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ファミリーマートは10月22日、値下げシールとして使用している「涙目シール」のイラストをフリー素材として無償で提供すると発表した。さまざまな店舗の使用を想定し、食パン、肉、魚、ケーキの4種を新たにデザインに加えた。目黒区の飲食店など6店舗がすでに導入を決定している。
【なぜ?】ファミマの「涙目おにぎり」が持つ、消費者が「買いたくなる理由」
涙目シールとは消費期限の迫ったおにぎりや弁当などの中食商品に貼る値下げシールで、食品ロス削減を目的としてファミリーマートが導入していたシールだ。値引き販売のシールに「たすけてください」というメッセージと涙目のキャラクターが記載されており、消費者の共感を得るデザインが特徴だった。
実際、2024年10月の実証実験において、従来の「エコ割」シールよりも購入率が5ポイント向上。仮に全店舗で実施した場合、年間3000トンの食品ロス削減につながることを踏まえ、2025年3月に全国展開を開始した。
「値引き商品を買うのは恥ずかしかったが、廃棄を助けると思えば購入しやすい」といった声も出ているようで、2025年4月に都内10店舗で実施した効果検証では購入率が4ポイント向上。中には10ポイント以上の向上を記録した店舗もあった。店舗での廃棄量も、2025年4〜9月の前年同月比で約5ポイント削減したという。
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●ファミマの涙目おにぎり 行動経済学が指摘する「その効果」
滋賀県立大学人間文化学部生活デザイン学科で行動経済学を専門とする山田歩准教授は、ファミマの涙目シールが消費者を動かした理由を以下のように説明する。
「涙目シールは『ナッジ(強制や罰則などを用いずに、人々の行動を望ましい方に促す手法)型コミュニケーション』で、消費者の感情に訴えた点が響いたのだと思います。一方で、旧デザインのシールは損得勘定や義務感を訴求するものでした」
企業が持続可能な消費行動を促そうとすると、消費者からは「理屈っぽくて上から目線だ」と受け取られがちだ。涙目シールの感情に訴えかけるデザインによって、消費者の行動変容を実現できたのではないかと山田准教授は見解を示した。
ファミリーマートは食品ロス削減の中長期目標として、2018年比で2030年までに50%、2050年には80%の削減を掲げている。涙目シール以外にも消費期限を延長する容器の開発や規格外食材を使用した商品の展開など、さまざまな取り組みを通して食品ロス削減に努めていくとしている。
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