
<フィギュアスケート:グランプリ(GP)シリーズ第2戦中国杯>◇25日◇中国・重慶◇男子フリー
【重慶(中国)=勝部晃多】ショートプログラム(SP)首位発進の佐藤駿(21=エームサービス/明大)が、悪夢を払拭するシリーズ2勝目を手にした。右足首の負傷を抱えながらも、フリーもトップの183・99点をマークし合計278・12点で優勝。世界選手権銀メダルのシャイドロフ(カザフスタン)らをかわし、昨季に続いて中国杯を制した。来年2月のミラノ・コルティナ五輪出場に向け、大きく弾みを付けた。
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今季一番の、会心の笑顔だった。演技を終えた佐藤は、両拳を突き上げていた。フリーは4回転2種3本の構成に落としながらも、自己ベストに3・50点に迫る高得点をマーク。冒頭に得点源の大技4回転ルッツを決めて勢いに乗ると、全7本のジャンプで加点を引き出し、ガッツポーズも決めた。「優勝できるとは思っていなかったのでうれしい」。シリーズ初制覇を果たした昨年の中国杯に続く優勝。思い出の地で、何度も白い歯がこぼれた。
「最悪のスタート」からの今季だった。6月末に行われたアイスショーで右足首を負傷。ミラノ五輪シーズンに大きな出遅れを強いられた。7月末にリンクに戻ったものの、ジャンプを入れた本格的な練習再開は8月中旬。「日によってバラバラ」と筋肉痛のような痛みが断続的に続き、ケガの要因となったフリップは恐怖心からいまだに練習でも跳ぶことができていない。今大会も痛み止めを服用して臨んだ。
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だが、停滞は自分自身が許さなかった。「シーズンが終わった時に、『ケガがあったおかげで』と言えるような、そんなシーズンにできるようにしたい」と奮い立たせた。ジャンプが跳べない時間を利用し、上半身を強化。上体を振り子の反動のように利用するアクセルジャンプは「使い方がうまくなった」と昨季より精度向上の手応えがある。
12月の全日本選手権まで続く、五輪代表切符3枠を争う熾烈(しれつ)な戦い。GP次戦の第4戦NHK杯(11月7〜9日、大阪)は、選考に大きく影響するシリーズ2戦上位6人によるファイナル(12月、名古屋)進出が懸かる。「不安はない。もはややるしかない。自分を信じて今できることを丁寧に」。通常と比べて3分の2程度の練習しか積めずも、結果を出した中国杯。佐藤の進む方向には、明るい光が輝いている。
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