
<カープ番コラム>
日南秋季キャンプ第4クール初日の14日、遅ればせながら今キャンプ取材初日となった。この日は田村俊介外野手(22)と内田湘大内野手(21)に注目していた。さかのぼること約2週間前、10月29日のマツダスタジアム。キャンプメンバーが一堂に会した秋季練習で、2選手はティー打撃からフリー打撃まで、両手で最後まで振り抜くスイングの割合が高かったからだ。
緩い球を打つ打撃練習では、フォロースイングの際に押し手を離す選手は少なくない。ただ、最後まで押し手を離さずにスイングする姿に、来季巨人2軍監督を務める石井琢朗氏から現役時代に聞いた言葉を思い出した。
「崩されて右手1本で打つことはあっても、しっかりと振りに行った中で押し手を離すことができるような会心のスイングはシーズンに2、3度くらい。だから普段から最後まで両手で振らないといけない」
同じく名球会入りした前田智徳氏とシーズン中に並んでティー打撃を行っていた両者は、ともに素手で押し手である左手を最後まで離さずにスイングしていた。
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押し手を離すスイングと、最後まで両手で振り抜くスイングでは負担も違う。練習量が増えるキャンプで両手で振り続けるには体力を要する。だからこそ、キャンプ終盤の第4クールも両者は両手でバットを振れているのか…。答えは、イエスだった。
フェニックスリーグからツイスト打法に取り組む田村は「だんだん打席の中で自分が思う動きに近づいて引っ張れるようになってきた」と手応えを口にする。内田もセンターへの意識を強く持ち、速い直球に設定された打撃マシン相手にも最後まで右手で押し込んでいた。
両手で最後まで振るからといって、技術が上がるわけでも、打てるようになるわけでもない。ただ、振る力が付くことはもちろん、気づきも得られる。日が沈んだ18時まで球場に残っていた内田は「疲労は問題ないです。絶好調です。いい打ち方ができていると、スイングした後に両手が(勢い余って胸の前まで)戻って来るほど振り抜けている」と疲労の色をまったく見せなかった。
ともに期待されながら、なかなか殻を破れないシーズンが続く。先日のドラフトで1位指名した仙台大・平川は田村と同学年で同じ外野手だ。新しい戦力に目が向くのはプロ野球界の常。新井監督は報道陣を通して「年間100打席くらいあったと思うけど、今までみたいにチャンスはやって来ない。そこを肝に銘じてやってほしい」と厳しいメッセージを残した。
2選手だけではない。今キャンプの打撃練習では、両手でしっかり打つ連続ティーを課せられている。戦力の底上げを図る秋季キャンプ。若手主体とはいえ、この場も生き残りをかけた争いでもある。歯を食いしばって握るバットのように、目の前のチャンスからも、その手を離してはいけない。【広島担当 前原淳】
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