RRP商品企画部の山口顕統括部長に話を聞いた 燃焼に伴う煙が出ないことが特徴の加熱式たばこ――。この市場で日本たばこ産業(JT)の存在感が高まっている。2025年7月に全国発売した加熱式たばこデバイス「Ploom AURA(プルーム・オーラ)」とたばこスティック「EVO(エボ)」が好評で、今年8月末にはPloom AURAの累計販売台数がJT史上最速で200万台を突破。Ploomのセグメント内シェアは25年7〜9月期(第3四半期)に15.5%に達し、直前の25年4〜6月期(第2四半期)から約2ポイント伸びて、3位から2位に浮上した。JTの加熱式たばこビジネスの現状と展望について、RRP商品企画部の山口顕統括部長に話を聞いた。
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●新加熱方式と新フレーバーによる最高の味わいで利用者を魅了
「今年7月に発売したPloom AURAの売れ行きが絶好調。その効果もあって、当社の加熱式たばこビジネスは業界2位の座を競合他社と一進一退の状況だ」と語るのは山口統括部長。加熱式たばことは、たばこ葉を電気ヒーターで加熱してニコチンなどが含まれた蒸気を発生させ、それを吸入する方式のたばこのこと。たばこ葉は専用の「たばこスティック」に収められており、デバイスに内蔵されたバッテリーがヒーターに電気を供給している。紙巻きたばことの最大の違いは、燃焼による煙が発生しないこと。そのため、周囲の非喫煙者に受け入れてもらいやすく、飲食店などでも吸える場所が多いという特徴がある。
JTが加熱式たばこスティック用の初代デバイス(Ploom S)を発表したのは、19年1月。その後、何回かのモデルチェンジを経て、2025年7月に全国で販売を開始したのがPloom AURAだ。「Ploom AURAでは最高の味わいを目指して、SMART HEATFLOWという新しい加熱の仕方を採用した」と山口統括部長。具体的には、「ヒーターを従来モデルよりも深い場所に配置し、たばこ葉の全体を加熱することによって、雑味が残らないように工夫した」と説明する。
また、Ploom AURAではデバイスのデザインにもこだわった。JTの調査では「手に持ったときにすっきりしたサイズ感の製品が望まれている」(山口統括部長)ことが判明。そこで、より円筒形に近い形状に変えることにしたという。ボディカラーはジェットブラック、ローズゴールド、ネイビーブルー、ルナシルバーの4色。ネイビーブルーが男性、ローズゴールドが女性に好評だ。中庸なジェットブラックとルナシルバーは、万人向けのカラーである。
さらに、Ploom AURA発売と同時に新しいたばこスティックのブランドもリリースした。Ploom専用たばこスティックには「MEVIUS(メビウス)」と「CAMEL(キャメル)」の2ブランドのたばこスティックが販売されていたが、これに、上質な葉を使用したプレミアムタイプのEVOを追加。Ploom AURAならではの加熱方法を前提に、たばこ葉についても最高の味わいを目指したのである。
銘柄は「ディープ・レギュラー」「コールド・メンソール」「ベリー・クリスタル」「トロピカル・ベリー・クリスタル」「トロピカル・バナナ・クリスタル」の5種類。山口統括部長は「どれかの銘柄に偏ることなく、どれもバランスよくお客様から支持を受けている。ここ最近は、8月に新発売したトロピカル・ベリーとトロピカル・バナナが好評」と話す。
●マーケティング施策のポイントは販売店での訴求とプロモーション
JTの調べでは、2025年第3四半期におけるJTの加熱たばこのSoS(セグメント内シェア)は15.5%。Ploom AURAの販売台数は2025年8月時点で累計200万台超を記録しているという。「Ploom AURAの初速は、過去製品の3倍に達している」と山口統括部長。このような好成績を達成できた背景には、マーケティングチームの奮闘もあった。
まず進めたのは、チームのマインドセットと仕事の進め方の変革である。「当社は紙巻きたばこで圧倒的な地位を有していたこともあって、どうしても保守的。しかし、挑戦者として加熱式たばこのビジネスを成功させるにはメンバー自らが課題を発見し、スピード感のある意思決定を続けられるマインドに自己変革する必要があった」と山口統括部長は振り返る。
具体的な施策として特に力を入れているのが、販売の最前線となるコンビニエンスストアでの消費者への訴求だ。「店頭に当社のディスプレーを展開したり、什器(陳列ケース)の一部を訴求用に使わせてもらったりしている」と山口統括部長。20歳以上の喫煙者に無料のお試しパックを店頭で配るプロモーションも実施している。
また、加熱式たばこの味わいを実際に試してもらうプロモーションにも力を入れている。Ploom AURA/EVOの全国発売の際には、東京・原宿で体験型ポップアップストア「THE SMOKING LOUNGE by Ploom」を約1カ月にわたって実施。音楽イベント会場やショッピングモールなどの人が集まる場所にも体験ブースを積極的に出展しているほか、企業から紹介を受けてそこの従業員向けにプロモーションをする機会も増えてきた。
ひとまずの成果を手にした後も、JTはPloom AURAとEVOの価値をさらに高めるための取り組みを続けている。EVOについては、新しいフレーバーを追加してラインナップを拡充していく予定。デバイスについても、利用者のニーズに応えるために――加熱式を超えるものも含めて――新しい方式の研究開発を進めているという。
プロモーションについては、「Ploom × NAKED, INC. ポップアップストア渋谷」をMEDIA DEPARTMENT TOKYOで12月1〜7日の 7日間限定で開催。このポップアップストアは、12月1日に全国発売するEVO新フレーバーと12月9日から全国発売するPloom AURAリミテッドカラーの先行発売を記念した没入体験型ポップアップイベント兼ストアとなる。
「加熱式たばこ市場への参入の遅れを挽回するために、全社員が長い間苦しい戦いを続けてきた。しかし、“戦える”新商品の登場とマーケティング施策の効果によって、業界2位の座の確立も目前に迫っている。組織としても強くなったので、さらに上を目指してこれからも頑張っていきたい」と山口統括部長はアピールする。