「物語の自販機」、小説身近に=冒頭など無料で―企画会社「読書の楽しさ知って」

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2025年11月01日 07:31  時事通信社

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東京・世田谷文学館に設置された「物語の自動販売機」=10月22日、東京都世田谷区
 秋の読書週間(10月27日〜11月9日)が始まった。若者らの活字離れも指摘される中、本に親しんでもらうため「物語の自動販売機」が東京に設置された。タッチパネルを操作すると小説の冒頭や名場面が書かれたレシート状の紙が無料で印刷される。企画した会社は「本の楽しさを知って」と呼び掛けている。

 出版取次大手トーハン(新宿区)が文化庁の支援を受けて企画。「自販機」は世田谷区の世田谷文学館に10月22日、設置された。

 文学館では来年3月まで、区内を走る東急世田谷線の開通100周年企画展が開催されており、自販機では同線にゆかりがある「つゆのあとさき」(永井荷風)など10作品余りが楽しめる。作品は無作為で選ばれるため、普段読まないジャンルの作品にも出合える。1作品は500〜2500字程度となっている。

 自販機を利用した品川区の会社員青木和美さん(57)は「作品がランダムに出てくるので、次は何かなという面白さがある」と笑顔で語った。

 トーハンなどによると、この取り組みはフランスの出版社が10年前、読書離れを食い止めるために始め、欧米を中心に約25カ国に広まった。日本では神戸市の「フェリシモ チョコレート ミュージアム」でも10月24日から始まり、映画「チャーリーとチョコレート工場」の原作となった児童小説の名場面を楽しめるという。

 文化庁が昨年1〜3月に行った調査によると、16歳以上の約3500人のうち1カ月に1冊も本を読まないと答えた人は約6割に上った。「読書量が減っている」人も約7割で、理由を複数回答で尋ねるとスマートフォンなどの「情報機器で時間が取られる」が最多の43.6%を占めた。

 トーハンで自販機の運営を担当する中村可奈さん(24)は「若年層はSNSの短いコンテンツに慣れ親しんでいるはず。小説の冒頭や名場面といった比較的短い文章を読むことで『やっぱり読書って楽しい』ということを広めたい」と意気込む。 

東京・世田谷文学館に設置された「物語の自動販売機」=10月22日、東京都世田谷区
東京・世田谷文学館に設置された「物語の自動販売機」=10月22日、東京都世田谷区
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