
シャープは10月24日、電気自動車(EV)の新しいコンセプトモデル「LDK+(エルディーケープラス)」の第2弾を発表した。
同社が提唱する「AIoTによる新しい暮らしのかたち」を象徴するプロジェクトであり、今回のテーマは「止まっている時間」だ。これまでの自動車が移動を目的とした「走るための空間」であったのに対し、シャープは“止まっている時間にこそ価値がある”と考え、車を家のリビングルームや書斎のように活用する提案を打ち出した。
発表会には専務執行役員CTOの種谷元隆氏と、I-001プロジェクトチーム チーフの大津輝章氏が登壇。10月30日から11月9日まで東京ビッグサイトで開催される「Japan Mobility Show 2025」で初公開するモデルカーの詳細を明らかにした。
●「Part of your home」──家と車の境界をなくす新提案
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LDK+の第1弾はミニバンサイズのワンボックスカーだったが、第2弾は鴻海科技集團(ホンハイ)が開発した5人乗りEV「Model A」をベースにしており、シャープが独自のAI・IoT技術を組み合わせて開発を進めたものだ。コンパクトミニバンサイズながら、室内は非常に広く設計され、駐車時には多用途の「生活空間」として使える点が主な特徴となっている。
運転席を回転させることで後席と対面でき、中央には折りたたみ式のテーブルとプロジェクターを内蔵したコンソールボックスを設置。天井からスクリーンを降ろせば、大画面で映画を鑑賞したり、オンライン会議を行ったりできる。いわば、車が“第2のリビングルーム”になるという発想だ。
種谷氏は「EVの“止まっている時間”、つまりシフトレバーがPにある状態に注目した。車が動かない時間にも、生活に寄り添える新たな価値を提供したい」と語り、従来の「Park at your home(家に車を停める)」という概念から一歩進めて、「Part of your home(家の一部としての車)」という新しいコンセプトを提示した。
この発想は、住宅とモビリティを切り離して考えるのではなく、生活の延長線上に車を位置付けるというものであり、シャープが家電メーカーとして培ってきた“暮らし中心の技術開発”の延長線上にある。
●AIoTが支える「生活するEV」 住宅との連携も強化
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新モデルの中核には、シャープが独自に開発したAI「CE-LLM(シャープエレクトロニクス大規模言語モデル)」とAIoTプラットフォームがある。家庭の家電や太陽光発電、蓄電池などと連携し、電力の流れを最適化するV2H(Vehicle to Home)機能を備えることで、EVが家庭のエネルギーマネジメントの一翼を担う仕組みだ。
AIはユーザーの生活リズムを学習し、車内外の空調や照明、音響環境を自動で調整する。例えば、車内でリモート会議を始めると、AIが照明を最適な明るさに切り替え、外部の騒音を抑えるモードを起動する。こうした制御は、家庭内のIoT家電と連携することで、まさに“動くスマートホーム”のような体験を生み出す。
さらに、同社が長年培ってきた「プラズマクラスター」技術を応用し、車内の空気を常に清潔に保つ。空調システムと組み合わせることで、花粉やウイルス、臭気などを抑制し、快適な環境を提供するという。大津氏は「LDK+は暮らしを豊かにする家電の延長にある存在。車も家の中と同じように快適で、健康的であるべきだ」と述べた。
●「買ってから価値が上がるEV」目指し、2027年度に市場参入
今回の発表では、シャープが2027年度にEV市場へ本格参入する方針も示された。同社は中期経営戦略において「EVとAIデータソリューション」を柱の1つに掲げており、LDK+プロジェクトはその象徴的な存在と位置付けられている。
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種谷氏は「従来の製品は購入した瞬間が価値のピークだった。しかしLDK+はソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)の発想に基づき、アップデートを通じて使うほど価値が上がるEVを目指している」と語る。AIによるパーソナライズや新機能の配信、エネルギー連携の最適化など、長期的に進化し続ける仕組みを備えるという。
また、ベースとなる「Model A」の“A”には「Affordable(手が届きやすい)」という意味も込められている。高価格帯に偏りがちなEV市場の中で、幅広い層が購入できる現実的な価格を目指す姿勢を見せた。
●モデルカーはJapan Mobility Showで初公開へ 「暮らすように乗る」EVの未来を想起
発表会の終盤では、Japan Mobility Show 2025での展示内容にも触れられた。大津氏は「車内を主役とする空間設計が特徴。リモートワーク、ファミリータイム、趣味の時間など、多様なシーンに対応できる」と語り、EVを“動く居住空間”として位置付ける狙いを説明した。展示ブースでは、ビジネス用途から家庭利用まで、3つのライフスタイルシーンを想定した映像も公開される予定だ。
最後に種谷氏は、「10年後には“車をガレージにしまう”という概念そのものが過去のものになるかもしれない。車が家と一体化し、暮らしの中心に自然に溶け込む──そんな未来を現実にしたい」と語り、シャープの目指す新しいモビリティ像を締めくくった。
同社は10月30日午前9時30分から、東京ビッグサイトで開かれるJapan Mobility Show 2025の会場でモデルカーを初披露する予定。家と車、そしてAIが融合する「新しいLDK」の形が、いよいよ現実のものとなりつつある。
繰り返しにはなるが、車なのに静止状態での使用を想定している、LDK+プロジェクト。今回の発表内容からは、かつて「シャープらしさのある製品」でよく用いられた、「目の付けどころがシャープでしょ」というフレーズを想起させられた。モバイル通信の有無や重量などのスペック面は発表時点では伏せられたが、今後のアップデートに期待したい。
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