妊婦の「電車で席を譲ってもらえない」との声に批判が。妊娠中の女性が「車内で体験したこと」

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2025年11月21日 21:50  All About

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妊婦の「電車で席を譲ってもらえない」との投稿が話題だ。「妊娠中の女性には席を譲る」マナーにモヤモヤを感じていた人が多いのだろう。一方、当事者である妊娠中の女性たちは電車内で何を思い、どう行動しているのだろうか。※サムネイル画像:PIXTA
とある外国人の妊婦が、電車内の動画と共に「誰も席を譲ってくれない」とTikTokに投稿、9000件以上のコメントがついたとして話題になった。賛否両論、いろいろあるが、中には「あなたの妊娠がなぜ私の問題になるのか?」という意見もあり物議をかもしている。

電車内は、その場に偶然居合わせた人たちで作られる、ごく一時的な「社会」のようなものだ。いろいろな人がいて、体力気力もさまざまだろう。多くの人は座りたいと思っている。だが全員分の座席数はない。そこで「私の方が大変なのに」と言いたくなるものなのだ。

妊婦もそれぞれだけど

「私は1人目の子のときは妊娠中、とても楽だったんです。つわりもほとんどなかったし、臨月に入っても働いていたくらい。だからその後、仕事に復帰してからは後輩が妊娠して、つわりがひどくて出社できないと聞いて、内心、甘えているんじゃないのと思ったこともありました。だけど2人目を妊娠したら、つわりがとんでもなくひどくて、あげく流産の危機で入院までしました。安定期に入ってやっと出社できたけど、とにかく体調が悪くて……。1人目はあんなに楽だったのがうそのようでした」

マユミさん(40歳)はそう言う。33歳で長女を、36歳で次女を出産した。特にその間、病気をしたわけでもないのに、信じられないくらい体調に違いがあったと振り返る。

「後輩に対して甘えてるんじゃないのと思ったことを深く反省しました。妊娠時期の体調は、本当に人それぞれだしその日によっても違う。だから電車の中で、『妊婦に席を譲ってほしい。そのくらいの礼儀をもってほしい』と思う気持ちは分かります」

ただ、他の人だって病気をもっていてつらいかもしれない、精神的に落ち込んでいて立っていられないかもしれない。そうした配慮は必要だろうと言う。

「お互いさま」の気持ちで

「譲ってくれる人がいたらラッキーくらいに思って、例えば回り道だけど座れる確率の高い電車にするとか、最悪、私は退勤時にタクシーを使ったこともあります。今日は自分の体を自分でいたわるしかない。そう感じる日があったので」

もちろん、みんながそうするべきだとは思わないとマユミさんは力を込めた。自分より大変そうな人に、誰もが気軽に席を譲り、譲られた人がさらに大変そうな人にまた譲る。そんな社会が理想的ではあると感じている。それでも、自分の思い通りにならないとき、「誰かがこうしてくれればいいのに」と言う人間にはなりたくないと、彼女自身の主義を口にした。

「私の母などは、よく『お互いさま』と言っていたけど、気軽に助けたり助けられたりする風潮が戻ってくればいいなとは思っています」

もう少し、ほんの少し「他人」を観察してみてもいいのかもしれない。

いざとなれば……

以前、電車内で見かけた光景を話してくれたのは、ミズキさん(39歳)だ。

「そこそこ混んだ電車の中で、急にふらっとしてうずくまってしまった女性がいたんです。50歳前後でしょうか。さすがにそのときは目の前の3人くらいがいっせいに立ち上がって、周りの人も手伝って座らせていました。水のペットボトルを差し出した人もいた。いざとなると親切にする人が、こんなにいるんだと思いましたね」

気づけば動く。だが気づかなければ動かない。気にはなっても確認できない。そんなところから席を譲る行為が滞りがちなのではないかと彼女は言う。

優先席に向かって声を上げた女性

「つい先日、帰宅ラッシュの電車内で、大きなおなかの女性が『すみません。あんまり気分がよくないので座らせてもらえないでしょうか』と優先席に向かって言っていたんです。勇気があるなあと思いました。特に誰と指定せずに声を上げたんです。そうしたら近くにいた年配の男性が『妊婦さんが気分が悪いって。だれか譲ってあげてよ』と。若い男性がさっと立ちました。そして彼の言葉がすごかった。『気づかなくてごめんなさい』って。なんていい若者なんだろうと感激しましたね。そのあたりは一気に場が和んでいました」

妊婦さんは「こちらこそ、わがまま言ってすみません」と静かに腰を下ろしたという。電車内は小さな社会。その場だけの関係だとしても、周りも含めてとても気持ちいい時間と空間を共有できたのだ。ほんの少しの思いやりが、今ほど求められている時代はないかもしれない。

「席があいていて座ろうと思うとき、私は必ず周りを見渡すようになりました。誰か席を必要としている人がいないかなって。でもその間にすっと同世代の男性などに座られてしまうこともあるんですけどね。ムッとしますが、そういうときは『帰りに石につまずいて転んでしまえ』と心の中で呪いをかけて(笑)、気持ちを切り替えます」

何ごとも思い通りにはならない。そうやって思い切るしかないとミズキさんは笑った。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
(文:亀山 早苗(フリーライター))

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