奈良地裁で開かれた安倍晋三元首相銃撃事件の初公判で検察側の冒頭陳述に耳を傾ける山上徹也被告(右)=28日、(イラスト・松元悠氏) 憲政史上最長の政権を樹立した首相経験者が銃弾に倒れた衝撃的な事件から3年余り。28日午後、奈良地裁の法廷に立った山上徹也被告(45)は、傍聴人が固唾をのんで見守る中、小さな声で「私がしたことに間違いありません」と語った。
午後2時ごろ、黒の長袖、濃いグレーの長ズボン姿で刑務官と共に入廷した。無精ひげを生やし、白髪交じりの伸びた髪を、後頭部の首に近い位置で一つに結んでいた。傍聴席側には目を向けることなく、ゆっくりと弁護人の隣に着席。資料を取り出し、開廷を待った。
裁判長が開廷を宣言した後、証言台の前の席に移動。手を組んで両肘を机に置き、人定質問に「山上徹也です」と静かに答えた。
検察官が起訴状を朗読している最中、椅子の背もたれに寄り掛かり、伏し目がちに表情を変えずにじっと聞き入った。起訴状を示されると、弁護人と一緒にのぞき込んで確認した。
裁判長から黙秘権などの説明を受け、相づちを打つように小さくうなずいた。認否を問われると、ぼそぼそとした声で「全て事実です。私がしたことに間違いありません」と返答。法律上の争点については、弁護人の主張に委ねた。
証拠調べで、山上被告が手製銃を試射する様子を撮影した動画が法廷に流されると、モニターに体を近づけ、映像を見詰めていた。
閉廷後に取材に応じた弁護人は「いつもより緊張していた」と語り、裁判が終わった後、ほっとした様子だったと明かした。