画像提供:マイナビニュースハイブランドは、多くの人に愛される名品を持っています。それぞれのブランドのこだわりや技術、センスが詰まった奥深い世界には魅力がたっぷりです。本連載では、『教養としてのハイブランド』(彩図社)で話題のとあるショップのてんちょう氏が、毎月選りすぐりのアイテムを語っていきます。
第9回の名品語り、今回紹介するのは、コムデギャルソンオムプリュスのポリ縮絨パンツです。
コムデギャルソンといえば、どんなイメージを思い浮かべるでしょうか?
「モード系のブランド」「黒い服が多くて、ちょっと変わったデザイン」そんな印象を持っている方も多いかもしれませんね。
今回は、そんな前衛的なデザインで常にモードの最先端を走り続けるギャルソンのアイテムの中でも、特に名作として知られる「縮絨加工」を施した一着をご紹介します。
まずは簡単にブランドの紹介をしましょう。
コムデギャルソンは、1969年に誕生した日本のブランド。
設立者は川久保玲さんという人物。ファッション業界に携わる人であれば誰もが知っていると言っても過言ではない、レジェンド中のレジェンド的存在の方です。
コムデギャルソンの歴史の中でも特に象徴する出来事といえば、やはり1982年に行われたパリコレクションでしょう。
後にスイスチーズのようと評された穴のあいたニット、くたびれたカットソー。体を覆い隠すシルエット。そして何よりも印象的な黒い色。
現在では当たり前とされる黒色の服ですが、当時は禁欲的で喪服を思わせる色で、プレタポルテではほとんど使用されない色でした。
ましてや黒を前面に押し出したショーなど以ての外。元来の西洋的な美しさを無視する前衛的なこのコレクションは一大センセーションをよび、その評価は真っ二つ。文字通り賛否を呼ぶこととなります。
当時の日本でも、ここで打ち出されたスタイルは大変流行し、前身黒ずくめのファッションは「カラス族」という名前で浸透しましたね。
とまあ、少し長くなりましたが、このようにコムデギャルソンらがパリで巻き起こした一大ムーブメントの事を「黒の衝撃」と言います。
知っているよ! という人も多いかもしれませんね。
現代において「モード系の服=黒」というイメージが広く定着していますが、そんなステレオイメージを作り上げてしまった、ある意味で元祖とも言えるブランドなのです。
今回紹介するのはコムデギャルソンの縮絨加工を施されたパンツ。
1994年のコレクションに登場して以来30年以上愛されている、ギャルソンといえばの名作シリーズですね。
画像のアイテムはポリエステルに縮絨加工を施したアイテムとなります。
そもそも「縮絨とは何ぞや? 」という方へ。縮絨とは、主にウールなどの繊維を水、熱、圧力、摩擦を加えて繊維を絡み合わせる事で風合いを変化させる加工のこと。
ウールのニットを洗濯したら、めちゃくちゃ縮んでしまった! という経験をした事ありませんか? あれもニットが縮絨する事によって起きる現象なのです。
一般的に、アバンギャルドで着る人を選ぶイメージのあるギャルソンの服ですが、もし「初めてギャルソンを買ってみたい」という方に何かアイテムをおすすめするなら、僕は第一候補として、この縮絨シリーズのアイテムを推します。
後はコムデギャルソンシャツのラインで展開されている「フォーエバー」シリーズのシャツも良いですね。あれも買っておいて間違いない。
入門から通にまで愛される、心から名品と言い切れるアイテムです。ご興味のある方はぜひ手に取ってみてください!
とあるショップのてんちょう セレクトショップの店長/バイヤーとしての経験を持ち、現在もアパレル業界に身を置く。「とあるショップのてんちょう」として、YouTubeをはじめとする各メディアで情報を発信中。 YouTube:https://www.youtube.com/@toarushop この著者の記事一覧はこちら()