
ある日、あるとき、ある場所で食べた食事が、その日の気分や体調にあまりにもぴたりとハマることが、ごくまれにある。
それは、飲み食いが好きな僕にとって大げさでなく無上の喜びだし、ベストな選択ができたことに対し、「自分って天才?」と、心密かに脳内でガッツポーズをとってしまう瞬間でもある。
そんな"ハマりメシ"を求め、今日もメシを食い、酒を飲むのです。
* * *
|
|
|
|
久々に、ひと口食べた瞬間に衝撃が走るほどうまいと思えるカップラーメンと出会ってしまったので、そのことについて。
先日の日中、なんだか無性にこってりしたラーメンが食べたい気分の日があった。しかしあいにく仕事の締め切りが重なっていて、ラーメン屋に出かけていく余裕はない。そこで仕事場の最寄りのコンビニ、ファミリーマートで買ってきたのが「ふくちゃんラーメン監修 豚骨ラーメン どんぶり」(税込320円)だった。
どうやらファミリーマートのオリジナル商品らしい。さっそくお湯をわかしてカップに注ぎ、4分待って、粉末、液体など3種類のスープのもとを加えると、その瞬間に部屋がとんこつラーメン屋の空気に染まる。かなり強めのとんこつの香りがインパクト絶大で、食べる前からその攻めっぷりがわかる。最後のひとつの小袋は、ニンニクチップとごまをメインとしたかやくで、かけるとこれまた食欲をそそる。
いざスープをひとすすりしてみると......う、うま! これ、ほんとにカップ麺!? パッケージに「店主も認めたこのスープ」と書いてあって、食べる前は、そりゃあまぁそうでしょう、くらいにしか思っていなかったんだけど、今ならありありと想像できる。初めて食べた瞬間にその再現度に驚き目を丸くした、店主さんの顔を(お店に行ったこともないのにてきとうなこと言ってますが、とにかくうまいスープなんです)。
細めの歯ごたえの良い麺もこれまたうまく、夢中で完食。あまりにもこの日の気分にぴったりで、あくまで個人的な好みではあるけれど、衝撃的なほどに満足度の高すぎる一食だった。
|
|
|
|
ちなみに、僕はあまりラーメン通ではなく、失礼ながらその名を知らなかった「ふくちゃんラーメン」は、昭和50年創業の老舗らしい。少し調べてみたところ、ニンニククラッシャーのさきがけとしても知られる店で、なんでも、店主さんが卓上に設置するおろしにんにくではなく、おろしたてのにんにくの風味を楽しんでほしいと、スイス製の圧縮タイプのレモン絞り機を導入。やがてさらに使いやすい専用のものが開発されて、ラーメン店では定番の食べかたになっていったのだとか。
となれば、きっちりと記事をバズらせたりできる優秀ライターなら当然、すぐに福岡に飛び、実際の店の味を体験してくるところだろう。しかし僕はご存知のとおりわりとポンコツ寄りのライターで、しかもしばらくは九州へ行ける余裕もなさそう。が、とにかくこのラーメンは気に入りすぎてしまった。初回は出会い頭の衝撃のままに食べ終えてしまったが、もっとじっくりと準備して、このカップふくちゃんを味わいつくしたい。そこで仕事後にもうひとつ買って帰り、翌日の昼もこいつを食べてやることにした。
が、昨日と同じように食べたのでは芸がないし、自分なりに敬意を表し、満足度もさらに高めたい。そこで、アレンジ食材を用意した。
WEBで写真を確認したところ、さまざまなパターンがあるものの、ふくちゃんラーメンには厚切りのチャーシュー、ねぎ、ごまがたっぷりとのっているパターンが多かった。ので、チャーシュー代わりに厚めに切った豚ばら肉、ねぎ、ごまを、それぞれ多めに用意する。
続いて、調理中に蒸発することを考慮し、規定量より少し多めの湯を鍋にわかす。今日はカップは使わず、鍋でこのラーメンを作ってやろうというわけだ。
|
|
|
|
そこにまず、肉のくさみを抑えるためのねぎの青い部分と、豚肉を加えてゆでる。
続いてスープのもとを加えてゆく。正規の作りかたは後入れなんだけど、豚肉に少しでも味をまとわせたいのでやむを得ず。まぁ、そこまで大きく香りが飛ぶということはないだろうし、そもそもすでにお湯に豚の旨味も加わっているので。
さらにそこに、麺と刻みねぎを加えてゆでる。ねぎは序盤とゆであがり直前、二度に分けて投入し、食感にバリエーションが出るよう工夫してみた。
麺がいいゆで加減になる直前でどんぶりに盛り、付属のかやくとしろごまをたっぷり、紅しょうが少々をトッピングしたら完成だ。カップふくちゃんラーメン、パリッコスペシャル!
見た目はもう店のラーメンにしか見えない。食べなくてもはっきりとわかる。これは大成功だ。
さっそくかたわらにビールを用意し、まずはスープをひと口。あぁ......これこれ。やっぱりうますぎる。がつんととんこつが香るが、決して不快感はない絶妙なスープ。味は濃厚でほんのりとろみがあり、そしてあまりにもコク深い。第一印象に強めの甘みを感じるのも特徴だ。
ねぎやごまをプラスしたのも大正解で、しゃりしゃりぷちぷちとした食感とそれぞれの風味がいい働きをしている。カップでそのまま食べた時よりも味わいにまろやかさ、優しさを感じるのは、生の食材を足したからだろうか。
また、このスープをまとった豚肉がこれまたうっとりの味わいで、特に脂身の甘さが際立って感じる。
さらに麺。ぷりぷり、ぱつぱつとしたその食感は、やっぱりカップ麺とは思えない。ほんのりと粉っぽさを感じる微細なざらつきも良く、スープをよく絡めとってくれる。
ひとすすりするたび、幸せホルモンが全身に広がっていく......。
合うかな? それとも味のじゃまになってしまうかな? と迷いつつ入れた紅しょうがも、時間経過とともにまろやかなスープに酸味と辛味を加えてくれ、ぜんぜんありだ。また、後半の味変として加えた、合わないはずがないコショウもこれまたいい仕事をしてくれる。
と、あまりにも自分好みなカップ麺との嬉しい出会いだった。しかし悲しい現実もまたある。この商品、数量限定らしく、つまりいずれは市場から姿を消してしまう運命らしい。今、我が家には一応2個ストックがあるが、これでお別れになってしまうのか、それとももうしばらくは食べられるのか。
ただし希望がないわけではなく、数量限定ではない、サイズの小さな縦長タイプのバージョンも存在するらしい。まだ見つけられていないけれど、こまめにコンビニで探してみようと思う。
あとはまぁ、いずれ必ず、実際の店にも行ってみよう。
取材・文・撮影/パリッコ
