富士山をバックに走る新幹線
※画像はイメージ(写真AC) 鉄道の場合、指定席でいちばん先に埋まるのは両側の窓側席。なかでも東海道新幹線では、同じ窓側席でも海側より山側の席のほうが人気だと言われている。
その大きな理由は、富士山がハッキリと見えるから。普段から出張などで乗車機会の多い人はともかく、そうでない人は「せっかくだから少しでもいい場所から見たい」と思うのだろう。実際、新幹線の車内では、富士山が見える区間を走行中にスマホで撮影している人もよく見かける。
特に旅行中の訪日外国人には「新幹線に乗って富士山を見る」という行為自体が特別な体験。ただし、日本人と違って国内の地理に詳しいわけではなく、富士山が進行方向のどちら側に位置するのかも知らない人も多いだろう。また、グループの人数などから富士山とは反対側の3席並びのシートを予約してしまったというケースも少なくないようだ。
◆富士山見たさに他人の座席へ…
それでも、やっぱり富士山が見たいのか、自分の席を離れて覗き込むように眺めている人の姿もたまに見かける。もちろん、山側の2列シートに誰もいなければ問題ないが、困るのは人が座っているのにお構いなしに覗き込もうとする人がいること。
ほぼ毎月、関西方面への出張がある会社員の吉崎雄平さん(仮名・41歳)も先日、東京発博多行きの新幹線のぞみ号の車内で、そんな場面に遭遇したとか。
「私は3列シートの通路側の席で、前列には中国人の家族が座っていました。すると、三島駅を通過して進行方向の右手にちょうど富士山が見えてきた時、彼らの子供と思われる小学校低学年くらいの男の子が突然席を離れ、通路を挟んだ隣の2列シートのほうに行き、外の景色を眺めていました。恐らく、富士山を見たかったのだと思います」
◆座席に入り込む中国人男児
しかし、その座席には初老の日本人夫婦が座っていたにもかかわらず、通路側に座る夫婦の妻と思われる女性の足元に入り込んできたのだ。これには彼女も驚いたのか、座席の背もたれに一瞬仰け反るような仕草を見せていたそうだ。
「まだ真ん中の通路から覗き込むのならわりますが、完全に中に入っていましたからね。しかも、その子はかなりふくよか体格をしていましたし、さすがにあれはちょっとないかなって。それに、これはあくまで私の個人的な印象ですけど、態度もそうですが顔つきもふてぶてしく見えてしまいました……(笑)」
◆親は注意も謝罪もせず…
ほかの乗客に迷惑をかけているため、普通の親であれば我が子を注意し、相手に謝罪するところだが、男児の両親は完全にこれをスルー。吉崎さんも同じ年頃の子供がおり、この無関心ぶりは衝撃だったようだ。
「新幹線に乗っていると、家族連れはよく見かけますし、通路を駆け回る子や騒ぐ子もいます。ただ、そういう場合は親もしっかり注意していますし、外国人家族でもそれまで私が遭遇したケースではちゃんと叱っていました。私も電車内でウチの子がマナーに反した行動を取った際には『それはやっちゃダメ』と言いますし、それが親としてするべきことだと思います。もちろん、男の子やその親に対して注意するような勇気も行動力も私にはなかったですけど、同じ親として考えさせられるところはありました」
男児はすぐ自分の席に戻ったが、初老夫婦にとっては想定外の出来事だったのだろう。男児に声をかけることもできずに戸惑っているように見えだが、男児は富士山を一度見ただけでは満足できなかったのか、1分も経たないうちに再び襲来したという。
◆初老夫婦の夫が取った“思いもよらない行動”
ところが、初老夫婦の夫がここで思いもよらない行動に出る。窓のブラインドを全部下ろし、車窓からの景色を見えないようにしてしまったのだ。
「先程と同じように通路側席の奥さんの足元に入り込んできたため、男の子に対する嫌がらせをしたのでしょう。もしくは注意しない親に対する静かな反撃だったのかもしれません。その日の晩、妻にこの時の出来事を話すと『ちょっと大人げないんじゃない?』と言ってましたが、男の子もその両親からも一言断りを入れることもなければ、お礼も謝罪の言葉も述べていません。まあ、妻が言うこともわからないでもないですが、私がこの旦那さんの立場でも同じことをしたでしょうね」
◆デッキに行けば富士山が見られるのに…
男児にとっても車窓の景色を遮られるのは予期せぬ出来事だったらしく、その場に数秒立ちつくしていたが諦めた様子で再び自分の座席に戻ったという。
「この日、私が乗っていた車両の2列シートの席は窓側がほぼ埋まっていましたが、富士山が見たければデッキに行けばよかったんですよ。たまにスマホで通話中の人がいますけど、基本的にここからなら気兼ねなく車窓の景色を眺めることができますから」
相手は子供なので目くじらを立てるべきではないのかもしれないが、仮に周囲に迷惑をかけてしまった際には親が対応する必要がある。せめて一言あれば不快な思いをせずに済むだけに、その程度の配慮はしてほしいと願うばかりだ。
<TEXT/トシタカマサ>
【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。