元英首相のサッチャー氏(左)とトラス氏(AFP時事) 【ロンドン時事】積極財政を掲げる高市早苗新政権を日本の株式市場は歓迎ムードで迎え、欧州など海外からも資金が流入している。ただ、高市首相を巡っては、大規模減税策を打ち出して金融市場を暴落させ、短命政権に終わった英国のトラス元首相の二の舞いを懸念する声も上がっている。
ロンドンに拠点を置く金融アドバイザーのJBドラックス・オノレの日本市場アナリスト、ジェームス・マルコム氏は、高市首相が訴えてきた経済・財政政策について、「国債の純発行量を約3割増やすことを意味する」と指摘。膨大な政府債務を抱える日本に「支出を増やす余力はない」とし、株式、通貨、国債のトリプル安を招いた「トラス・ショック」再現リスクに警鐘を鳴らす。
英キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、トーマス・マシューズ氏は、「市場が政局の不透明感収束に安堵(あんど)している」と説明。何らかの刺激策が打ち出され、日本株は堅調に推移すると予想した。しかし、高市内閣は衆参両院で少数与党の状態で、「構造改革に対する過度な期待は禁物だ」と語った。
みずほ銀行欧州資金部バイスプレジデントの三波広典氏は「いつも以上に取引材料として日本の政治が注目されている」と強調。大胆な改革を断行したサッチャー元英首相を信奉する高市氏がどのような政策を打ち出すのか。世界の市場が注視している。