次世代グローバルリーダーの育成を目指す、NTT東日本×ミネルバ大学の共同プログラムが始動 - “防災×フィールドワーク”開催

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2025年11月21日 18:21  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
次世代のグローバルリーダーの育成を目的とした新たな教育モデルを共創するため、NTT東日本とミネルバ大学およびミネルバジャパンは9月8日に連携協定を締結した。その中の取り組みのひとつに、「防災・復興」をテーマとした学びの機会を提供するというものがあったが、そのためのフィールドワークが10月7日、8日にわたって岩手県釜石市にて行われた。ここでは8日におこなわれた大槌町中央公民館でのワークショップの模様をお伝えしよう。

○第一部は「防災」を考える



岩手県釜石市は、かつて日本を襲った東日本大震災の際に、非常に大きな被害を被った地域のひとつだ。リアス式海岸にある街ということもあり、特に津波による被害は甚大だった。本プログラムを受講した学生はミネルバ大学2年生48名とドルトン東京学園中高生7名。カリフォルニア州サンフランシスコに本部を持つミネルバ大学から参加した学生のほとんどは外国籍であり、日本でおこった未曽有の大震災のことはニュースなどでしか知らない若者が中心だ。


そんな学生らは前日から釜石市に入り、震災の伝承を残す各施設を回っていた。そしてこの日は、実際に震災のときにこの地にいた人々から直接体験談を聞くこととなった。



学生が与えられた席につくと、壇上には進行を務めるかまいしDMCの河東英宜氏と通訳者のほか、3名の登壇者が現れた。ひとりは震災当時、釜石市で打ち合わせ中だったというNTT東日本 岩手支店 ビジネスイノベーション部 地域基盤ビジネス担当の岡崎均氏、市の職員として当時避難所の管理や被災者対応にあたった釜石市 オープンシティ・プロモーション室 室長の佐々木護氏、同じく釜石市 地域福祉課 岩鼻千代美氏だ。


岡崎氏、佐々木氏、岩鼻氏による震災体験談はどれも身につまされる思いがするエピソードであり、当時の混乱と恐怖を学生に伝えるのに十分なインパクトを持つものだった。特に岩鼻氏が平常時に対応していた聴覚障害のある方を津波から救えなかった事実を語った際には学生の何名かが顔を覆うほどだった。


NTT東日本が伝えたかったのは、震災の被害の大きさや悲しさだけではなく、この時の対応に問題はあったのか、どのようにしたら被害を最小限にできるのかという課題だった。



津波の速さからは人間の足ではとても逃げ切れないという事実、各自がとった避難行動により生死が分かれた理由、なぜ障がい者や外国籍の住人に逃げ遅れた人が多かったのか。さらには、長く続く避難所での暮らしによる心と体のケアの必要性、医療継続の難しさなど、東日本大震災での教訓や課題は非常に多い。


それらに対して、現在のICT、あるいはこれから開発される未来のICTを使って課題を解決するにはどのような方法があるのか。これらについて考えるのが学生たちに与えられたNTT東日本からのミッションだった。

○第二部は防災を実現する



前日までの震災資料や先ほど聞いた震災体験者の話をベースに、彼らは課題を再度あぶり出していく。日本やNTT東日本が持つICTテクノロジーについては、各テーブルにデジタルテクノロジーに理解のあるNTT東日本職員が付き添いながら、彼らのよきアドバイザーとなって助言を送る。

ワークショップのルールを説明するNTT東日本 防災研究所 所長の笹倉 聡氏。彼の回答例は「平常時の農作業にも使えるパワードスーツを貸与し、災害時にはそれで救助に当たってもらう」というものだった。



真剣な表情の学生たちは、会場後方に展示されたNTT東日本の最新ソリューションをよく知ろうとスタッフに質問をする。スタッフも心得ており、彼らのよきヒントになるよう、最新テクノロジーをやさしく教える。会場が一体となって、若い世代のアイデアの花を咲かせようと努力している様子は実にほほえましく、頼もしかった。


やがてこのワークショップも時間切れとなり終了。時間の関係で当初は先着2組の発表にとどめようとしていたが、結局ほとんどのグループ手を上げ、自分たちで導き出した課題解決について全員の前で語ることになった。学生たちが真剣に震災と向き合い、課題解決へ向けアイデアを出し合ったのかわかる結果となった。


ワークショップの結論を発表するグループリーダーたち。彼らからは、「電力・情報アクセスの不足を前提として、あらかじめ医療・福祉施設の中核避難拠点を作っておく」「誤情報・過少予測に対してAIを用いて多角的検証をおこない、迅速かつ正確な配信を目指す」「SNSから最新情報を収集・要約し、AIで真偽検証をして避難の意思決定を支援するツールを作成する」「要支援者の位置追跡とボランティア派遣を連携できるテクノロジーを作り、安全に避難できるタイミングを明示するシステムを作る」「文化の違いによる避難格差をなくすため、平常時から避難することにメリットがあるようなインセンティブ設計について議論する」といったアイデアが飛び出してきた。



震災の地で二日間をすごした学生達は非常に大きな収穫を得たようだ。フィールドワークのプログラムがすべて終了した彼らには災害時用の非常食が配られたが、これは実際に被災者に配られるものだ。とはいえ、そこはメイドインジャパン。味については文句なしとあって、喜んでほおばる姿は笑顔であふれていた。


世界の未来を背負う学生らには、今回の学びを母国へ持ち帰り、仲間を作り、広めてほしいというNTT東日本からの願いと「そして日本に戻り、私たち防災研究所で共に働く日が来るのを楽しみにしています」というジョーク交じりの贈る言葉がしっかりと心に届いたはずだ。



今回の協定が目指す「次世代グローバルリーダーの育成」へ向けたフィールドワークは、ひとつの役割を果たしたといえる。とはいえ、現代の国際社会を取り巻く課題はまだまだ尽きることなく、新たに発生し続けている。若者たちのさらなる成長のため、今後もこの活動が実を結び続けることに期待したい。(エースラッシュ)

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