NTT西日本、声優らの声の権利を守り収益につなげる音声AI事業「VOICENCE」始動

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2025年10月28日 10:31  マイナビニュース

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生成AI音声のIP正当性を管理し、音声IPを正当に利用



NTT西日本は10月27日、声優・俳優・アーティストなどの実演家の声の権利を守りつつ、声の価値を高める音声AI事業「VOICENCE」を開始すると発表した。同事業の展開に向け社内独立組織「VOICENCEカンパニー」を設置する。



NTT西日本 代表取締役社長の北村亮太氏が挨拶したのち、説明を行ったのがNTT西日本 VOICENCEカンパニー カンパニー長/CEOの花城高志氏だ。


花城氏は「近年の生成AIの普及により、声の無断使用やフェイク音声の拡散が社会問題化している一方、日本では声の権利を直接保護する法的制度が弱く、エンターテイメント業界からは『声を守りつつ活用する仕組み』が望まれている」と述べた。



この課題を事業機会として捉え、NTT関連企業の技術を使いながら信頼できる声のプラットフォームとしてVoice/License/Essenceを組み合わせた造語の「VOICENCE」事業が開始される。


同事業の目的は、勝手に生成された「偽のAI音声」に対し声を安全に預かってモデル化、これを利用したい人に届けつつ、正当性を証明する「本物のAI音声」という「声の経済圏」を創出することだ。

VOICENCEを支えるNTT由来の2つの技術



VOICENCEは「音声IPライツマネジメント」と「音声コンテンツ企画・作成」の2つの領域に分かれている。


音声IPライツマネジメント



音声IPライツマネジメントの領域は 声の持ち主と正式に契約し、音声収録からAIモデル構築、真正性データの付与、音声IP管理までを一貫して行う。ポイントは真正性証明技術としてパブリックブロックチェーンとVC(Verifiable Credentials)を活用しているところにある。



分散型台帳の利用でデータの真正性と階層型VCによるデータの親子関係を記録、追跡可能なトレーサビリティを確保し、利用条件や契約内容等の用途証明を組み合わせたトラスト技術を使用している。証明書を発行することで、そのデータが正当なライセンスとIPが許諾した利用目的、期間等に合致することがわかる。この技術は、NEDOの懸賞金活用型プログラム「GENEIAC-PRIZE」領域03のトライアル審査として採択されている。


音声コンテンツ企画・作成



音声コンテンツ企画・作成はクライアントのニーズに応じた最適な音声IPのキャスティング、企画・制作・運用までの一貫したプロデュースを行う。説明会では、AIが弱いとされる印象や口調を変換する「音声印象制御技術」と、現時点で日本、韓国、中国、英語、イタリア、フランス、スペインの6カ国語に対応する「クロスリンガル音声合成」が独特の機能と紹介していた。


花江夏樹氏らが公開許諾パートナーに



IPホルダーは契約に基づき音声データを提供してもらい、クライアントの利用に応じたロイヤリティの支払いを行う。クライアントからはサービスの提供と利用料金の回収となる。



ちなみに、現在はIPホルダー側の意識の違いもあり、価格に関しては個別交渉となるそうだが、後で伺ったところ「AI音声を使うから安くすむではなく、AI音声によるスピード感をウリにしたい」という回答があった。



例えば、「有名アニメの聖地」での音声ガイドとしてアニメ声優を起用するというのはよくある話だ。しかし、有名声優であればスケジュールを押さえるのが難しい。また、さまざまな事情で内容の差し替えがあるなか、変更の想定がとなると収録しなおしになってしまい、またスケジュールが押してしまう。さらにインバウンド対応となるとその声優の語学力が問題となる。



音声印象に関しては、アニメの人物になりきるレベルにはまだ達していないように思えたが、アニメの吹き替えとなるとリップシンクのために動画も変更が必要であるし、セリフの尺もそろえる(か動画の変更の)必要がある。AI技術の発展スピードを見ると、この辺も順次改善される予感があるし、アニメ自体もAIで作成する動きがある(9月に行われたAWS Unicorn Day Tokyo 2025では生成AIを活用したアニメ制作を行っているCreator's Xがデモを行っていた)ので、未来のアニメ作成として可能性に期待したい。


現在はまだIPホルダーとの契約は少ないものの、今年度末までに10IPの獲得を目指すという。ビジネスに関しては3年で売り上げ10億、5年で100億、10年でNTTグループ全体で1000億円規模にしたいという。このために3年目までにグローバル展開を積極的に行い、5年目までにオリジナルコンテンツの開発にも挑戦する。


ちなみに、別所哲也氏、花江夏樹氏(エンドースビデオのみの登場)、春日望氏とKizunaAIが公開許諾パートナーとして同事業に参加している。発表会では春日望氏がMCとなり、ゲストに別所哲也氏とKizunaAIが登壇していた。実はKizunaAIの声モデルは春日望氏であり、今回のイベントは初の共演となっていたそうだ。(小林哲雄)

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