【アーチェリー】63歳目前の山本博、前人未到46回目の全日本選手権「スコア上がれば五輪も」

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2025年10月22日 04:55  日刊スポーツ

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22年10月、全日本選手権前日の公式練習に臨む山本博

アーチェリー五輪2大会メダリストの山本博(62=日体大教)が、前人未到の46回目の全日本選手権(10月25〜26日、東京・夢の島公園アーチェリー場)に臨む。卓球の伊藤(旧姓山泉)和子さんが2002年(平14)に達成した全日本45回出場の大記録を超える。1977年(昭52)に史上最年少の中学3年で初出場して以来、足かけ49年。63歳の誕生日直前の大会で04年以来の優勝を目標に掲げた。


   ◇   ◇   ◇


今月31日に、山本は63歳になる。「階段を上がると息が切れるのでエレベーターを使うようになりました。ごく普通のおじさんです」。忍び寄る老いは実感している。でもアーチェリーへの情熱は昔のまま。「練習は楽しい。体が衰えてもまだまだ光る時があるから」と心底楽しそうに笑う。


中3の史上最年少出場から46回目の全日本選手権。卓球の世界選手権優勝者で世界殿堂入りした伊藤和子さんの45回の大記録超えにも「伊藤さんの記録はニュースを見て知っていたけど特に意識したことはないです。何となくきた感じ」と口調はあくまで淡々だ。


全日本は地区大会優勝者や公認競技会で設定記録を2回以上上回り、その申請記録の上位者が出場する。山本が設定記録に届かなかったのは高1の1度だけ(残る欠場2回はアジア選手権出場)。「その悔しさをバネに冬に猛練習しました。それが成長の糧になった」。成果が84年ロサンゼルス五輪の銅メダルだった。


半世紀近くもトップ戦線で戦い続けられる秘訣(ひけつ)を聞くと「練習の歯車を止めていないこと」と即答した。「僕を見てアーチェリーは長く続けられる競技だと思う人もいるけどそうじゃない。弓を引くためにずっと練習を続けているから弓がきつくない。だからレベルをずっとキープできている」。


とはいえ、体は満身創痍(そうい)。16年に筋断裂した右肩を手術。20年に右手のしびれの原因だった胸郭出口症候群の手術。昨夏には右足にしびれが出て腰にもメスを入れた。そのたびに懸命なリハビリで復活した。「再び筋肉をつける作業がすごくきつかったけど、今はもう戻っています」と表情は明るい。


今大会の目標はアテネ五輪で銀メダルを獲得した04年以来の優勝。そして、その先の28年ロサンゼルス五輪も意識にある。「あと2年で自分のスコアが上がれば五輪のイメージも濃くなる。この3年が大事」。年を重ねても目指す頂は変わらない。だから山本は、今もトップ戦線で戦い続けている。【首藤正徳】


◆山本博(やまもと・ひろし)1962年(昭37)10月31日、横浜市生まれ。保土ケ谷中でアーチェリーを始め、横浜高でインターハイ3連覇。日体大3年の84年ロサンゼルス五輪の男子個人で銅メダル獲得。04年アテネ五輪は銀メダル。06年に日本人初の世界ランク1位。大宮開成高の保健体育教諭をへて現在は日体大教授。15年に弘前大大学院を卒業し医学博士号を取得した。

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