「たくさんバトルができた」松田次生のスーパーGTラストラン。ゴール直後にやってきた安堵感と消えないレース魂

　11月2日に行われた2025年のスーパーGT最終戦モビリティリゾートもてぎ。このレースでGT500クラスを退く決断をした松田次生は、リアライズコーポレーション ADVAN Zの第２スティントを担当。最後まで積極果敢な走りをみせ、最終的に10位入賞を果たして、25年に及ぶスーパーGT現役生活にピリオドを打った。レース後、松田次生が最後の自分の走り振り返り、改めて今後についても語った。

　予選ではQ2を担当した松田次生、6番手タイムをマークしてこうポジションでのスタートとなった。だが、スタートでは第一スティントを担当した名取鉄平がタイヤのウォームアップが足りず、1周目に最後尾まで後退。そ序盤は苦しい場面もあったものの、スティント後半になると徐々に順位を上げていき19周目には10番手まで上がった。

　25周目にピットストップを行い、松田がスーパーGT現役生活最後のスティントに乗り込んだ。しかし、ピットアウトすると第一スティントの走り始めと同様にウォームアップに苦しみ、再び最下位まで下がってしまった。前日とは異なり曇り空になったことが、決勝日のヨコハマタイヤ勢にとっては難しい状況になったようだ。

「今回も良いタイヤを用意できていたのですが、もっと天気が良ければ速さを発揮できたと思います。晴れていれば、日向にタイヤを置いておくことである程度（走り始める前に）温めることができたので、それが出来なかっただけで随分と変わりました。鉄平の時もそうでしたけど、今日のウォームアップが厳しいことは覚悟していました」と松田。

　それでも、自身のスティントがいざ始まると、無我夢中だったようで、「バトルも多かったですし、いつもと変わらないようなスティントでした」と笑顔で語り始める。

「その後のペースは良かったので何台か抜くことができました。19号車（WedsSport ADVAN GR Supra）とバトルをしてなかなか抜けなくて、その後は64号車（Modulo CIVIC TYPE R-GT）に近づいて追い抜いて、さらに14号車（ENEOS X PRIME GR Supra）も抜いて……『よし、次は3号車（Niterra MOTUL Z）だ！』と思って、めちゃくちゃプッシュしたんですけど、うまいことブロックされたので、なかなか抜けませんでした。そこは悔いが残るのですけど、やれることはやったし『松田はまだ、あれだけ走れるんだ』という速さを見せて終われたのは、すごく良かったです」

　そうして38周のスティントが終わりチェッカーフラッグ。その瞬間「チェッカーを受けて『もう終わりなんだ』という不思議な感覚になりましたね。でも、安堵感の方が強かったです」と松田。レース前の会見でも、GT500を戦う上でのプレッシャーはかなりのものがあると話していたが、そこから解放された様子だった。

「毎日、肩の荷が重いようなプレッシャーがあって、KONDO RACINGで勝てないまま終わるじゃないかとか、いろいろな雑音もありました。その中で絶対に『やってやる！』と思っていたので……実際にそれが達成できたこと、それもトップチームというよりは9年ぶりの勝利に貢献できたことが大きかったです。僕にとってはこの歳で勝てたのが良かったです」

「あとはヨコハマタイヤさんとも良いタイヤを作ることができました。これをベースに来年がんばってもらいたいと思います」

　ただ、松田自身に関しては今季これで終わりというわけでなく、スーパー耐久（S耐）ではドライバーとしてST-Zクラスに参戦し、スーパーフォーミュラ（SF）ではチームアンバサダーを務めるKids com Team KCMGの一員としての仕事が残っている。

「実際のところは、SFが終わるまではゆっくりできないですね（笑）。S耐も僕が今のチームに入ってからST-3クラスやST-Zクラスで優勝して、今年は富士24時間レースでも優勝できました。こうしてしっかりと結果を出せているのは本当に良いことだと思います」と松田。

　レース前の会見でも、「レーシングドライバーとして挑戦したいことがある」と発言していた通り、スーパーGTラストランの余韻に浸るというよりは、早くも次を見据えて動き始めようとしている様子が印象的だった。

[オートスポーツweb 2025年11月11日]