ウーゴ・ソウザにとっては日本代表戦がブラジル代表デビュー戦だった [写真]=金田慎平 ブラジル代表は14日、キリンチャレンジカップ2025で日本代表に2−3で敗れた。同試合でゴールマウスを守ったGKウーゴ・ソウザ(コリンチャンス)に対しては批判の声も生じているが、かつて母国にFIFAワールドカップの優勝トロフィーをもたらしたGKの意見は異なるようだ。ブラジルメディア『コレイオ・ブラジリエンセ』が、元ブラジル代表GKマルコス氏の声を伝えている。
試合は序盤からブラジル代表がボールを保持し、26分には見事なパスワークからDFパウロ・エンリケ(ヴァスコ・ダ・ガマ)が先制点をゲット。続く32分にはFWガブリエウ・マルティネッリ(アーセナル/イングランド)が左足でシュートを突き刺し、2点をリードしてハーフタイムに突入する。だが、後半に入ると、日本代表の猛攻を受け、52分にDFファブリシオ・ブルーノ(クルゼイロ)のパスが乱れたところからMF南野拓実(モナコ/フランス)にゴールを許すと、62分にはMF中村敬斗(スタッド・ランス/フランス)、71分にはFW上田綺世(フェイエノールト/オランダ)と立て続けに失点し、終わってみれば2−3でタイムアップを迎えた。
同試合でゴールマウスを託されたウーゴ・ソウザにとっては、念願の“セレソン”デビューだったが、痛恨の3失点でほろ苦い結果となってしまった。ブラジル代表において、デビュー戦で3失点を喫するのは35年ぶりとなっただけでなく、正守護神に君臨するGKアリソン(リヴァプール/イングランド)は未だに1試合3失点を喫したことがないため、逆転負けの一因としてブラジル国内を中心に槍玉にあげられている。
このような状況の中、ブラジル代表が最後に世界の頂に立ったFIFAワールドカップ日韓2002で全7試合のゴールマウスを守ったマルコスが、『コレイオ・ブラジリエンセ』を通して意見を発した。
「ウーゴ・ソウザのブラジル代表デビューについて、人々が話題にしているのを目にする。正直な私の考えを明かすと、セレソンは本当に厳しい場所だ。GKにとっては特にね」と、ブラジル代表のGKとして求められるレベルが非常に高いことには同意したマルコス氏。自身は現役時代、パルメイラスの“ワン・クラブ・マン”として活躍を続けたが、国内組の選手にとって、“セレソン”での立ち位置は非常に難しいとの見解を示す。
「自分のチームで最高のパフォーマンスを見せられていても、たとえばカンピオナート・パウリスタ(サンパウロ州選手権)で300試合に出場していようと、カンピオナート・ブラジレイロ・セリエA(ブラジル1部リーグ)で500試合に出場していようと、代表ではまったくの無名選手となってしまう。海外でプレーする選手と共演する経験がない選手にとっては、非常に難しい」
続けてマルコス氏は、ブラジル代表にとっての3失点目のシーンに言及。上田の放ったヘディングシュートはGKの正面だったにもかかわらず防ぎきれなかったことや、ポジショニングのミスなどが指摘されているが、マルコス氏は「あの失点に関して意見を述べるならば、私はウーゴのミスだとは思っていない」と発言。「本当にギリギリだった。仮に彼がボールを弾き返せていたら、あのセーブは『奇跡だ』と言われたかもしれない」と話しただけでなく、次のような言葉で、ブラジル代表でのデビュー戦だったことで判断に迷いが生じた可能性に言及した。
「確かに、彼が飛び出さなかった判断は間違っていたかもしれない。彼のサイズを考えると尚更そう思う。ただ、コリンチャンスでプレーしている時の彼ならば、飛び出していたと思う。なぜなら、コリンチャンスでは植え付けられた自信とともにプレーしているからだ。しかし、セレソンは彼にとってそうではない。彼にとってはこれがデビュー戦だったんだ」
また、マルコス氏はブラジル国内で実績を残し、“セレソン”にまで上り詰めた選手たちの名前を挙げながら、「ウェヴェルトン、ガブリエウ・ブラゾン、ハファエウも、私がウーゴに対して言っていることと同じような意見のはずだ」と語る。「セレソンで自分の実力を証明するには、連続した出場機会が欲しいものだ。だから、デビュー戦の1試合だけを見て、その能力を疑問視するのは非常に不公平だよ。少なくとも、私が今からブラジル代表でデビューするならば、そのような評価軸を持っていてほしいと思う」と言葉を紡ぎ、1試合のパフォーマンス“だけ”で失格の烙印を押すのは不公平だと主張した。
最後に、マルコス氏は「彼の人生はこれからも続くんだ。再び、彼が本来の実力を発揮する機会を得られることを願っているよ」とコメント。自身と同じようにブラジル国内で躍動し、ブラジル代表としてもゴールを守ったウーゴ・ソウザにエールを送った。
【ハイライト動画】日本代表がブラジル代表に歴史的初勝利!