
【前編】《稽古の後にちょっと飲まない?》小日向文世が明かす11歳年下の劇団後輩妻とのなれそめから続く
10月31日に公開された坂口健太郎(34)の主演映画『盤上の向日葵』。坂口演じる天才棋士の恩師役で出演するのは名優・小日向文世さん(71)だ。
映画にドラマに引っ張りだこの小日向さんは、意外にも遅咲き。‘77年に『オンシアター自由劇場』に入団し舞台を中心に活躍した後、’00年、三谷幸喜作『オケピ!』への出演を契機に、脚光を浴びる。
さらに社会現象を巻き起こした月9『HERO』(フジテレビ系、’01年〜)で検察事務官の末次隆之役を務め、その名は一躍全国区に。
「渋谷のセンター街で『あの人!』と女子高生に指をさされて、顔が知られたって感じました。
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木村(拓哉)くんとは映画『教場』(来年公開)の撮影でも一緒でしたが、どれほど忙しくても完璧に台詞が入っている。現場で台本を見ている姿を見たことがなく、真摯な姿勢を学びましたね」
そして『HERO』以降は71歳の現在まで、映像の仕事がまったく途切れることのない快進撃を続けている。小日向さんが出演すると「作品が面白くなる」と、名俳優の地位も確立した。
また善人を演じる小日向さんと、悪役を演じる“黒い小日向”とのギャップも視聴者の間で話題に。
「“笑っているようで目の奥が怖い”と、よく言われるんですよね。誰しも黒と白、善と悪の二面性はあるけれど、おそらく僕の怖い部分って、父の中の“何か”を受け継いでいるのだと思っています」
優しい父が、あるときから怖い目をするようになったと回顧する。
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「僕は通りやすい声や顔つきが『父に似てる』とよく言われます。僕が父のまねをすると、厳しくしつけをされた兄がおびえるほど(苦笑)。
父は脳梗塞で倒れてから認知症気味になり、病院のスタッフの方をものすごく怖い目でにらみつけることがありました。
人前では見せずに隠している人間の黒い部分が、父からぶわ〜っと現れた瞬間を見て、ぞっとするとともに悲しかったですね」
’16年の大河ドラマ『真田丸』で、年老いて亡くなる秀吉を演じる際、小日向さんは、晩年の父の寝顔や老いた姿を参考にしたのだという。
読売演劇大賞最優秀男優賞を受賞した舞台『国民の映画』(’11年、三谷幸喜作・演出)では、自傷行為をしかけたほど、ギリギリの精神状態にも追い込まれた。
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「身を削るほどの思いをして舞台に立たないと観客を納得させられないのか……しんどいな、などといろいろ考えました」
いまだに芝居の直前、ヒリヒリするほどの緊張を感じることも。
「“今、もし家族に不幸が起こったら、舞台どころじゃないな”“今、息子が死んだらどうなるんだ?”と想像して開演直前の緊張から抜け出そうとしたことがあります(苦笑)。芝居のときは気を張っているから疲れるんでしょうね。
だから何より家が大好きで、家でリラックスできることが緊張する仕事場へ向かう原動力になっています。
僕にとって家族と過ごす時間が、何よりのエネルギー源なんですね。
コロナ禍の在宅期間は息子たちも家を巣立つ前で、2カ月間ほど毎日、家族4人でお籠もりしていました。一緒に過ごせて、いや〜楽しかった。最高だったな(笑)」
■外出時には最愛の妻との“お出かけのキス”を欠かさない
最愛の妻とは、今も“お出かけのキス”を欠かさないそうだ。
「もう、当たり前の日常。女房が外出するときは、ほっぺを合わせるの。女房はお化粧をしているから、それが落ちないようにね」
奥さんとのキスは、芝居という“戦場”へ向かう“火打ち石”代わりのお守りなのかもしれない。
「女房は今、18歳半の愛犬の介護をしています。その介護が終わったら、夫婦でゆっくりと国内旅行をして、のんびりしたいですね」
とはいえ、夫婦旅行はしばらく先になりそうだ。
現在、小日向さんは’14年からレギュラー出演中の連ドラ『緊急取調室』(テレビ朝日系)の撮影中。また31日には映画『盤上の向日葵』の公開が控えている。
そして長男・星一さんと次男の春平さんはともに俳優の道に進み、名優である父の背中を追っている。
「息子たちも、自分の納得のいく役者人生になればいいなと思っています。僕が映像の仕事を始めたのが42歳だから“まだまだ慌てるな”と伝えています。
僕自身、俳優の山の頂上すら見えていません。今も、ほかの俳優さんの芝居を見て、焦ったり、悔しくなったりしますから」
今年3月放送の主演ドラマ『わが家は楽し』(TBS系)では脚本家の山田洋次さん(94)、石井ふく子プロデューサー(99)といった生涯現役の大先輩の姿に感銘を受けたという。
また、映画『国宝』にも触発されたと熱弁する。主演の吉沢亮とは『ばけばけ』でも共演中だ。
「吉沢くん、横浜流星くんの2人が、命を削って作品に取り組んだのが伝わってきました。吉沢くんとは『ばけばけ』の現場でいろんな話もできたし、僕、サインもらっちゃいました(笑)。
今の僕が『国宝』の吉沢くんの役を演じるのは無理だから冷静に見られたけど、同じ世代だったら、正直、悔しくて悔しくてしょうがなかったと思う。
身を削るような作品が今来たら背負えるだろうか。いや背負わなきゃいけないなと、自問自答するほど刺激を受けましたね」
70代の今も全力で走り続けられるのは、人生の伴侶の存在があったからこそと笑顔を見せた。
「女房と2人での夕食では『こんなの食べたい!』と言うと作ってくれる。本当においしいんです。お店みたいで。今日は何を作ってもらおうかな〜」
家族との時間が小日向さんの元気の源だ。松野家が1杯のしじみの味噌汁で幸せになるように。
(取材・文:川村一代/ヘアメーク:河村陽子/スタイリスト:石橋修一)
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