デフリンピック東京大会の陸上男子400メートル障害に出場する村田悠祐選手=8日、東京都品川区 聴覚障害者の国際総合スポーツ大会「デフリンピック」東京大会では21日、村田悠祐選手(20)=仙台大=が陸上男子400メートル障害予選に出場する。昨年の冬季デフ五輪のスキー種目で銀メダルを獲得した「二刀流」の村田さん。周囲の応援を力に変え、日本人初となる夏季・冬季のダブルメダルを狙う。
生まれつき耳が聞こえない村田さんは、東京都内のろう学校高等部1年の時に陸上競技を始めた。長野市出身で幼少期からスキー競技に取り組んでいたが、運動神経の良さを見込んだ同校の陸上部顧問から「体力づくりのため、陸上とスキーの二刀流はどうだ」と勧誘された。
同校では平日は陸上部、土日はスキーの練習に没頭した。それぞれのシーズンは正反対のため、休む暇もなく練習に明け暮れた。
村田さんは、授業を聞き取り文字に変えて伝える「ノートテイク」などのサポートが充実する仙台大(宮城県柴田町)に入学。大学でも二刀流を続け、昨年3月には冬季デフ五輪トルコ大会に初出場し、アルペンスキー大回転で銀メダルを獲得した。大舞台を経験し、「いいパフォーマンスを自分からつくりにいく力がついた」と振り返る。
大会後、「陸上でも自分がどこまで行けるか挑戦してみたい」と東京大会への出場を目指し始めた。今年5月には出場権が懸かった選考会の400メートル障害で2位に入り、参加標準タイムも突破するなどして代表に内定。1600メートルリレーでもメンバーに入った。
東京大会では別の選手の出場辞退を受け、男子400メートル走にも急きょ出場し、19日の決勝で5位に入った。大会の準備運営本部広報によると、夏季・冬季とも出場した日本人選手は村田さんを含め3人だが、双方でメダルを獲得した選手はいないという。
「自分の力だけでない。恵まれた環境があるから出場できる」と村田さん。「どんな状況でも力を発揮できる適応力が勝負を分ける。全力を出し切ってメダルを獲得し、もっと大会の価値を伝えていきたい」と力を込めた。