるケースの提供も予定しているそうです。

デザインにもこだわったレコーダーの今後

表面の山形の模様は、富士山をイメージしたもの。質感もよくてモノとしての魅力があるのはうれしい

Notta Memoはケースに入れて使うことが前提になっているのですが、本体のデザインが凝っているのも面白いですね。

「Notta Memoの表⾯の凹凸は、富⼠⼭にインスパイアされたものです。⾃然と⼯芸の融合が織りなす美しさを表現しています」とのことでした。
操作は、左のスライドスイッチで通話録音かマイク録音かを選択し、あとは右のボタン長押しで録音開始、もう一度長押しで終了するだけ。液晶画面に状態が表示される。写真は、録音中の表示

小さいながら液晶画面も搭載されているので、バッテリーの残量や、現在、録音中なのかといったことが分かるようになっています。

それはいいのですが、小さくて、しかもアイコン的な表示なので、実際に筆者は使っていて、今、録音されているのかどうかが分からず、録音に失敗したことがありました。

まあ、老眼のせいでもあるのですが、取材中は相手の近くにレコーダーを置くことが多いので、もう少し、動作状況が分かりやすく表示されるといいなとは思いました。ただ、アイコンの視認性について、今後も改善していくということでしたから、そこは期待したいと思います。
ペアリング後に、Nottaアプリを立ち上げると自動的にBluetooth & Wi-Fiでつながり、データが転送される。アプリが立ち上がった状態で録音すると、リアルタイムで転送されるのが便利だ

文字起こしの機能自体は、Nottaのサービスをそのまま使うわけで、そこは個々人で試していただきたいと思います。

実際、文字起こしの性能自体は、どのサービスもそれほど差はありません。

ただ、AIのチューニングや、話者の切り分けの方法など、実際に文章化する部分で違いがあり、それはどれが優れているというよりも、何に使うのに向いているかで使い分けるのが現実的だというのが、現在の筆者の見解です。

Nottaに関しては、スッキリした文章を生成してくれるので、会議や電話の内容を文字に残すという使い方が一番向いているように感じています。特に、電話のメモ代わりに使うなら、この「Notta Memo」との組み合わせは、現状、とてもいい選択だと思います。

何より、筆者のように取材で使う場合、スマホで写真を撮ったり調べものしたり、メモを取ったりと、いろいろスマホを使うため、録音は専用ハードに任せられると助かるのです。このサイズだと常に持ち歩けるのもいいですね。
(文:納富 廉邦(男のこだわりグッズ ガイド))

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