「40歳の長男に毎月10万〜15万円の仕送り」老後破産に怯える69歳女性の苦悩。パートに勤しむが「生活はギリギリ」

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2025年11月02日 16:20  日刊SPA!

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越原八重子さん(仮名・69歳)。74歳の夫と2人暮らし。息子1人、娘2人は成人しているが、40歳の長男が自立できず、毎月10万〜15万円の仕送りを続けている
晩婚化と高齢化に物価高や金利上昇が重なり、70歳前後で破産の危機に瀕する人が増え続けている。長く働いて稼ぎ続けるという解決策もあるが、実際にはシニア再就職市場は超狭き門。経済的不安に加えて病気や家族の問題まで抱える高齢者たちの現実を追った。
◆生活費負担の増大が老後破産のリスクに

老後破産――。以前から社会問題としてクローズアップされてきたリスクが、今まさに健在化しつつある。背景にあるのは物価高に伴う生活費負担の増大だ。老後破産に詳しい社会保険労務士でFPの三角桂子氏が話す。

「若い世代の賃金は増えていますが、早ければ50代後半から収入は減っていくもの。役職定年で2割ほど減り、定年後にさらに減るのに、物価高で家賃や食費は上がっていく。かといって、生活水準は簡単に落とせないため困窮する高齢者が増えている」

実際、自己破産する人は増え続けており、’25年10月の破産件数は12年ぶりの高水準を記録した。その破産者のうち4人に1人が60代以上の高齢者だ。さらに、連動するように、70歳以上の生活保護受給者数だけが右肩上がりで増え続けている。

◆70歳で生活が“限界”を迎えるケース

つまりは、70歳で生活が“限界”を迎える傾向が見られるのだ。

「病気で医療費負担が増えて生活が破綻する、もしくは高齢の親の介護に忙殺されて困窮していく高齢者も増えています。役職が上がって収入がピークを迎えやすい50代のときに介護問題を抱えて思うように働けなくなる人も多い。当然、収入はひと足早く減り始めるので、老後生活に狂いが出てくる。

もう一つ、特徴的なパターンは“卒婚”からの老後破産です。’07年の法施行で離婚時に厚生年金を夫婦間で分割できるようになった影響で熟年離婚が増えましたが、男性からすると年金が減って、急な一人暮らしで生活費負担は増えることになる。その立て直しができないまま、破産してしまう高齢独居男性が増えているのです」

◆破産予備軍も増加傾向に…

おのずと破産予備軍も増加傾向に。新潟県で5歳上の夫と2人で暮らす越原八重子さん(仮名・69歳)もその一人だ。

「夫は一番給料が高かった50代でリストラされ、再就職できたものの、大幅に収入が減ってしまいました。その分、生活費を削ればよかったのですが、それが難しくて……。実は3人いる子供のうち、東京で一人暮らしをしている40歳の長男に毎月10万〜15万円の仕送りをしているんです。

学生時代から『アライグマ』とあだ名をつけられるほどの潔癖症で強迫性障害と診断され、一つの職場で長く働けないため、少しでも援助できればと。ただ、それも限界が近づいています。年金をまるまる息子にあげているので蓄えを食い潰している状態。このままいけば、10年もたたずに貯金が底を尽きそう……」

◆「70歳破産」の現実

同居すれば経済負担は抑えられるが、一向に独立できない長男に対する姉と妹の当たりが強すぎて、長男は実家に居場所を失ったという。

「今は少しでも生活費の補塡ができればと、週4日間、私は近所のスーパーでレジ打ちのパートをやっています。それでも生活はギリギリなので、築45年で老朽化が進んだ家のリフォームも手がつけられないまま。急な階段には手すりがなく、住むのにも不自由を感じてきています」

一度生活が破綻し始めると抜け出せない……。これが「70歳破産」の現実だ。

◆越原さんの破産リスク

・夫が50代でリストラに遭い、退職金は生活費に

・40歳の息子に対する月10万〜15万円の仕送り

・パートで収入を得るが10年で貯金がなくなる!?

【社会保険労務士・FP 三角桂子氏】
社会保険労務士法人エニシアFP協同代表。資産運用や老後資金、相続に関する相談を多数受ける。老後破産に関する執筆記事も多数

※週刊SPA!10/28発売号より

取材・文/週刊SPA!編集部

―[[70歳破産]の悪夢]―

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