写真―[メンズファッションバイヤーMB]―
メンズファッションバイヤー&ブロガーの
MBです。洋服の買いつけの傍ら、「男のおしゃれ」についても執筆しています。連載第555回をよろしくお願いします。
◆ダサオジしか着ていないファッションアイテム
SNS時代の令和、情報伝達のスピードが早くトレンドの消費もあっという間。ちょっと前までイケてたアイテムなのに数年で賞味期限になることも……。
今回はそんな「もはやダサオジしか着ていない」令和のオワコンアイテム集を紹介します。
◆▼NIKEの「テックフリース」
10年ほど前「アスレジャー」なるトレンドワードが生まれました。ランニングウェアやヨガウェアを日常のカジュアルに取り入れる着こなしのことですね。今や特別「アスレジャー」などと言わずともスウェットパンツや機能性Tシャツなど当たり前の時代となりましたが、当時はまだ新鮮だったものです。
アスレジャーが謳われた時代、最も人気を集めていたのがNIKE。特にテックフリースと名付けられた機能性スウェットが大人気となり、常時品切れ状態。NIKE直営店のみならずユナイテッドアローズなど大手セレクトショップはこぞって取り扱い、時代を象徴するアイテムとなったのです。
値段も手頃で素材もタフ、長く快適に愛用できることから世代や属性を超えて浸透。浸透しすぎた結果、ユニクロやGUなど量販店が廉価版を作るに至り、テックフリースは急速に価値を失っていったのです。
◆古臭いイメージが漂う典型的な「オワコンアイテム」
シルエットは当時のトレンドであるスキニータイプ。ピッタリとフィットする極細シルエットは今やもう街中で見かけませんが……なぜかこのNIKEテックフリースのスキニーは稀に見かけます。主に地方ヤンキー系、港区経営者などに見られるような…なぜかかあの手合いはタイトフィットのスウェットが好きなんですよね……。
もちろん上手に着こなすこともできなくはないと思いますが……あまりにも「昔はやったイメージ」が強く、またユニクロGUの廉価版なども流通していることから特別感はまるでなし。今やセレクトショップでも取り扱ってるところはほとんどなく、古臭いイメージが漂う典型的な「オワコンアイテム」だと思います。
・メンズ フリース ルーズフィット オープンヘム パンツ 1万9580円
ちなみにNIKEもこのトレンド変遷をしっかり理解していて、実はワイドシルエットタイプのテックフリースも展開しています。
こちらは今の雰囲気にぴったり合うし素材感もいいので、セレクトショップでの取り扱いも多く、おすすめできます。今テックフリースを買うならこちらでしょう。
◆▼カナダグースの「ジャスパー」
こちらも10年前から爆発的な広がりを見せたカナダグース。
広告代理店の力で日本ではなぜか「ダウンは一生物」という認識が強く、「ダウンだけはいいものを買わねば」という強迫観念が流布されていました。
考えてみると「ダウンだけはいいものを買う」ってどこにも論理性がなく、日本のような温暖な気温ではそもそもプロユースのダウンなんて必要もないし……都市部で生活している人なら特に不要なもの。さらにダウンは決して一生物ではありません。
そもそも洗うことが大変難しくクリーニングでも失敗が非常に多い(変色など意外と多い)。ダウンの洗濯を請け負ってくれるところでもたいがい洗うたびにダウンのかさ高が減っていき、ボリュームダウンしていくもの。
誰でも簡単にできるケア方法が確立されているものではないので(クリーニング店でもダウンは最も難易度が高い)、そもそも何を以て「一生物」と謳っているのか理解に苦しみます。……実際、皆さん10年満足いくくらいクオリティ変わらず着続けているダウンジャケットってホントにあります??
10年経って「そういえば一生物じゃないな」と広告代理店の嘘に気がついている人も多いのか、最近はダウンよりも中綿ジャケットなどが人気です。機能性中綿の開発が進んでいることもあり、「軽くて暖かい」ダウン並みのものも増えてきています。ユニクロも今年は「パフテック」といった新しい中綿アイテムを強化して提案していたり。
◆かつてはブームの牽引役
そして、そんな「一生物ダウンブーム」の牽引役だったのがカナダグース。猫も杓子も着ている印象で山手線に乗れば、カナダグースマークがついた服を着ている人を必ず見かけたものでした。
カナダグース自体はもちろん品質もプロスペックですし、フォルムも洗練されていますが……いかんせんあまりにもわかりやすいロゴデザインがどうしても「一昔前に流行ったよね」感が出てしまいます。オワコンとまでいうと大袈裟かもしれませんが、少なくとも「カナダグースのロゴを見ておしゃれ!」と思う時代は終わったでしょう。
・【FW25新作】ウェストポート フリース ジャケット 10万7800円
実はカナダグースもそのあたりを察しているのか、ロゴデザインを黒で統一したブラックレーベルが展開されています。シルエットも今っぽくスタンダードラインよりもグッとおしゃれにしたアップグレードライン。今、買うならこちらを選ぶのがいいでしょう。
◆▼ポーターの「タンカー ボディバッグ」
90年代から爆発的な支持を得ているポーターのタンカー。発売自体は1983年ですが裏原ストリートトレンドの中で特に評価され、高価ながら「誰もが一個は買うバッグ」として認知されました。
MA-1ライクなナイロンツイルとレスキューオレンジの裏地など、洒落のきいたデザインや配色もいいし、一針入魂を謳う国内有数の縫製クオリティで仕上げているのも特徴。何年使っても型崩れしにくく、また実用性に富んだデザインから愛用している方も多いのではないでしょうか。
しかし、いくらクオリティが高いとはいえ、90年代から現代に至るまであまりにもはやりすぎました……。当時はストリート最前線の方々が持つ印象もありましたが、今ではイオンモールでも地方のおじさんでも誰でも持っている印象。
◆おしゃれなイメージは完全に失われる
さらにボディバッグともなると両手が空く便利さも手伝ってお父さん世代にも大人気。おしゃれなイメージは完全に失われています。もちろんモノが悪いわけではないですが、「おしゃれか」と問われると胸を張ってYESといえない……そんなアイテムでしょう。
・SPIEWAK ヘルメットバッグ 1万6500円
同じようなミリタリーライクなデザインバッグなら案外スピワックなどどうでしょうか。老舗のミリタリーブランドですがリブランディングし、最近はデザイナーズブランドsacaiとコラボしたり高感度ブランドに評価され話題となっています。
バッグも値段は手頃ながらスピワックの伝統素材を意識したタフで頑丈なものを開発。ミリタリーのヘルメットバッグを小型化したシルエットもかわいらしく人気です。タンカーより今っぽいかも。
◆▼シュプリームの「ボックスロゴスウェット」
大流行を経て模倣品やパロディ品の流通まで進んだシュプリームのボックスロゴ。
センターに目立つ赤シュプリームロゴはもはや中学生でも着ないくらい擦られすぎた感があります。シュプリームのスウェット(本物)を着た事ある人ならわかると思いますが、やはりはやるだけあるんです。
タフで頑丈、いくら洗っても伸びない型崩れしない。シルエットも程よいリラックスフィットでいつもワードローブに入れておきたい感がある。ただこのボックスロゴだけはもうどうにも胸焼けします……。
◆ワンポイントの目立ちにくいものならかえっておしゃれ
・Supreme ロゴ スウェットシャツ 3万8700円
しかし、シュプリームのボックスロゴも実は多様なバリエーションが用意されていて、そうしたワンポイントの目立ちにくいものならかえっておしゃれ。
タフな素材や卓越したシルエットはそのままに、大人が着るシュプリームとしてこれなら許されるでしょう。
◆▼ノースフェイスの「リュック」
超ロングセラーを誇るノースフェイスのボックス型バッグ。これモノを効率的に運ぶという実用性で言えば200点満点の出来。リュックは曲線型が多いですが実はモノを入れるということだけ考えると四角形の方がより多くのものがすっぽり入る。
これ車も同じで実用性が求められるトラックは「四角形」ですよね? でも、美しさを求めるフェラーリなどに「四角形」はなく多くのスポーツカー、ラグジュアリーカーが「曲線的」になっているかと思います。間違ってもフェラーリよりトラックの方が美しいという美的感覚は一般的ではありません。
◆「実用性は完璧!」でも「美しさは半減!」
実用性と美しさは時として相反するものですが、まさにこのノースフィイスのリュックも「実用性は完璧!」でも「美しさは半減!」なアイテムかと思います。
もちろん実用面を期待するならこれほどおすすめしやすいアイテムもないくらいですが、おしゃれかと言われるとなかなか難しいと言わざるを得ない……。
ノースももちろんいろいろなバッグを展開していますから、おしゃれ路線なのか実用路線なのか見極める必要がありますね。
以上「ダサオジしか着ていない……? 令和のオワコンアイテム集」でした!
―[メンズファッションバイヤーMB]―
【MB】
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