
是枝裕和監督(63)と、21年の米アカデミー賞でアジア系女性初の監督賞、作品賞、主演女優賞の3冠を受賞した「ノマドランド」で知られる、クロエ・ジャオ監督(43)が2日、都内で開催中の東京国際映画祭と国際交流基金の企画「交流ラウンジ」で対談した。現在、綾瀬はるか(40)と千鳥の大悟(45)が主演する新作映画「箱の中の羊」(26年公開)を撮影中の是枝監督は、ジャオ監督の質問に答える形で、自身の映画製作の手法が「ワークライフバランスが崩れている」と評した。
是枝監督は「今、ちょうどセットに入って撮影し、残り2週間」と、撮影の現状を説明。「この俳優と、この俳優がいるから、ここを撮れると。ラストシーンは撮った。そこに至るまで、できることを考えるのが好き。現場で発見されたものが1番、豊かだなと感じています」と、より詳細に語った。その上で「僕は、撮影と同日に編集し、撮影の変更も出したりする。編集は終わってから?」とジャオ監督に尋ねた。同監督は「私は、夜は眠りますね。8時間、眠らないとダメ。(撮影同日の編集を)やっているんですか? すごいですね。どうやって実現する?」と逆に質問した。
是枝監督は「ワークライフバランスを、崩すことですかね」と笑いながら答えた。「若い頃からみたら無理をしなくなった。うまくいくと、携帯で撮って、うまくいっただろうとスタッフに送る。夜中だから、嫌だと思うんですけど」と続けた。ジャオ監督から「何時間、撮影しているんですか?」と聞かれると「(撮影現場に)子供がいっぱいいるので、ご飯の時間までとか。日本って、ルールのなかった時代は26時終了、朝6時再開というのが、まん延していたの。改善してきたし、子どもがいる現場は長く撮れないので(スケジュールは)ゆるく。スタッフができる限り休みが取れれば、とやっています」と答えた。
是枝監督に対し、大ファンだというジャオ監督から「人生に、どういう理念を持っているのでしょう? 素晴らしい映画しか作っていない。人生に対する、どんな理念がおありですか?」との質問も飛んだ。是枝監督は「ワークバランスがない。去年、映画を撮っていない。今年、2本撮って、ずっと現場に立っている。ワークしている。それが嫌ではない体になってしまった」と答えた。
さらに「皆、同じじゃないから付き合わなくて良い、という話をしながら、それが楽しくて、仕方ない。そんなふうにしないと映画監督になれない…と思われると、それはそれで違うと思うんですけど、自分が本当に楽しいというのはウソをつけない」と続けた。その上で、ワークライフバランスへの配慮が求められる昨今、逆行するような製作スタンスの裏にある思いを丁寧に語った。
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「60歳過ぎの、おじさんと言うか…子供にとっては、おじいちゃんです。すごく楽しいそうという印象を残したい。映画監督を仕事で選んだら、もしかしたら楽しいかもと思ってもらえたら良いなと思うのが、自分のワークでありライフ」
会場内から拍手が巻き起こったが。是枝監督「良いことなのか、悪いことなのか…そうしかできなくなって、撮ることが止まらなくなってきている。ちょっと自分で悩んでいる。悩みを相談する場所じゃないと思いますけど」とジャオ監督に語りかけて、また笑った。
対談には、コンペティション部門に出品されたマレーシア映画「母なる大地」(チョン・キット・アン監督)に主演した、中国を代表する世界的な女優ファン・ビンビン(44)も足を運び、最前列で両監督のトークを熱心に聞き入った。また、海外から多数の聴衆も駆けつけ、注目の高さをうかがわせた。
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