画像提供:マイナビニュース住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」を提供するMFSは10月22日、メディア向けの住宅ローン勉強会を開催した。同社取締役CMOで住宅ローンアナリストの塩澤崇氏らが、高市政権の誕生が住宅ローン市場に与える影響、金利の見通し、銀行間の競争、ユーザーの動向などのついて解説。日銀の利上げは早くて12月か来年1月に行われるとの見通しを示した。
○金融緩和の行方と利上げのタイミング
高市新首相は、現在の日本経済を「コストプッシュ型インフレ」と捉えている。賃金上昇を伴う「ディマンドプル型インフレ」への移行を示すファクトが出ない限り、首相が利上げを容認する可能性は低いとのこと。
そのため、直近10月の金融政策決定会合での利上げの可能性は低く、日銀は早ければ12月か来年1月に段階的な利上げに踏み切るとの見通しを示した。仮に12月に利上げを実施した場合、住宅ローンは2026年4月に基準金利、同年7月に適用金利の引き上げが想定されるという。
○2027年度には政策金利1.5%の可能性も
また、高市政権は当初、利上げに慎重な姿勢を見せるものの、ディマンドプル型インフレへの移行が確認された後は、日銀にフリーハンドを与える形となり、後半にかけて金利が大きく上昇する可能性があると指摘。
今後の政策金利は、2025年度に0.75%、2026年度に1.25%、2027年度に1.5%まで引き上げられると予測した。
一方で、"責任ある"積極財政という言葉や、財政健全化を重視する麻生派との連携から、極端な財政出動には歯止めがかかると考えられる。積極財政により極端な円安を招き、防衛的・急激な利上げにつながる可能性は低いとした。
○変動金利は上昇、フラット35は横ばい
現在の住宅ローン金利は、変動金利と10年固定金利が上昇傾向にある一方、全期間固定のフラット35は横ばいで推移しているとのこと。これは、住宅金融支援機構が長期金利の上昇分を吸収し、金利上昇を抑制しているためと分析している。
また、変動金利と固定金利の金利差は依然として大きく開いており、この差が0.8%程度まで縮まらない限り、本格的な固定金利へのニーズシフトは起こりにくいと見ている。
○劣勢のネット銀行は「二極化」の新局面へ
住宅ローン市場における銀行間の競争は、マイナス金利解除後の混乱期にはメガバンクが優位に立った一方、現在はネット銀行の中でもPayPay銀行とSBI新生銀行が頭一つ抜け出し、「2強」状態になっているという。
この背景には、「預金獲得力」と「グループ経済圏」の強みがあり、両行は、給与振込口座や決済口座の獲得、またグループ全体の収益構造を活かすことで、低金利での住宅ローン提供を可能にしているそうだ。
○金利上昇に備えるには
金利上昇局面を迎え、住宅ローンに関する悩みは尽きない。同社の調査によれば、住宅ローン契約者の約9割が「住宅ローン選びに後悔がある」と回答。その中身については、「金利タイプ」「金利水準」「返済期間」が上位を占めた。
一方、この局面を「節約ではなく投資で乗り切る」という新たな潮流も見られるとのこと。金利上昇に伴う対応策は、節約で支出を抑える・繰り上げ返済で負担を減らすを抑え、「投資でインフレ対応する」が最も多い回答となった。借換需要も急増しているという。
住宅ローン選びに際し、SNSや比較サービス、AIチャットといったインターネットサービスの利用が大幅に増加している傾向も見て取れ、同社もAIツールを開発中だそうだ。
高市政権発足ですぐに利上げ、という可能性は低そうだが、政策金利は中長期的に上昇していく見込み。さまざまなツールを活用し、自身に最適な住宅ローンを選択することが、これまで以上に重要になってくるだろう。(PREMIUM編集部)