【F1】角田裕毅にとって「恵みの雨」となるか ラスベガス初のウェットレースなら「スパイシーな」展開になる

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2025年11月21日 17:40  webスポルティーバ

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 ネバダ州モハーヴェ砂漠の荒野に開拓されたラスベガスは、年間降水量が120mmにも満たない乾燥した街だ。

 そのラスベガスに大雨が降り、煌(きら)びやかなカジノホテルが建ち並ぶラスベガス・ストリップは排水が追いつかず、冠水してしまった。

 2023年の初開催からラスベガスGPは、ウェットセッションを一度も経験してこなかった。だが、今年はレース週末のなかで雨の予報もあり、荒れそうな気配が漂っている。

 ラスベガス入りした角田裕毅はこう語る。

「(雨が降れば)間違いなく、かなりスパイシーなセッションになると思います。今まで(ラスベガスで)ウェットコンディションで走ったことはないですし、そのコンディションに誰がうまく適応できるか興味深いところですね。

 気温自体もかなり低いので、タイヤウォーマーの温度が以前ほど高くない(60度)なかでインターミディエイトタイヤを履いて温度を上げていかなければいけないのも、かなりトリッキーだと思います。素早く熱を入れられるチームは、大きなアドバンテージを得ることになるでしょう。

 マクラーレンは伝統的に、インターミディエイトタイヤをすごくうまく使えています。なので、僕らもその点にはかなり集中していく必要があると思います」

 この時期のラスベガスはちょうど日本と似たような気候で、午後4時半には陽が沈み、セッションが行なわれる午後8時には気温が10度を下回ることも珍しくない。

 極端に寒い気候で、なおかつふだんはギャンブルとエンターテインメントを目当てに訪れる人々でごった返す一般道を使ったコース。特殊な低グリップのコンディションで、いかにタイヤをうまく作動させてグリップを引き出すかは、雨が降らなかったとしても大きな課題になる。

 角田自身も、昨年は予選7位の快走を見せたものの、2023年はまったくタイヤを機能させられずに予選最下位の苦汁をなめた。

「すべてがほかのレースとまったく違っていてユニークです。温度がかなり低いので、特殊なチャレンジになります。マシンのパフォーマンスを引き出すには、いつもとは違った手法が必要になるでしょう」

【エンジンは寒さ対策が必要】

 寒さはパワーユニットにも影響を及ぼす。冷却水やオイルが冷えすぎないよう、過冷却対策が必要になってくるのだ。

 ホンダの折原伸太郎トラックサイドゼネラルマネージャーは、寒さ対策を次のように説明する。

「油脂類の作動レンジが決まっていますので、温度が低すぎるとエンジンにもよくありません。よって今週末は、温める方向で対応していくことになります。ボディワークをフルクローズ(全閉)にして、それだけで足りない場合はブランキング(ラジエターに冷却風が当たらないよう被せるカバー)をつけるといった対応が必要になってくる可能性もあります。

 ブランキングはカーボン製ですが、重量もありますから無駄にはつけたくありません。できればブランキングなしでいきたいところですが、どこにどのくらいブランキングが必要かというのをFP1とFP2で見極めていくことになります」

 レッドブル全体としてもホンダとしても、エンジンパフォーマンスだけでなく重量面の削減でも、重箱の隅を突くような突き詰め方をしている。

 その結果が、前戦(第21戦)サンパウロGPのマックス・フェルスタッペンへの5基目パワーユニット投入であり、ピットレーンスタートからの3位表彰台獲得劇だった。

 その一方で、過去2戦の角田はポイントを逃し、悔しい結果に終わった。

 しかしレース中のペースを見れば、第17戦アゼルバイジャンGPの躍進(6位)以降はずっと、入賞圏内で争う速さがある。

「オースティン(第19戦アメリカGP)はスプリントも決勝も入賞(7位)できていいレースができましたし、メキシコ(第20戦)はピットストップのミスがなければポイントは獲れていました。

 ブラジル(第21戦)はリスタート直後にフロントウイングをヒットして、ペナルティを科されてしまったのは間違いなく僕のミスですけど、ペースはトップ7に入れるくらいかなりよかったので、あとは結果に結びつけるだけだと思っています。今週末も十分にポイントが獲れる速さはある」

【残された猶予は残り2戦のみ】

 サンパウロGPのあとは、ミルトンキーンズのファクトリーで最終3連戦に向けたシミュレーター作業を行ないつつ、トレーニングにも力を入れて身体レベルを維持してきた。

 チームメイトのフェルスタッペンは首位のランド・ノリス(マクラーレン)から49ポイント差になったとはいえ、まだタイトルへの望みを残しており、角田もアシストする姿勢は変えていない。

「まだ望みはありますので、可能なかぎりマックスやコンストラクターズ2位争いをアシストしたいと思っています。いずれにしても、予選でマックスの近くにいくことが最大のポイントです。それこそが僕がやらなければならないことだと思います。そうすればもっとポイント圏内で争えるようになります」

 レッドブルは11月末の時点で、来季のドライバーラインナップを決めるとしている。となれば、角田が残留を決めるために残された猶予は「残り2戦のみ」ということになる。

「まったくナーバスになっていないと言うと嘘になると思いますけど、去年も2年前も同じような状況ではありましたので、正直に言って慣れました。僕はそういう状況に置かれた経験が豊富なので、残り数戦で自分が何をすべきかわかっています。

 チームの決定自体は僕にはどうすることもできないことなので、自分の力でどうにかできるパフォーマンス面で最大限の力を出しきることに集中するだけです。今はラスベガスの雰囲気と、もしかしたらウェットコンディションになるかもしれないところを楽しみたいと思っています」

 ラスベガスは、スペイン語で「肥沃な土地」という意味だ。

 乾いた荒野の街だが、砂漠のなかにおいては水に恵まれたオアシスだったことに由来すると言われる。

 その乾いたオアシスに雨が降る──。今週末のラスベガスGPは、そんな恵みのレースになるかもしれない。いや、角田自身の力で、そんな週末にしなければならない。

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