
第66回東日本実業団駅伝が11月3日、埼玉県の熊谷スポーツ文化公園陸上競技場及び公園内特設周回コース7区間74.6kmで行われる。
【一覧】ニューイヤー駅伝出場へ予選会スタート 日本一になったチーム
第1区 13.1km 競技場2周+周回コース1周(4.1km)3周
第2区 8.2km 周回コース2周
第3区 16.4km 周回コース4周
第4区 8.2km 周回コース2周
第5区 8.2km 周回コース2周
第6区 8.2km 周回コース2周
第7区 12.3km 周回コース3周
最長区間の3区に富士通の篠原倖太朗(23、駒大→富士通)、サンベルクスの吉田響(23、創価大出)、GMOインターネットグループ(以下GMO)の太田蒼生(23、青学大出)、Hondaの吉田礼志(23、中央学大出)と、大物ルーキーたちが集中した。4区にも10000m日本記録保持者の塩尻和也(28、富士通)や、ニューイヤー駅伝6区区間賞の嶋津雄大(25、GMO)ら力のある選手がエントリーされた。5区には23年大会1区区間賞の太田直希(26、ヤクルト)が、6区には9月の東京2025世界陸上マラソン代表だった小山直城(29、Honda)が、7区には大物ルーキーの平林清澄(22、國學院大出)が登場する。3区までにトップが見える位置を確保し、4区以降でそこから抜け出すチームが優勝する展開が予想される。
1区に今江、市山とエース級 スピードランナーの小林も強力1区の先陣争いが面白くなりそうだ。GMOが前回3区区間賞の今江勇人(27)を起用してきた。優勝した前回は吉田祐也(28。東京2025世界陸上マラソン代表)で区間2位に40秒差を付けた。そのときのような大量リードは難しいかもしれないが、1区区間賞候補筆頭だ。
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サンベルクスは市山翼(29)を起用。3月の東京マラソンで2時間06分00秒の日本人トップとなった選手だ。GMOの今江も今季はマラソンに進出している選手で、今江、市山とも圧倒的なスピードを持つわけではない。区間賞を取れなくても絶対に後れない、というチームの意思表示だろう。GMOは太田、サンベルクスは吉田響と、両チームとも3区に大物ルーキーを起用し「1、2、3区で前に行きたい」(GMO伊藤公一監督)と言う。
もう1チーム、1区に強力なカードを切ってきたのがSUBARUである。移籍加入した小林歩(27)は24年ニューイヤー駅伝3区区間賞選手。10000mでも27分28秒13と、1区選手の中ではワンランク上のタイムを持つ。SUBARUの奥谷亘監督は「1区から攻めて、しっかり流れを作る」と起用意図を説明した。
Hondaも5000m13分24秒11の中野翔太(24)、ロジスティードも5000m13分36秒21の富田峻平(25)と、スピードのある選手を起用。昨年の吉田祐也のような独走にはならないかもしれないが、終盤で激しい先頭争いが期待できる。
箱根駅伝2、3、4区の日本人最速ランナーと、ハーフマラソン学生記録保持者が揃った3区2区のインターナショナル区間を挟んで最長区間の3区に、有力チームの大物ルーキーたちが集結した。前述のようにGMOとサンベルクスは、1区にもエース級を起用し、3区終了時にはトップに立つ区間配置をしている。富士通は1区に、23年大会6区区間賞の伊豫田達弥(25)を起用したが、高橋健一監督は「1、2区で後れる可能性もあるので、3区で挽回したい」という狙いで篠原を起用した。
サンベルクスの吉田響は今年1月の箱根駅伝2区(23.1km)で区間歴代2位、日本人最高記録で篠原に勝っている。GMOの太田は昨年の箱根駅伝3区(21.4km)で同様に区間歴代2位、日本人最高記録を、今年の箱根駅伝でも4区(20.9km)で区間歴代2位、日本人最高記録で走った。
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篠原も個人種目では負けておらず、今年2月にハーフマラソン(21.0975km)で59分30秒の学生記録をマークした。20kmの距離の学生最速ランナーが勢揃いすることになる。Hondaの吉田礼志は駅伝の実績では他の3人に及ばないが、10000mでは27分47秒01と篠原以外には負けていない。チームの「X」には「チームの未来を担う逸材の実業団駅伝デビュー戦」と期待の高さが表れている。
マラソンで太田に勝った竹井が、3区の新人対決に割って入るかパリ五輪と東京世界陸上の代表たちが、小山を除いて今大会には出場していない。マラソン日本歴代2位の池田耀平(27、Kao)も欠場した。その分ルーキーたちへの注目度が大きくなるが、実業団で経験を積んでいる選手たちも、簡単に引き下がらないだろう。
ロジスティードの四釜峻佑(24)は前回3区で区間2位、SUBARUの山本唯翔(24)は「今年一番の成長株。年間を通して高いレベルで練習している。ブレイクしてもらいたい」(奥谷監督)と期待されている選手だ。
JR東日本の竹井祐貴(25)もそんな選手の1人。亜細亜大から入社4年目の選手で、学生時代は関東学生連合チームで箱根駅伝に出場したが、目立った戦績は残していない。卒業直前の大阪マラソンを2時間10分57秒で走ったが、19位でそこまで注目されなかった。
その竹井が今年2月の大阪マラソンで2時間08分06秒(16位)まで記録を伸ばすと、7月のゴールドコースト・マラソンでは2時間07分33秒の大会新記録で優勝。9月のベルリン・マラソンに向けて練習の一環だったとはいえ、太田とのマッチレースから37kmでスパートして58秒差をつけた。今回は駅伝のエース区間で、太田をはじめとする大物ルーキーたちと対決する。
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JR東日本の永井順明監督は、「一緒に走り始めたら、名前があろうがどうだろうが関係ありません。ゴールドコーストでも竹井はスパートして勝っています。一緒に走っていて、今日は勝てそうだと感じたのだと思います」と、チームのエースを信頼する。タスキを受けたら大物ルーキーも、代表選手も関係なく、その時に強い選手が快走する。
富士通は4区に10000m日本記録保持者の塩尻1区間でも早い段階で前に出るのが、駅伝を優位に進める鉄則である。東日本実業団駅伝では4区に強力な選手を置くチームも多い。今年は富士通が10000m日本記録保持者の塩尻を、GMOがニューイヤー駅伝6区区間賞の嶋津を起用した。
富士通の高橋監督は「(3区で挽回して)4区を終わった時点でできるだけ前に、あわよくば一番前にいたい」と期待する。嶋津はスタミナ型の選手と思われていたが、今季5000mで13分33秒83まで記録を伸ばした。GMOの伊藤監督は「今年から村山紘太(32。10000m元日本記録保持者)がスタッフに入り、若い選手のトラックを目指した練習をサポートしています」と、チーム全体に5000mの好記録が出ている理由を説明する。
Hondaの小袖英人(27)は3年前の1区区間賞選手で、ロジスティードの藤本珠輝(24)、SUBARUの並木寧音(23)、Kaoの長谷川柊(27)らも、塩尻ほどではないが駅伝やトラックで実績がある。サンベルクスのスタッフも4区の渡邉奏太(27)を信頼する。「1区から4区までは自信があります。5、6、7区も勝負するために厳しい練習をしてきました」(田中正直総監督)と、目標の3位以内に向けて後半区間に手応えを感じている。
アンカーに大物ルーキーの平林、神野大地監督のM&Aベストパートナーズは予選突破なるか?アンカーの7区ではGMOが22年ニューイヤー駅伝5区で区間賞の小野知大(26)、SUBARUが23年日本選手権5000m3位の清水歓太(29)、ロジスティードが大物ルーキーの平林と、勝負を決することができる選手たちを残している。
しかし5、6、7区は現時点の選手層の厚さが反映される。良い状態を作ってきたチームの選手が抜け出したり、リードを広げたりすることが多い。エントリーされた選手の顔ぶれを見るとGMO、富士通、Honda、SUBARUといったチームが強そうで、他のチームは3区、または4区までに優位な位置に上がっておく必要がある。
また、ニューイヤー駅伝出場資格が与えられる13位(12位チームと、12位から10分以内の1チーム)争いも、優勝争い以上に熾烈となる。神野大地監督がプレイングマネージャーを務めるM&Aベストパートナーズも、初出場だがボーダーラインと言われるまでの力を付けた。「4区以降は、他のボーダーのチームと比べても差はないと思っています。3区終了時に13番以内に入ってくれば行けると思っています」。新しいチームの挑戦も、今年の注目点となる。
※写真:GMOのルーキー太田蒼生選手(25年1月撮影、箱根駅伝)
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)
