Androidが“エアドロ”に対応しても、若者のiPhone人気が衰えないと考えられる3つの理由 10代には変化の兆候も?

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2025年11月27日 08:11  ITmedia Mobile

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「AirDrop」は写真や動画の送受信に便利

 Androidデバイスで利用できる近距離ファイル転送機能「Quick Share」(クイック共有)が、Appleの「AirDrop」(いわゆるエアドロ)に正式対応しました。AndroidスマホとiPhone同士で、ついにその場で写真や動画を手軽に送り合えるようになります。まずはPixel 10シリーズからの対応となっていますが、今後は他のAndroidデバイスにも展開していくとのことです。


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 AppleのAirDropは、近くのAppleデバイスとBluetoothやWi-Fiを使ってファイルを送受信できる機能です。基本的にモバイルネットワークのデータ通信を使用しないため、“ギガが少ない”(契約しているデータ通信量が少ない)中高生に人気があり、“エアドロ”の愛称で親しまれています。


●エアドロが欠かせない中高生の生活


 中高生は日常的に写真や動画をシェアする機会があります。友達と撮ったプリントシール機のデータ、映える韓国カフェでの写真、一緒に踊ったダンス動画など、毎日のように撮影した写真をやりとりしています。


 特に体育祭など学校のイベントがあるときは、やりとりが増えます。組別対抗ダンスがあれば振り付けや練習の様子など、大量の長尺動画を仲間内でシェアしなければなりません。


 そんなとき、「エアドロするよー!」と声を掛ければ、みんなが一斉にiPhoneを持って集まり、写真や動画を一瞬で全員に送れます。LINEで送受信する方法と異なり、オリジナルのままの高画質で素早く送信できて、データ通信量も消費されません。


 また、連絡先を交換しなくてもデータを送受信できるところもAirDropの良い点です。LINEやInstagramでつながっていない相手でも、すぐにデータを送れます。「写真のためにLINE交換とかウザいんだけど」という思いも、AirDropなら解決です。


 最近はiPhoneの名前を“推し”(応援しているアイドルや芸能人、キャラクターなど)の名前にすることで、AirDropで送信元に表示される名前を推しの名前に変える人もいます。おかしな名前を設定してAirDropのたびにウケを狙う人も。それほど、若者の間でAirDropが使われる機会は多いのです。


 AirDropがよく使われる理由として、そもそもiPhoneユーザーが若者に多いということが挙げられます。


 東京都生活文化スポーツ局が令和5年3月に公表した「スマートフォン等の利用等に関する調査 報告書」を見ると、小学生から高校生の全体では「iOS(iPhone)」のユーザーが61.8%ともっとも高く、「Android」は37.9%となっています。


 学年が上がるほどiOSの割合が高くなり、中学生は62.9%、高校生は72.3%がiOSを利用しています(中高生対象のOSに関する調査があまり行われていないため、東京都限定の調査を引用しています)。


 こうなると、写真や動画を盛んにやりとりする世代こそ「みんながiPhone」という状況になります。Xでは「子供がエアドロ迫害を受けている」といった親の嘆きもあり、AirDropのためにiPhoneにしたがる人も少なくないのでしょう。


●AirDropできるなら、中高生はAndroidに移行するか?


 筆者がよく相談を受けることに「iPhoneは高いからAndroidを子供に持たせたい」「Androidではいじめられるのか」といった保護者の声があります。子供はiPhoneを欲しがるけれど、親は本体価格が安いAndroidにしたいというニーズがあるのです。


 中高生がiPhoneを欲しがる理由としてAirDropの存在が挙げられるのなら、今後は(AirDropが使えるようになった)Androidスマホを持ちたがるのでしょうか。


 残念ながら、AirDropだけでは中高生のiPhone熱は冷めないように思います。なぜなら、iPhoneが人気の理由はAirDrop以外にもあるからです。


スマホケースの充実


 理由の1つは、スマホケースの豊富さです。iPhoneケースは、純正以外に家電量販店などでもさまざまなデザインが売られています。10代に人気の透明ケースも、100円均一ショップですぐに手に入ります。特に、雑貨ショップやファッションブランドはiPhone用のケースしか販売していないことも多く、かわいいiPhoneケースに入れて持ち歩きたいと考える女子はiPhoneを選びたくなります。


“盛れる”イメージが強いカメラ


 そして、iPhoneのカメラ人気もあります。「iPhoneの標準カメラが一番盛れる」と考える女子が多く、みんなで撮影するときは新しいiPhoneを持っている人が撮影する流れになりがちです。ここ数年流行しているSNS「BeReal.」も標準カメラでの撮影ということもあり、カメラ自体の性能が注目されています。


 最近は自撮りを美顔アプリで加工しない人も増えており、ナチュラルなままで盛れる写真を目指しています。自撮りアプリ「BeautyPlus」には「Appleモード」が用意されており、自然に盛れると好評です。iPhoneを使っている人でもAppleモードで撮影することが流行っています。


 iPhoneシリーズは、スマホ全体ではミドルレンジモデルからハイエンドモデルに位置付けられ、性能の良いカメラが搭載されています。Androidでもハイエンドには高画質で美しく撮れる機種はたくさんあるのですが、身近にはそうした機種を持っている人がいないのかもしれません。


 また、実際のカメラ性能だけでなく、「iPhoneは盛れる」「iPhoneかっこいい」といったブランドイメージの高さによるところも大きいのだと思います。


安価なエントリーモデルのAndroidスマホと比較されてしまいがち


 他にも、主に男子から「Androidはゲームがカクカクする」といった声もあります。こちらも、中高生が買い与えられたAndroidスマホが主にエントリーモデルであることが多く、ハイエンドモデルのiPhoneと比較してしまうと厳しいということでしょう。


 このように、AirDrop以外にも、ケースの豊富さやカメラやスペックの違いから「私も(僕も)iPhoneがいい」と考える中高生が多く、iPhoneの人気は続いているだと思います。


●近い将来、iPhone人気は徐々に変わる?


 しかし、盤石なiPhone人気にも陰りが出てくるかもしれません。MMD研究所が2025年9月に公表した「2025年9月スマートフォンOSシェア調査」を見ると、「メインで利用しているスマホのOS」は10代男性(18歳以上)でiPhoneが55.6%、10代女性(18歳以上)はiPhoneが73.7%となっています。


 やはりiPhone人気は高いのですが、10代よりも20代の方がiPhoneの割合が多く、20代男性は69.6%、20代女性は81.0%と、年代別ではトップです。


 これまでの調査では、10代は他の年代に比べてもっともiPhoneの割合が高かった(一例:MMD研究所「2022年5月スマートフォンOSシェア調査」)のですが、最新調査では20代がトップになっています。


 これは、10代でiPhoneを利用していた層が20代になり、引き続きiPhoneを利用しているため、20代のiPhone利用率が高くなったと考えられます。OSを変える機種変更は、LINEのトークなどの引き継ぎができず、控える人も多くいます。この世代は今後もPhoneを利用していきそうです。


 そして今の10代(18歳以上)は、過去の調査よりAndroidユーザーの割合が増えています。親の意向でAndroidにしている人もいるかもしれませんが、このデータは成人している人を対象にしているため、家族のせいだけとは考えにくいでしょう。このAndroidユーザーは、引き継ぎAndroidを使い続けてる可能性があります。


 現在、Androidの各メーカーは若いアイドルなどをCMに起用し、ブランドイメージの向上を狙っています。自分でスマホを選べる年齢になったとき、「推しと同じAndroid」「おしゃれでかっこいいAndroid」を選ぶ傾向が生まれてきているのかもしれません。そんな中でAirDropが障壁にならなければ、Androidを使い続ける、もしくはAndroidに機種変更するハードルはぐっと低くなります。


 こうして考えてみると、「iPhone一強」だった中高生のシェアも少しずつ変化していく可能性があります。ただ、今回のAirDrop対応については、Appleの協力を得た機能ではない様子ですので、普及が広がらないことも懸念されます。もうしばらく、展開に注力する必要がありそうです。



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