「吉祥寺に美術館を建てたい」楳図かずおさん逝去から1年、財団代表が明かす壮大計画…UMEZZ HOUSE移築の構想も

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2025年10月28日 18:50  web女性自身

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「昨年7月に末期がんが分かり、その時点で余命3カ月だと言われていました。楳図さんは、いままで“自分が亡くなったらどうする?”というような話は一切しない人だったんです。ただ、余命が長くないと分かり、覚悟を決め、『すぐに、財団を作りましょう』という話になったのです」



こう語るのは、生前、漫画家・芸術家の楳図かずおさん(享年88)のマネージャーを務めていた上野勇介氏。同氏は長年、楳図さんの仕事上のパートナーを務め、現在では楳図さんの作品の著作権を管理する『一般財団法人 UMEZZ』の代表理事を務めている。



‘55年にプロデビューした楳図さんは、『へび少女』や『おろち』などでホラー漫画の第一人者としての地位を確立したあと、’72年に代表作『漂流教室』の連載をスタートさせたほか、‘76年にギャグテイストに溢れた名作『まことちゃん』を発表し、同作での「グワシ」ポーズは子供たちの間で大流行。長年、名実ともに日本を代表する漫画家として活躍していた。



楳図さんは、昨年7月に自宅で倒れて救急搬送。検査で末期の胃がんであることが発覚した。同年8月には病床で自身の財団を設立し、今後の展開やさらなる新作を構想していたなか、10月28日に永眠した。



財団設立の経緯について、上野氏はこう語る。



「楳図さんは、財団を作ることで作品の著作権を守るだけでなく、それらを活用して発展させていくことを考えていました。病床の中、財団の設立目的など、すべてを自分で決めていったのです。



財団の設立にあたって楳図さんには大きな目的が2つありました。1つ目は、自分の作品がいままで以上に世界中で読まれ受け継がれてほしいということ、2つ目は、作品や自身の芸術的評価をゆるぎないものにしてほしいということでした」



楳図さんといえば、生前、東京都武蔵野市の吉祥寺を拠点に活動していたことで知られる。近年では自身の作品『こわい本』とコラボした吉祥寺をめぐる謎解きイベントが開催されるなど、同地は“楳図かずおが愛した街”として有名。今年の5月にも吉祥寺で『楳図かずお サバラ! お別れの会』と題した追悼イベントが開催されている。



また‘07年、この地で楳図さんは、外壁がトレードマークである紅白カラーで装飾された“UMEZZ HOUSE(通称:まことちゃんハウス)”を建設している。同建物は、建設当時に近隣住民から『景観を損ねる』として建設差し止めの請求がなされたことが話題に。最終的に要求は棄却されており、いまでもこの住居は吉祥寺に残っている。





■「この周辺に“楳図かずお美術館”を建てたい」



財団を作った楳図さんは、数々の思い出が詰まった吉祥寺という地を舞台に“ある構想”を練っていたという。



「楳図さんは‘22年に『ZOKU SHINGO』という連作絵画作品で画業に復帰したこともあり、自らのことを“芸術家”でもあると考えていました。『この周辺に“楳図かずお美術館”を建てたい』という構想も描いていましたね。



現在、ヨーロッパやアジアを中心に海外での翻訳出版も増えていることから、楳図作品は世界的にも注目されているようです。昨年にイタリアのルッカで開催された欧州最大級のコミックフェスティバル《ルッカコミックス&ゲームズ》で、『漂流教室』が《最優秀出版企画賞》を受賞するなど、日本だけでなく海外からも楳図さんへの関心は年々高まっています。



楳図さんの構想に基づき、国内外に開かれた美術館をこの周辺に建てたいと考えています。財団のスローガンである『FROM “KICHIJOJI” TO THE WORLD(“吉祥寺”から世界へ)』には、楳図さんの愛した吉祥寺という地をベースにして、楳図かずおの作品を世界に発信していくという意志が込められているのです」



また楳図さんの死後、ファンから『UMEZZ HOUSEを公開してほしい』という声も多く届いているという。



「海外の方から《UMEZZ HOUSEのなかを見たい》というメールが届くほど、一般公開を望む声は多くあるようです。楳図さんもこの家を自分の作品のひとつと考えていたので、財団としても、ぜひ後世に残し、広く皆さんに見てもらえるようになればという思いはあります。ですが、周囲が住宅街なので、この場所ではなかなか難しいとも考えています。



今では、将来的にUMEZZ HOUSEを移築できたらいいな、と考えています。移築と合わせ、展示室も増築し、それを『楳図かずお美術館』というかたちで一般公開できると良いですよね」



‘26年は楳図さんの生誕90周年にあたるが、これを期に直近のイベントも多く控えているようだ。



「楳図さんの命日である10月28日に《楳図かずお生誕90周年プロジェクト》の発表があります。楳図さんの最期の新作である『ZOKU SHINGO』の書籍化や、『漂流教室』など過去作品をB5版の雑誌サイズでシリーズ出版する《UMEZZ AUTHENTIC COLLECTION》ほか、多数の企画が進行中です。



来年の1月にはフランスのアングレーム市立美術館で、楳図さんの回顧展も開催されます。今年5月に吉祥寺で『UMEZZ GUWASHI CARNIVAL』というイベントを行ったのですが、来年も同じ時期によりパワーアップさせて開催します。ぜひ、楽しみにしていてください」



楳図さんの思いはこれからも受け継がれていく――。

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