売り手市場が加速する中で、企業は「人を見抜く力」だけでなく「選ばれる力」も求められるようになってきている。今回は、総合コンサルファームのTOMAコンサルタンツグループで人材・組織開発支援サービス部門を統括し、20年以上にわたり現場で面接を重ねてきた、陣内正吾さんに面接術とその背景にある思考を聞いた。
【問題か?】採用面接で質問がバラバラ…… 面接官の「偏り」を放置していいのか?
――採用面接において、以前と比べて変わってきたと感じる点はありますか?
昔は「選抜」するための面接という感覚が強かったですね。いかにスキルが高く、即戦力になるかを見極める場だったと思います。でも今はそれだけでは採用できません。
売り手市場が続く中で、企業は「選ばれる立場」でもあるという認識が必要です。応募者の皆さんを一人のビジネスパーソンとして尊重し、こちらも正直に向き合う。そして、相手にも正直に話してもらう。そういった双方向の姿勢が面接には求められていると思います。
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――早期離職を防ぐために、面接で意識していることはありますか?
早期離職を防ぐには、採用の時点で「価値観のすり合わせ」をしっかり行うことが重要です。例えば、当社には「明るく、楽しく、元気に、前向き」にという経営理念がありますが、その価値観に共感できるかどうかを必ず確認します。「良し・悪し」ではなく「合う・合わない」を重要視しており、共感できた方が仕事を楽しむことができます。
さらに、配属予定の部門の働き方やマネジャーの人柄も具体的に伝えています。「配属後は、このような上司の下で、このような業務の進め方で働くことになります」と案内し、入社後のギャップをできるだけ少なくすることを重視しています。
――価値観のマッチングがカギということですね。
そうですね。就職は「良い・悪い」ではなく「合う・合わない」です。感情面でしっくりくるか、違和感がないかを確かめることが大切です。
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スキルチェックやロジカルな評価ももちろん必要ですが、それだけでは見えてこない相性やフィット感こそが、実は長く活躍してもらうための重要な要素だと思います。
――面接官や部門によって、採用基準や質問に偏りが出ることもあると思いますが、どのように考えていますか?
部門によって特色の違いは出るものだと思います。例えば、社長が全ての面接を担当していれば一貫性を保てますが、配属部門ごとの裁量が大きい場合は面接官ごとに判断の仕方が異なることもあります。
ただ、私はその全てをネガティブには捉えていません。部署ごとのカラーがあるのは当然で、その部門にマッチする人材を見極めることは合理的です。そのため、最終判断をする際には「TOMAコンサルタンツグループの仲間として、入社後に活躍するイメージが描けるか」を部門長に確認するようにしています。イメージが持てなければ、採用は見送るようにと伝えています。
――面接後、即決ではなく再面談をするケースもありますか?
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あります。魅力を感じる応募者だが1回の面接では判断が難しい場合は、迷わず「もう一度、短時間でも構わないので面談させてください」とお願いするようにしています。
また内定後にも、オファー面談や実際の業務内容のすり合わせ面談を設定するなど、できる限り「安心して入社してもらう工夫」を心がけています。
採用面接を早く会社になじんで活躍してもらうためのオンボーディングの基点と考えて、効率だけにとらわれない取り組みをすることが企業にも応募者にも大きなメリットをもたらすと感じています。
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