1セット4000円の安キャバクラに通う中年男性が暴走する理由「“負けを取り返したい”が強すぎる」

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2025年10月20日 16:21  日刊SPA!

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大阪・北新地などのキャバクラを経て、現在は銀座のクラブにホステスとして勤めている筆者・みずえちゃん
 コンビニに行ったら、レジ横にもうクリスマスケーキのカタログが設置されていてびっくりしました。体感ではまだ7月くらいです。
 大人の社交場・銀座のクラブにホステスとして勤めているみずえちゃんと申します。その傍ら、ライターとしても活動しており、これまでに私がお酌をさせていただいたおじさま方との実体験をもとに、夜遊びやモテに関する情報を発信させていただいております。

◆あなたたちはなぜとち狂ってしまうのか

 今回のテーマは「1セット4000円の安キャバに通う中年が暴走する理由」です。

 流行り病の蔓延のせいで、なかなか銀座に出勤できなかったころ、西武池袋沿線にある1セット4,000円の激安キャバクラにこっそり在籍していました。

 そのキャバクラは某牛丼チェーンが1階に入居している雑居ビルの2階にあり、店内に設置された大型モニターでは店長の趣味なのか「2013年洋楽ベストヒット」などが再生されていました。

 飲み屋さんというのは、基本的には中年男性が家族やガールフレンド、同僚、町内会の皆さんには見せられないような、少し恥ずかしい姿をさらす場でもあり、そのために存在しています。それは西東京市のしょぼいキャバクラであろうと、銀座であろうと大差はありません。

 とはいえ、おじさんたちの暴走っぷりで勝負するならたぶん安キャバの圧勝です。

 では、さっそく解説します。

◆おじさんの奇行を間近で見られるのも安キャバの醍醐味

 当時の私はというと、離婚したばかりで、住む家も定職もなく(定職を持たないのは今もあまり変わりはないのですが)、とにかくお金がなかったため、1セット4000円の激安キャバクラに週5で出勤し、日払いの日給で糊口をしのいでいました。

 安キャバにはGacktの『Vanilla』を壁ドンで歌ってくれるおじさんや、毎朝6時に「大好きだよ」「大好きって言ってくれないの?」と電話してくれるおじさん、宇宙飛行士を目指して英検準2級の勉強をしている生まれた時からずっと無職実家暮らしのおじさん、ママチャリで駅まで迎えに来てくれるおじさんなど、個性的な(?)おじさんたちがいました。毎日退屈しませんでした。

 Gacktの『Vanilla』を壁ドンで歌ってくれるおじさんと、毎朝6時に「大好きだよ」「大好きって言ってくれないの?」と電話してくれるおじさんは同じ人なのですが、Gacktじゃない中年に「愛してもいいかい?」と聞かれたら答えはNOだし、朝6時の電話はあるがままを言えばしんどい。

 おじさんはすぐに私には飽きて、別の指名嬢に『Vanilla』を歌ったり、「大好きって言ってくれないの?」と迫ったり、ときには泣いたり喚いたりもしながら週2、3回は来店しているようでした。そして、なかなか「大好き」とは言ってもらえていないようでした。

◆エスカレートする奇行

 そんなある日のことです。

 Vanillaのおじさんが来店し、お気に入りのA子ちゃんをいつもどおり指名しました。2人は奥のボックス席に座り、おじさんは2時間ほど滞在しました。その日の彼は来店した時点で少し酔っているように見えました。

 2本目の鏡月のボトルがあいた頃、おじさんは

「そろそろいいよね?」

 と、彼女にたずねました。この「いいよね?」には、そろそろ彼氏になってもいいよね?とか、そろそろお泊りとかそういうことがあってもいいよね?とか諸々が含まれていると思います。

 となりのボックス席で待機していた私にはあまりよく聞こえなかったのですが、たぶん「そういうのはもうちょっと仲良くなってからでしょ〜」といつものようにあしらわれ、おじさんは泣いたか喚いたかした後に

「ダメダメ!今日は絶対に許さないよ」

 と、大きな声で言いました。

◆絶対に一緒に帰りたいおじさん VS 絶対に一緒に帰りたくないキャバ嬢

 その後、おじさんは拗ねたり、機嫌を直したり、歌ったりしながら閉店時間まで過ごし、閉店時間が過ぎても

「今日は絶対に許さない!」
「ここで待ってるから」
「一緒に帰るから」

 と、言って席をたちませんでした。

 閉店後、従業員出入口から外に出ると、おじさんがいて「A子は?まだロッカールームか?」と、その場にいる女の子たちに聞きました。

 誰かが男性スタッフを呼びに行って、呼ばれた男性スタッフ数名とおじさんが揉み合いになって、そこへさらにパトロール中の警官が来て、その後のおじさんがどうなったのかはわかりません。おじさんの姿を見たのはその日が最後になってしまいました。

 後日、彼女がお店の送迎車で無事に帰宅していたと聞いてホッとしましたが、ひと悶着を間近で見ていた私にとっては結構怖い出来事でした。

 去年の5月に新宿区内のマンション敷地内でガールズバー元経営者の女性が殺害された事件だっていまだに記憶に生々しい。同業者たちが殺されるたびに、あのおじさんのことを思い出してしまいます。

 いったい何を「許さない」つもりだったのでしょう。

◆暴走する理由「同じ1万円でも重みが違う」
 
 キャバクラやガールズバーなどを「出会いの場」ととらえ、そこで働く女性に真剣に恋をしてしまう男性はいますし、それ自体は珍しいことではありません。

 ですが、お財布に100万円入っている方にとっての1万円と、お財布に1万円しか入っていない方にとっての1万円では重みが違います。言うまでもなく、後者の男性の方が真剣です。1セット4,000円の安キャバといっても、さすがに4000円ポッキリで遊べるということはありませんが、飲み代が安価である分、客層は後者のような男性に偏りがちです。

 飲み代が4000円前後のキャバクラやガールズバーは比較的手軽に「親密さ」や「承認」を得られる場として機能している一方で、感情的な「依存」を生みやすい場でもあります。特に日常生活で親密な関係や承認を得る機会が少ない人にとっては、この空間は強い魅力を持ちます。

 そして真剣な男性ほど、ただのお遊びがお遊びでなくなってしまいます。

◆暴走おじさんにならないために

 貧困層のおじさんが安キャバやガールズバーに多額のお金をつぎ込む背景には、

「投資した分だけ関係が深まる」

 といった、誤解がある場合があります。彼らは限られたリソースを女性との関係維持や、関係の発展のために使い、経済的な余裕がさらに失われることでイライラを募らせます。

 このストレスは期待した報酬、つまり親密な関係や彼女からの承認が得られない場合、強い怒りに変わることがあります。お金も心的な余裕もないおじさんが発揮する瞬発力は恐ろしい。

 では、暴走おじさんにならないためにはどうするべきか解説します。

・彼女への貢献は「貸し」ではないことを理解する

 キャバクラやガールズバーで、お気に入りの女の子に貢献することを「関係を深めるための投資」であるとか、さらには彼女への「貸し」であると捉えているおじさんは少なくありません。しかし、キャバクラやガールズバーでの支出は、会話や接客といったサービスの対価であり、それ以上のリターンは基本的には期待できません。

 彼女への貢献は「貸し」ではないことを理解しましょう。

・心地よい関係性はその場限りのものであることを理解する

 キャバクラやガールズバーは、男性が一時的に「優位性」を感じられる場としても機能しています。しかし、中にはお気に入りの女の子がプロフェッショナルとして接しているだけだと気が付いてしまった途端に「裏切られた」「利用された」と憤慨してしまうおじさんがいます。このような感情は攻撃性や暴力的な行動に結びつきやすいです。

 心地よい関係性はその場限りのものであることを理解しましょう。

・あくまで「疑似的なもの」であることを理解する

 恋愛感情が一方的なものであり、お気に入りの女の子が恋人になる可能性がないと気が付いたとき「騙された」「こんなの詐欺だ」と、パニックに陥る男性がいます。このようなゆがんだ認知は怒りや復讐心を増幅させます。

 その場の甘いムードはあくまで「疑似的なもの」であることを理解しましょう。

◆それはただの執着

 今回は「1セット4000円の安キャバに通う中年が暴走する理由」について解説しました。

 パチンコ店のお客が負けを取り返そうとして「1000円、いやあと1万円つっ込めば勝てる」と、ムキになってお金をドブに捨て続けるのと似ていて、ムキになっているおじさんにとっては、お気に入りのA子ちゃんだって「いつか回収しなくちゃいけない負け」であるわけです。

 しかしそれは愛ではなく、執着です。本当は結ばれたいわけでも、愛されたいわけでもない。「負けを取り返したい」というおもいのせいで後に引けなくなっているだけ。

 誰かを悲しませるその前に気が付いてほしいものです。

<文/みずえちゃん>

【みずえちゃん】
1989年生まれ。新潟県長岡市出身。関西外国語大学卒業後、大阪市内の広告代理店に勤務する傍ら、キャバ嬢デビュー。結婚、離婚、地方の激安キャバクラを経て、現在は銀座ホステスとライターを兼業。X(旧Twitter):@mizuechan1989

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