インタビューに応じた芳根京子、高橋海人(C)モデルプレス【モデルプレス=2025/11/02】映画「君の顔では泣けない」(11月14日公開)で主演を務める女優の芳根京子(28)、共演のKing & Prince高橋海人(※「高」は正式には「はしごだか」/26)にインタビュー。初共演にして2人が演じたのは“15年間入れ替わって戻れない”という難役だった。キャラクターを作り上げるため、互いの感情を理解するため、どのように向き合ったのか――当時の裏話や本音を語る。【前編】
【写真】芳根京子&高橋海人の“入れ替わり”姿◆「君の顔では泣けない」実写映画化
本作は、2021年9月に発売された君嶋彼方氏のデビュー作「君の顔では泣けない」の実写映画化。高校1年生の夏、プールに一緒に落ちたことがきっかけで心と体が入れ替わってしまった坂平陸と水村まなみは、元に戻ることを信じその方法を模索したが、15年経っても元に戻らない。しかし30歳の夏、まなみは「元に戻る方法がわかったかも」と陸に告げる。
入れ替わったまま人生の転機を経験してきた、外見がまなみの陸を芳根、外見が陸のまなみを高橋が演じる。
◆芳根京子&高橋海人、“入れ替わり相手”として初共演
― この「君の顔では泣けない」というタイトルから印象的ですが、最初にお話を聞いたときのお気持ちを教えてください。
芳根:本当に一言で言うと“入れ替わり”ですが、入れ替わったことに対して何かが起きるというよりも、入れ替わった後の話というのが印象的でした。入れ替わったら「戻りたい」と思うものって思っていたけど、15年という時間が経つと、戻れない・戻りたくない事情がある。単純なようで、時間が経ってしまうとそれがどんどん複雑化していく。そんなストーリーを読んで、「さぁ、どう演じればいいか」みたいな感じでした。
この作品はとにかく陸とまなみの2人のお話なので、まなみ役の方はともに戦える方だと嬉しいなと思っていたときに「まなみ役を高橋さんにお願いしている」というお話を聞いてテレビで一方的に拝見していて面識はなかったですが、すごく安心したところがあります。
高橋:入れ替わりの作品は初めてチャレンジするジャンルだったので、自分でもハードルをすごく高いところに設定して読ませていただいたんですが、この作品は入れ替わることが1番のイベントじゃなくて、そこから2人がどうお互いを想い合いながら、自分を大切にしていきながら、この15年間を過ごしていくか、にフォーカスした作品だと思いました。日常的な温度で静かに2人の想いがぶつかり合っていくところがすごく素敵だなと思いました。15年間という長い月日を背負うので責任感も感じましたが、芳根ちゃんもいるし、甘えさせてもらいながら楽しめたらなと思っていました。
◆現場ディスカッションで生まれたキャラクター像
― 複雑な役を演じられましたが、どのように役作りされましたか?
芳根:以前入れ替わりの作品をやったときは、作品の中で戻ったり変わったりをどんどん繰り返していくストーリーでした。でも今回は入れ替わったまま1人にフォーカスを当てる作品なので、攻め方としてこれまでの作品と何か大きく違うことがあったわけではありませんでした。ただ、自分の主観だけでは乗り越えられない部分がたくさんあったので、段取りをやってからどんどん育てていくようなイメージでした。「もっとこうかな?」「これがいいのかな?」とか言いながら毎シーン毎シーン作っていきました。
― 高橋さんの仕草やたたずまいを参考にすることはありましたか?
芳根:高橋くんは高橋くんでまなみとして現場で生きていたので、高橋くんからということはあまりありませんでした。でも結局形ではなく中身が大事だなと思ったら、逆に考えやすくなったというか。
高橋:確かに。
芳根:そうだよね。陸という人物を作ることに集中しました。
高橋:見てくれの感じにとらわれるとやっぱり苦しくなってきて、感情の深いところまでたどり着けない感覚もあったので、いろいろ話し合った末に「身振り手振りとか仕草はあんまりなくてもいいかもね」という話をしました。
芳根:15年経っているから(お互いの体に)慣れてくる部分もあると思うんです。「バレないように」という陸の心境があって15年生きている。なので「そこまで意識しなくていいんだよね」という話をリハのときにした覚えがあります。
高橋:逆にそこに縛られるよりも、シーンごとにどんどん感情が変わっていくので「感情に沿って自由にやっている方が楽しいよね」となりました。
◆陸&まなみとして感じた複雑な感情
― お二人が完成した作品を観て、好きだと感じたシーンを教えてください。
芳根:陸は特に自分のことに必死過ぎて、まなみを見ていない瞬間もあったので「あ、この表情好き」と思うところがいっぱいありました。例えば21歳で同窓会の田崎の話をしている合間にポンって入るときの驚いている顔とか(笑)。すごい笑っちゃいました。一緒の空間にいたはずなのに、一瞬一瞬の陸の表情、見ていない顔がいっぱいあったなと。それからまなみは自分の気持ちを隠して陸のことを包んでくれていたからこそ、陸が出産前にまなみと電話する、その直前に1人で本音を話しているところとかもすごくグッと来るなと思いました。
高橋:僕は、まなみが陸の家で生活をしているのを陸が外から覗いているところ。陸はああいうちょっと蚊帳の外になるような瞬間が結構多く描かれているんですよね。
2人が対面するシーンも結構ぶつかり合ってはいるんですが、そういうときですら気遣ってくれていたんだな、まなみのことを想いながらぶつけてくれていたんだなと、実際に観て感じて。そのぐらい陸が1人でいるときの表情とか泣いているときのぐちゃぐちゃになっている感じが刺さりました。やっぱり人間の心って誰かといるときじゃなくて1人ぼっちになった瞬間に爆発していくんだなと。
― 30歳になってまなみが元に戻れるかもしれないと話すときも、陸に強く「戻ろうよ」と言うわけではない提案型でしたね。
高橋:その理由がきっとこの15年間にあって。お互い貸し借りし合っている体の状態で過ごしているから、ずっと「戻りたい」という気持ちがある一方で「戻りたくない」と思うほど思い出もできていて。そういうのがどんどん積み重なっていて。
そんな中、元々2人で話していた目的である戻れるチャンスができた。まなみとしてはこれまで歩んできた人生の目標だから戻りたいというのはあるけど、陸がこれまで積み重ねてきたものも知っちゃっているから、陸に対して強くは言えない。でも同じ気持ちであってほしいという願いもあったと思います。だからあの天真爛漫な「戻れる方法がわかったって言ったらどうする?」という言い方をしたんだと思います。
芳根:陸のことも理解してますからね。それから15歳で入れ替わったときと30歳で戻るときって、やっぱり2度目の方がより複雑化すると思うんです。15歳は思わぬ展開で入れ替わってしまったけど多分まだどうにかなる時期。学校が変われば人付き合いも変わるし、環境の変化がまだあるけど、15歳から30歳で作られてしまったものって、どうしたって壊せないものがたくさんあると思うんです。
会社を辞めるとか結婚とか、“時間が経てば解散”になることがない世界になる。だから30歳になって「戻れるよ」と言われても、もう簡単な話ではなくなってしまっているというのがこの作品の面白いところだなと思っています。それを踏まえて、まなみは全部陸のことを理解した上での提案だったんじゃないかな。
高橋:選択することって本当に辛いです。「入れ替わっちゃいました」の方がもしかしたら気持ち的にはまだラクというか。
芳根:お互い入れ替わってから過ごした15年間の記憶だけで30歳で戻ってしまうわけだから、やっぱり生活という面ではここから先とんでもなく大変なことが待っている。自分の体が戻ってきてほしいけど、状況が、環境が…そう考えると難しいですよね。
高橋:(聞きながら想像して)苦しくなってきた(笑)。どっちの選択を取ってもいいことも悪いこともあるから…。なんというか、本当に2人には幸せでいてほしいですよね。
芳根:うん。15年間入れ替わっていたという事実はもう変わらないから辛い。元に戻ったとしても、周りとの関係では「この人は誰だろう?」みたいな人がいっぱいいて、これって現実的に考えるとすごいことですよね。
高橋:本当にそうですね。なかなかえぐみのある作品ですよね。それでもやっぱり2人でとった選択や向き合ってきたことは2人の人生にとって絶対に悪いことじゃないから、まず幸せでいてほしいなと思います。
◆大学時代から30歳までをわずか2日で撮影
― 年齢を重ねても同じ喫茶店で集まる2人。あの喫茶店も印象的でした。
高橋:すごく暑い日の撮影だったんですよ。
芳根:8月の高崎でね。
高橋:めちゃくちゃ暑かった。撮影中は喫茶店の中でも冷房を止めなきゃいけなくて、スタッフさんもみんなそこにいて全員集中しているから、なんか酸素が薄くなってきちゃって(笑)。すごい大変でしたよね。
芳根:どのシーンもワンテイクが長めだから、なんか頭に酸素が行ってないみたいな(笑)。
高橋:カットがかかったら速攻2人で外に出て深呼吸してね(笑)。
芳根:「空気が気持ちいい〜」って(笑)。
高橋:喫茶店での撮影は計2日間ぐらいでしたっけ?一気にバーって撮って。
芳根:すごい量だったね。しかも21歳のとき、30歳のとき、みたいに年代の変化もあったから。
高橋:みんなで「今からは何歳だからこういうことがあって、こういうこと思っていて…」ってたくさん話し合いながら進めていきました。
― 短期間で喫茶店シーンを撮る中で、大学生から30歳までの変化をつけるためにビジュアルや話し方などで工夫したところはありますか?
高橋:入れ替わってからグラデーションのようにだんだん慣れていく感覚みたいなものはすごく大事にしていました。
芳根:どんどんまなみに染まっていくみたいな感じだよね。
高橋:そうそう。まなみとして・陸として振る舞っていくうちに、だんだん体と心が近くなっていっちゃう感覚は多分お互いにあって、その意識はしていた気がします。
芳根:撮り順がバラバラだったので「いいよね、これぐらいやっちゃって」などとお互いが確認しながら同じペースで進んでいる感じでした。
― 喫茶店のシーンは年齢が進むごとに順に撮っていたわけではなかったんですね…!
高橋:バラバラでした(笑)。
― 2人の服装も年齢を重ねるごとに変化していきましたね。
高橋:エッセンスとして見た目で主張できるのは服装と髪型くらいで、表情はほんの少しずつ変化させて。でも変えすぎてもちょっと違うので、アクにならないように味付けをほんの少しずつ丁寧に変えていくような。その匙加減はすごく話し合いました。
◆芳根京子&高橋海人、最も響いたシーンが一致
― この作品は観る人によって刺さるシーンも違ってくるのではないかと感じました。お二人が一番響いたセリフやシーンを教えてください。
芳根:終盤、丘のところでまなみが…。
高橋:「私の体なんだよ」って。
芳根:そう!
高橋:自分もそのシーンです。
芳根:「そうなの。それは本当に反論できなくて、でもさ…」という、あの瞬間感じた気持ちが忘れられなくてすごく記憶に残っています。寄り添いたいけど寄り添えない、あの感じ。
高橋:わかります。あれはなんというか、この15年間思っていたことが確信としてセリフに出ているパートだなと思って。自分もあのセリフをどういうギアで言うかかなり考えた記憶があります。あのシーンはすごく印象的ですよね。陸が持っている理論みたいなものが徐々にぶっ壊れていって、だんだん感情先行になっていく感じが面白くて。
芳根:子どもという守らなきゃいけない大きな存在ができたときって苦しいですよね。もう1人じゃないから。お父さんお母さんの立場で観ていたら元に戻るなんて絶対に嫌だと思うかもしれないし、自分がどういう状況かで本当に見方が違う作品だろうなと。
高橋:確かに。陸で言うとあのシーンですよね。まなみと電話しているときに「うまくできなかったよ、俺」と言うところ。あそこで陸の全部がぶっ壊れるというか、さらけ出す。なので観る人によって刺さるポイントが全然違うというのは、確かにそうかもしれないです。
★インタビュー後編では互いの魅力や芝居を受けて感じた凄さ、葛藤から乗り越えた方法などを語ってもらった。
(modelpress編集部)
◆芳根京子(よしね・きょうこ)プロフィール
1997年2月28日生まれ、東京都出身。2013年に「ラスト シンデレラ」(フジテレビ)で女優デビュー。2015年に「表参道高校合唱部!」(TBS)でドラマ初主演を務め、2016年にNHK連続テレビ小説「べっぴんさん」のヒロインを演じた。近年の主な出演作は映画「ファーストラヴ」(2021)「Arc アーク」(2021)「カラオケ行こ!」(2024)、ドラマ「それってパクリじゃないですか?」(日本テレビ/2023)「まどか26歳、研修医やってます」(TBS/2025)「波うららかに、めおと日和」(フジテレビ/2025)など。
◆高橋海人(たかはし・かいと)プロフィール
1999年4月3日生まれ、神奈川県出身。2018年、King & PrinceのメンバーとしてCDデビュー。同年のドラマ「部活、好きじゃなきゃダメですか?」(日本テレビ)で初主演を務め、2023年のドラマ「だが、情熱はある」では、第116回ザテレビジョンドラマアカデミー賞 主演男優賞を受賞。近年の主な出演作に、ドラマ「95」(テレビ東京/2024)「わが家は楽し」(TBS/2025)「DOPE 麻薬取締部特捜課」(TBS/2025)、映画「おーい、応為」(2025)など。
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