封印から目覚めた邪竜によって壊滅的な打撃を受けた国を守るため、勇者召喚に日々取り組む魔法使いのアラン。そして、その願いが叶うが、特別なスキルを持たない、現実世界ではバイトリーダーとして生活している青年――もとい、勇者が召喚される。Xに試し読みが投稿された『平凡勇者と魔法使いの苦悩』は、ある意味“フェア”な異世界モノになっている。
普通の成人男性が異世界で戦い抜く姿を描いた、リアリティのある異世界モノと言っていい本作を手がけたはるもとさん(@h_moto_0)に、本作を制作する際にこだわった部分などについて話を聞いた。(望月悠木)
■9年前の作品のリメイク
――なぜ今回『平凡勇者と魔法使いの苦悩』を制作したのですか?
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はるもと:本作は9年前に描いたものをリメイクした作品です。当時は落書きのような漫画でしたが、2人のキャラクターがとにかく好きで、「もう一度本格的に漫画を描きたいな」と思い、今回改めて制作しました。
――バイトリーダーが主人公の異世界モノでしたね。
はるもと:「異世界召喚された勇者がめっちゃ普通の人だったら楽しいな」というのがベースにありました。ゲームなどで登場人物が壺を平気で割ったりするじゃないですか。あれは絶対にやばいと思うんですけど、「そういうのを一切受け入れず『おかしい!』と言える常識を持った主人公がいても良いんじゃないか」と思い、普通の人を主人公にした作品になりました。
――なぜバイトリーダーにしたのですか?
はるもと:何となく普通の社会人にも学生にもしたくありませんでした。その狭間に存在していたのがバイトリーダーだったため、採用しました。
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——勇者とアランが出会い、お城に足を運び、スライムと交戦するというストーリー構成でしたね。
はるもと:お城に行くまではリメイク前の流れを踏襲しつつ、そこからは“誤召喚されてしまった勇者”と“誤召喚してしまったアラン”、どちらも被害者のような2人が「どんな苦難を乗り越えて本当の相棒になっていくのか」ということを軸に構成を考えました。弱いイメージのあるスライムですが、「普通の人間だったらそんな相手でも苦戦しちゃうよ」という考えがあったので、弱小コンビの最初の敵としては相応しいと思い、スライム戦を初陣に選びました。
——ストーリー構成で言えば、中盤まではギャグパートが多かったですが、ラストは戦闘シーンがメインで描かれていました。緩急のある内容でしたが、ギャグとシリアスのバランスはどのように調整しましたか?
はるもと:描きたいものを詰め込みすぎた気もしていますが、とにかくチートスキルも何もない普通の男たちが等身大でドタバタ頑張る姿を描きたくてこの構成になりました。ギャグもシリアスも、そんな彼らの必死さの延長線上にあるよう意識して、自然にトーンが切り替わるようにしています。
■欠点のある人間が大好き
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――勇者の設定やキャラデザで意識したことは?
はるもと:性格は「ファンタジーには不向きなくらいの常識人がいいな」と考えました。また、キャラデザは普通になりすぎないよう、精悍な顔つきで天然ボケのような雰囲気が出るように調整しています。
——ちなみに、なぜ勇者には名前がなかったのですか?
はるもと:「普通すぎる男の名前ってどんなのがいいかな?」と考えた際、どれもしっくりこなくて、あえて名前を伏せることにしました。苗字ぐらいならぼんやり浮かんでいるので、「いつか出せたら良いな」とは思っています。
——アランは一見しっかりしていますが、女性関係がだらしなかったりなど、いろいろな設定を持っているキャラでしたね。
はるもと:ほとんど自分の好きな設定を詰め込みました。美形だけど中身が残念というのが大好きで、ひとつ考えたら次々とボロボロ出てきました。欠点のある人間が大好きなので。
——2人の掛け合いも本作の魅力だと思いますが、2人の掛け合いを描くうえで注意したことはありますか?
はるもと:お互いに「この人どうしようもないな」と思っている感が出るように意識しました。また、性格的にアランのほうが喋りすぎる傾向があったので、描いている途中でセリフや立ち位置を交代したりしました。
——本作の「ジャンプルーキー!」(集英社)での連載は一区切りつきましたが、今後は続きを描く予定などはあるのですか?
はるもと:自分の中ではかなり思い出深い大切な作品なので、どんな形になったとしても、変わらず自分のペースでずっと描き続けていきたいです。
――今後の目標など最後に教えてください。
はるもと:現在、水面下でいろいろ進行中です。良いお知らせができるよう頑張ります!自分が楽しく漫画を描き続けていくことを第一に、無理はしすぎず、でもしっかり精進していきます。これからも人間らしい、ギャップのあるキャラクターをたくさん描いていきたいと思っているので、引き続きよろしくお願いします。
(文・取材=望月悠木)
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