『左ききのエレン』が映し出す「天才」と「凡才」の対比 2026年4月アニメ放送で注目の傑作を読み直す

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2025年11月18日 13:00  リアルサウンド

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TVアニメ『左ききのエレン』ティザーPV YouTubeサムネイル

 何者かになりたいと願う凡人と、孤高の天才の対比を鮮やかに描いたクリエイター群像劇『左ききのエレン』(かっぴー/ピースオブケイク、note株式会社)。2022年のアニメ化決定の第一報から約3年の時を経て、遂に2026年4月のアニメ放映開始が発表された。


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 主要キャストの2人、朝倉光一役を千葉翔也、山岸エレン役を内山夕実が担当することも合わせて情報解禁となった。


 2017年から2022年まで、全24巻にわたり集英社が運営する漫画アプリ「少年ジャンプ+」にて、作画にnifuniを迎えたリメイク版が掲載されたことも記憶に新しい。


 本記事では、改めて作品が持つ魅力とアニメへの期待感に触れていきたい。


■何者かになりたい男の挫折と成長の物語


 主人公、広告代理店でデザイナーとして働く朝倉光一は大きな憧れと夢を抱き広告業界に飛び込んだ。しかし現実は中々スポットライトが当たるようなチャンスもなく、降りかかる雑務をこなしながら苦虫を噛み潰す日々を過ごす。


 自分の実力の無さと上を見ればバケモノのような実力者達がひしめく中で、それでも何者かになりたいと奮闘する姿が丁寧に描かれる。著者自身も広告業界で働いていた経験があり、リアリティ溢れる描写で人間の心の機微を捉えた台詞が読者の心を強く揺さぶる作品なのだ。


 ここで印象的な台詞を1つ紹介したい。


 「クソみたいな日に、いいもんつくるのがプロだ」。


 光一の先輩、アートディレクターとして若くして社内でも高い評価を得ている実力者、神谷雄介が光一に伝えた言葉には、不条理な毎日を嘆き、日の当たらない日々を過ごしながら、それでもサラリーマンとして愚直に成果を出すことへの矜持を感じさせ、万人を奮い立たせてくれる力がある。


 営業職の流川俊や、後輩ながら光一の人生より何周も先を行っているような達観した台詞が印象深い、みっちゃんこと三橋由利奈など脇を支える人間たちもまた、それぞれの味を醸し出していて魅力的だ。


■クリエイティブの世界でもがく人間達の刹那の輝きを見逃すな


 朝倉光一と対をなす存在として、天才的な絵の才能を持つ、通称「左ききのエレン」こと山岸エレンの存在もこの物語を語る上で欠かせないピースだ。


 誰もが羨むような圧倒的なアートセンスを持ちながら、その才能故の孤独や葛藤を抱えているエレン。同級生の光一が絵の才能が全くないにも関わらず、身の丈に合わない夢を語ることに苛立ちを隠せないエレン。


 一見、交わる要素のない2人が生み出す化学反応をアニメでどう表現されるのか、注目ポイントの1つだ。


 本作ではエレンと光一の「天才と凡人」という対比が重要なテーマと言える。想像するに、読者の多くは凡人側の光一に共感するだろう。その実、エレンを孤独から救い出す一つのきっかけが光一になっているという点も見逃せない。


 神谷がいつの日か光一に伝えた「スターを照らす側の人生だってあるんだ」という言葉。
月がそれ単体で光ることができないように、太陽のように素材を光らせる存在のおかげで輝きを放つことができる。


 アニメ本編でも、光一の青臭さがどうしようもないくらいに眩しく映ることだろう。仕事で壁にぶつかっている時、理不尽な思いにかられて叫び出したい時。苦しさや悔しさの吐き出し所もなく内に抱えてしまう時。『左ききのエレン』が思ってもいない角度からそんな人間の背中を推してくれるかも知れない。


 2026年4月のアニメ公開を楽しみに待ちたいところだ。


(文=もり氏)



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