画像提供:マイナビニュース2025年秋、金相場は再び上昇の波に乗っています。9月29日には1グラムあたり20,000円を突破し、10月もなお高値圏を維持更新が継続。昨年から続く米国金相場の上昇と円安の追い風を受け、日本国内でも「史上最高値更新」がニュースを賑わせています。
では、なぜ今、金がここまで高騰しているのでしょうか? そして、金を「持っている人」「これから買いたい人」はどう動くべきなのでしょうか。金高騰の暮らしへの影響についても解説します。
○金高騰の背景に「FRBの利上げ」「地政学的リスク」「円安」
金が高騰する背景には、単なる「宝飾品需要」以上の理由があります。今の相場を動かしているのは、世界の金融不安です。
まず大きいのは、2025年9月に米連邦準備制度(FRB)が行った利下げ。利下げは景気刺激策ですが、同時に「ドルの価値低下」を招くリスクがあります。投資家たちはドル資産の代わりに金などの安全資産に資金を逃避させ、その結果として金価格が上昇しています。
加えて、世界的な地政学リスク。中東やアジア地域の不安定要素、欧州の経済停滞、米中対立の長期化……。「通貨より金のほうが信用できる」というムードが強まるとき、金は必ず値を上げます。
日本国内でも円安が止まらず、海外相場が上がるたびに円建ての金価格も押し上げられているのです。
○「金が高い=景気が不安定」、日常生活のコストが上がっていく
「金価格が上がる」と聞くと、なんとなく景気が良くなっているような印象を受けがちですが、実はその逆。金の高騰はしばしば経済不安への裏返しです。
たとえば、物価の上昇。金は「インフレヘッジ(物価上昇に備える資産)」として買われます。つまり、金が上がるということは、裏では生活必需品の値上がり圧力が続いているということでもあります。
また、円安の進行で輸入品が高騰。ガソリン、食料品、家電——こうした日常生活のコストもじわじわ上がっています。金の高値は、「通貨の信頼が揺らいでいるサイン」でもあるのです。
○金は「一部売却・一部保有」が現実的な選択肢に
金はいま「売るべき」なのか、それとも「まだ持つべき」なのか――これは永遠のテーマですが、今の相場は一言で言えば「悩ましい局面」です。
○売るべき理由
すでに史上最高値圏。過去最高値を更新している今は、利益確定には絶好のタイミングともいえます。特に短期的な保有目的や、生活費の補填・資金化を考えている方は「売り時」と見るのも現実的です。
○まだ持つべき理由
一方で、FRBの利下げは始まったばかり。景気不安が長引けば、金の上昇はまだ続く可能性があります。また、世界的に中央銀行が金の購入を増やしていることもあり、「中長期での金高トレンド」が続くという見方も根強いです。
したがって、結論としては「一部売却・一部保有」が現実的な選択です。利益を確保しつつ、将来のさらなる上昇にも備える。リスク分散の考え方ですね。
○買いたい人へ:短期的には様子見もあり、中長期的には分割購入でリスク平準化を
興味深い動きとして、2025年10月現在、田中貴金属や日本マテリアルなどマテリアル企業が一部インゴット(少量サイズ)の販売を一時停止しています。需要が殺到し、供給が追いつかないほど売れているのです。
これは、個人投資家や一般消費者が「少量でも金を持っておこう」と考えている証拠でもあります。
ただし、このような「買いたい人が多い局面」は、相場の過熱を示すサインとも言えます。
つまり、「今すぐ買うべきか?」の答えは――
短期的には様子見もあり。調整局面(価格の一時的下落が訪れる可能性もあります。
中長期的には、分割購入(積立など)でリスクを平準化するのが賢明です。
一括購入ではなく、定期的に少しずつ買う「ドルコスト平均法」なら、相場の上下を気にせず長期保有できます。
○今後の金価格、上昇・下落トリガーのまとめ
今後の金相場は、「上がる可能性」と「下がる可能性」がせめぎ合う展開になりそうです。
上昇要因:米国の追加利下げ、景気減速、地政学リスク、中央銀行の買い増し
下落要因:インフレ沈静化、株式市場の回復、金利上昇の再開
いずれにせよ、「金が暴落する」よりも「高値圏で推移する」可能性の方が高いと見られます。つまり、金はこれからも"資産の避難先"としての存在感を維持するでしょう。
○おわりに:金は"価格"より"安心"を買うもの
金を買う理由は人それぞれですが、根底にあるのは「安心への投資」です。株や通貨のようにゼロになることがない。それが数千年にわたって金が価値を保ち続けてきた理由です。
今の高騰は一見"熱狂"のように見えて、実は"信頼の再確認"。世界が不安定なほど、金の輝きは増すのです。
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川崎拓 かわさきたく 株式会社Clarisse 代表取締役社長 関西学院大学文学部心理学科卒。大手総合リユース会社での勤務後、中古トレーディングカードショップの運営など各種リユース事業を経験。2012年より貴金属ブランド買取専門のゴールドプラザ事業に参画。EC店舗の立ち上げや、マーケティング、PR業務を経験後、2024年よりゴールドプラザ事業を運営する株式会社Clarisseの代表取締役に就任。各種メディアに出演し、中古相場の視点から情報を提供する。 この著者の記事一覧はこちら(川崎拓)