衣類50万トン廃棄の時代に――大阪発「服の新循環モデル」始動 官民が"捨てない仕組み"をビジネス化へ

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2025年11月27日 11:00  マイナビニュース

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国内で年間約50万トンもの衣類が廃棄される現状に対し、大阪を起点に官民一体で挑む新たな枠組みが動き出した。



2025年11月25日、大阪市の「阪急うめだ本店」にて「サステナブルファッション・プラットフォーム協議会」の設立記者会見が開催された。



行政、小売、リサイクル企業が連携し、回収から再生までをボランティアではなく、「経済合理性」のあるビジネスとして成立させる試みだ。



本記事では、その設立会見の模様とプロジェクトの内容をレポートする。


○「実証」で終わらせない。環境省モデルを“インフラ化”へ



本協議会は、環境省のモデル実証事業を母体とする。会見冒頭、環境省 近畿地方環境事務所次長の山根正氏は、「国内供給衣類の約7割が焼却されている現状がある。2030年度の廃棄量25%削減目標に向け、本協議会が大きな力になる」と期待を寄せた。


また、経済産業省 生活製品課課長補佐の伊藤桂氏は、「大都市・大阪で透明な仕組みを構築できれば、ここを起爆剤として全国へモデルが広がる」と強調。


大阪府 環境農林水産部長の原田行司氏も、「万博のレガシーとして、大阪からサーキュラーエコノミーを先導したい」と、産官民連携の意義を語った。


○参加のしやすさは、安心より先に“数字”でつくる



本協議会の代表理事、エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社・代表取締役社長の荒木直也氏は、持続可能性の鍵は「ビジネス視点」にあると説く。



また、荒木氏は「活動継続には採算性が不可欠です。トレーサビリティ(追跡履歴)で再生繊維の価値を高め、コストを賄えるビジネスモデルを構築します」と述べ、生活者が安心して参加できる透明性の確保を宣言した。


○回収は小売、再生は工場。衣類循環は「分業」でうまく回る



サプライチェーンの入り口となる「回収」では、小売と自治体が連携する。 青山商事株式会社・代表取締役社長の遠藤泰三氏は、「全国700店舗以上の『洋服の青山』などで、誰もが参加しやすい身近な回収拠点を提供する」と表明。


JR西日本SC開発株式会社・代表取締役社長の竹中靖氏も、「まずは大阪で立ち上げ、西日本エリア30カ所の施設網へ、そして全国へと広げていきたい」と意欲を見せた。

自治体からは、藤井寺市の岡田一樹市長が「ゼロカーボンシティ宣言を行う市として、焼却ゴミ削減は急務」と賛同し、タオル産業の歴史を持つ泉佐野市の千代松大耕市長は「繊維産業が盛んな当市として、新しい地域経済を生み出す可能性を感じる」と述べた。


回収後のプロセスでは、各分野のプロが技術を持ち寄る。選別を担うファイバーシーディーエム株式会社・代表取締役会長の泉谷康成氏は、「大阪と海外拠点で計約2万5,000トンの処理能力があり、目標の8,000トン選別は十分に可能」と自信を見せた。


再生技術においては、シキボウ株式会社 執行役員の中条洋子氏が「紡績技術で再び糸の状態に戻すアップサイクルシステム」を提示すれば、モリリン株式会社 代表取締役社長の森俊輔氏は「生産者の立場から、素材『Paneco』などを通じて廃棄問題に貢献する」と語った。


また、リユース困難な衣類については、住友大阪セメント株式会社・常務執行役員の細田啓介氏が「セメント工場で熱エネルギーや原料として活用し、無駄に一枚も捨てない」と、完全循環への受け皿となることを約束した。


こうした物理的な循環に加え、Earth hacks株式会社 代表取締役副社長の和田佑介氏は、「CO2削減量を可視化する『デカボスコア』で、脱炭素を楽しい生活習慣に変えていく」と、生活者の行動変容を促す役割を担う。(※株式会社MILKBOTTLE SHAKERSも参画)


○大阪から全国へ。大都市モデルが標準化する可能性



さらに、応援団体として株式会社徳島大正銀行 代表取締役頭取の板東豊彦氏が登壇。「長年の取引先であるファイバー社をはじめ、この官民一体の枠組みを金融面から万全の体制で支援する」と力強いメッセージを送った。


本協議会の狙いは、単なる回収キャンペーンではない。廃棄衣類を「資源」として捉え直し、回収から再生までを経済ベースに乗せることにある。



大阪発のこの挑戦が、日本のファッション産業のスタンダードを刷新できるか、注目が集まる。


西脇章太 にしわきしょうた 1992年生まれ。三重県出身。県内の大学を卒業後、証券会社に入社し、営業・FPとして従事。現在はフリーライターの傍ら、YouTubeにてゲーム系のチャンネルを複数運営。専門分野は、金融、不動産、ゲームなど。公式noteはこちら この著者の記事一覧はこちら(西脇章太)

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  • 繕い、当て布し、刺繍して、最後は裂き織りか雑巾にしてる、仕事の合間にクソ忙しいけどな、それも生活のローテーション、旦那の着古したTシャツは良く汚れを吸着してくれるわ〜
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