「土下座しろ!」水をこぼした女性店員に激怒する高齢の男性…救いの手を差し伸べてくれた“意外な人物”

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2025年10月20日 09:31  日刊SPA!

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 昭和の時代ならいざ知らず、現在では客だからといって横暴に振る舞う行為はタブーとする風潮が浸透した。一方で、そうした世間の動きから取り残されたままの人物も、まだまだ少なくはないのが現状だ。
 銀行員の飯田萌香さん(仮名・24歳)が忘れられない迷惑客は、そんな時代錯誤型の客だったという。

◆カジュアルな店にお金持ちそうな夫婦が来店

「学生のころ、個人経営のイタリアンレストランでアルバイトをしていました。イタリアンといっても価格も安く、気軽に地元の方たちが日常的に訪れるようなタイプのお店でした」

 そんなお店でのランチ営業中のこと。男女2人でやってきた初見の客がいた。男性はぱっと見で60代後半。老人然としていたが、女性はそれよりはかなり若そうな容貌だった。ただ、親子ほどの年齢差にも見えず、年の離れた夫婦のように見えたそうだ。

「服装も品があって、お金持ちの夫婦といった雰囲気でした。いつも通り席に案内し、『メニューをお持ちします』と言って立ち去ろうとすると、男性が席の前で立ち尽くしたんです。

 席を引いてほしいのだろうと思いました。高級レストランではないので普段はそんなサービスはしていないのですが、特に気には留めずに椅子を引きました。

 それで男性はようやく腰を下ろしたんですが……顔を見たら、『なんでこんなこともできないんだ』とでも言いたげな感じでこちらを睨んでいました」

◆カスハラ発言を乱れ打ちする老人

 少し感じが悪いお客さんだなと思いながら、飯田さんはメニューを取りに場を後にした。

「テーブルに戻ってメニューを手渡そうとすると、『メニューぐらい先に用意しておけ。馬鹿かお前は』と言い捨ててから、ひったくるようにしてメニューを取られたんです。そんなことを言うお客様はそれまで一人もいなかったので、ただただ驚いてしまって……。その後、注文を取りに行くと、老人はボソボソと呂律の怪しい小声で言うので、聞き取れなかったんです。間違えるのはよくないからと聞き返すと、『二度も言わせるな!』と怒鳴られました」

 老人の横柄な態度はそれだけでは終わらなかった。

「料理を持っていけば『話の邪魔をするな!』と言われ、ワインを注ぎにいけば『この下手くそが。ワインが不味くなるから貸せ』と言われたあげく、突き飛ばされました」

 いずれも飯田さんにミスがあったわけではなく、そのお店でのごく通常の振る舞いだった。現に、対応を咎められたことは過去一度とてない。

 にもかかわらず、接客のたびに罵倒されるので、飯田さんはその席に行くのが怖くなってしまったという。

◆救世主の一声と、沸き起こる爆笑!?

「あの席に行かなければと思うと、足がすくんでしまうほどの状態でした。そのお客さまに水を要求されたので注ごうとしたんですが、恐怖心から手が震えてしまって……。手にしていた水のボトルをテーブルに落としてしまったんです。水はテーブルを伝ってお客様のスラックスを濡らしてしまいました」

 老人は烈火のごとく激怒した。飯田さんは頭を下げて謝ったが、それでも怒りは収まらない。

「何度も頭を下げたんですが、怒りは収まらず、『土下座しろ!」と言われました。あまりの剣幕だったので、そうするしかないと思って膝をつこうとした時でした。近くの席にいた老婦人に『水がこぼれたぐらいでそんなことしなくていいよ』と声をかけられたんです」

 老婦人は老人に、「あなたみたいなのがいるとね、せっかくのお料理が不味くなるの。黙るか、出ていくかどっちかにしなさいな」と告げた。

「例の老人は老婦人を睨んでいましたが、老婦人は頑として視線を逸らさないので、何も言えなくなっていました。そんな緊迫した状況で、いきなり笑い声が響いたんです。声がした先を見ると、奥さんと思われる女性がゲラゲラと大笑いしていました」

◆尻尾を巻いて店を飛び出した老人の肖像とは

 女性は老人が叱られているのがおかしくてしょうがないという感じで笑い続けた。

「そうしたら、その男性の顔が真っ赤になって取り乱し始めたんです。女性に笑われたことにひどく狼狽しているようでした」

 老人はイライラした様子で席を立つと、料理がまだ残されているのも構わずに店から出ていった。残された女性はというと、それは優雅に一人でメニューを完食し、そのまま上機嫌で会計をして帰ったという。

「夫婦だとしても、どのようなパワーバランスの関係なのか、謎が謎を呼ぶ展開でしたね。老婦人が毅然とした態度でかばってくださったことと、恐怖よりも印象が強いミステリーのおかげで、アルバイトが嫌にならずに済みました。

 今銀行で働いてて思うのは、会社員として多少の出世をしたようなタイプの男性は、リタイア後のタチが悪い割合が高いこと。推測に過ぎませんが、あの老人もその手合いだったのかもしれませんね」

 音楽やらの趣味が時代遅れでも好き好きでしかないが、振る舞い方が時代錯誤では誰も肩を持ってはくれないどころか、笑い者にされても致し方あるまいや。

<TEXT/和泉太郎>

【和泉太郎】
込み入った話や怖い体験談を収集しているサラリーマンライター。趣味はドキュメンタリー番組を観ることと仏像フィギュア集め

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  • 総合病院の会計や薬の窓口で怒鳴り散らしているのは、たいていジジイ。
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