
日本は“災害大国”だ。大地はよく揺れ、時に火を噴く。気候変動の深刻化で豪雨に突然襲われることも増えた。子どもたちが命を守るのに役立つ「新しい防災教育」を構築できないか。奈良市の奈良女子大付属小学校で取り組みが始まった。発案したのは、四天王寺大(大阪府羽曳野市)で理科教育を専門とする准教授。防災教育に熱心な教諭がいる同小と奈良地方気象台を誘った。授業と歩調を合わせ、随時、紹介したい。【大川泰弘】
文部科学省は2019年、学校の防災体制を強化し、実践的な防災教育を推進するよう全国の教育委員会に求めた。また、小中高の学習指導要領改訂でも防災や自然災害に関する内容が多くの教科で盛り込まれた。しかし、文科省の求めから6年たっても、実態はあまり変わっていないとみられる。桃山学院大講師らが実施したアンケートによると、防災教育を実施していない小学校は約20%、中学校が約30%、高校は約40%に上るという。
こうしたお寒い状況を変えられないか。四天王寺大の仲野純章准教授は「効果が期待でき、どの地域でも展開できる防災教育の構築」を目指すことにした。魅力的な防災授業のモデルを作って全国に提案していく。2024年10月、防災教育に熱心な長島雄介教諭がいる奈良女子大付属小と奈良地方気象台に声をかけ、議論を重ねてきた。
全国に観測網をもつ気象台は、気象や地震・火山の情報を収集し、防災に関する発信をしている。頻発する大規模自然災害に対応して22年度に「リスクコミュニケーション推進官」というポストを新設。これまで自治体と防災に関する情報共有をしてきたが、インフラ関連企業や福祉事業者、学校とも情報共有を進め、防災の知見を普及させることを狙っている。奈良地方気象台の推進官、辻晶夫さんも加わってプロジェクトが動き出した。
授業を受けるのは5年生。12月に最初の授業がある。2学級のうち「月組」はフィールドワークも行い、自分が住む地域のリスクとその対処法について学ぶ。気象台は授業のうち2コマを担当する。限られた時間で小学生に何を伝えるか。大人相手の講座にはない難しさがある。来年2月に児童らによる発表会が行われる予定だ。
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仲野准教授は「災害時、自らのいる場所にどういった危険性が潜んでいるかを考える力、必要な防災気象情報を選び出して利活用する力が根本的に必要だ。今回、そうした力の育成に向けた基本パッケージとなるモデルを構築したい」と話している。
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