北海道電力×北海道ワインプラットフォーム – 水力発電所トンネルでワインの熟成実証

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2025年11月27日 11:30  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
北海道電力は、水力発電所トンネルの温度が一定に保たれた環境を活かしたスパークリングワインの熟成実証に取り組んでいる。北海道大学を中核とする「北海道ワインプラットフォーム」と連携し、北海道のワインづくりにおける新たな可能性を検証するものだ。



同社の事業共創推進室では、北海道の強みを活かし課題解決に寄与する新規事業の創出を進めており、今回の取り組みもその一環として位置づけられている。



本稿では、北海道大学 大学院農学研究院の曾根輝雄教授と、北海道電力 事業共創推進室 事業共創グループ担当課長の小関綾子氏に、取り組みの狙いや北海道のワインづくりの特徴について話を聞いた。


北海道ワインプラットフォームとは



北海道ワインプラットフォームは、2022年4月に設立された、北海道大学を中核とする産学官金連携のワイン産業支援組織である。大学、行政、金融機関、研究機関などが参画し、人材育成、経営支援、マーケティングなどを通じて、ワイン産地としての北海道の発展を後押ししている。



主な取り組みは、道内のワイン産業に関する調査やセミナーの開催、企業・自治体向けの講座運営、ぶどう農園のツアーや、新たにブドウ栽培を始めたい人を対象とした講習会など多岐にわたる。



また、ブドウ栽培やワインづくりに関するデータの収集・分析にも力を入れており、北海道の地域ごとの特徴を整理。これらの情報は「ワインレポート北海道」としてまとめられ、果汁や気象の傾向、受賞歴などを紹介している。2025年夏からはメールマガジンを通じて一般向けにも配信が始まり、道内外の関係者が参考にできる形で公開されている。



さらに、ワインづくりに関わる経営や栽培、参入に関する相談にも応じており、生産者や関係機関を支える窓口としての役割も担っている。こうした多面的な活動を通じて、北海道のワイン産業全体を俯瞰しながら、支援体制を着実に整えている。

北海道大学の取り組み



北海道大学では、道内企業などからの寄附をもとに、2021年から3年間にわたり、北海道ワイン教育研究拠点設置に向けた寄附講座「ヌーヴェルヴァーグ研究室」を設置した。



その活動の2年目にあたる2023年9月には、学内に「北海道ワイン教育研究センター」を設立。旧校舎を改修して、北海道ワインプラットフォームのセミナーや研究活動の拠点となる施設を整備した。



同センターには、農学、経済学、工学、マーケティングなどを専門とする約20名の教員が兼任で関わり、ブドウ栽培から醸造、流通までを横断的に研究している。


教育面では、大学院講義「北海道サステナブルワイン学」を開講。15回構成の講義には、開講初年度で60〜70人、昨年度は240人が履修し、累計で約500人が受講している。農学系以外の学生も多く参加しており、ワインのテイスティングなどを取り入れた実践的な内容が人気を集めている。



さらに、北海道ワイン教育研究センターでは金・土・日・月曜に一般向けのテイスティングコーナーを開設し、12種類の道産ワインを有償で試飲できるようにしている。産地や品種、生産者の異なるワインを比較できる構成とし、味わいの違いから地域ごとの特徴を学べる仕組みだ。

こういった北海道大学の取り組みは、ワインプラットフォームとの連携によって地域との繋がりをより深めている。



曾根教授は「研究と教育の成果を社会にシェアしていく上で、北海道ワインプラットフォームの存在が非常に重要。一見ワインと関係ない分野とも、実は繋がりがあったりする」と語った。

北海道電力の取り組み 水力発電所のトンネルを活用した熟成実証



今回のスパークリングワイン熟成実証は、北海道電力が自社の設備や知見を地域課題の解決に活かす取り組みの一環だ。



同社の事業共創推進室は、北海道の課題解決に向けた新規事業を推進する部門として約2年前に設立され、北海道の課題解決に取り組んでいくための新規事業を取り扱っている。



これまでも、水力発電所トンネルの温度が一定に保たれた環境を活かし、北海道産の酒米を使った日本酒の熟成を行うなど、地域産業との連携に取り組んできた。小関氏は「北海道では温暖化の影響でブドウが育つようになり、ワイナリーが増える中で、地域としてどうブランディングしていくかが課題だと感じました」と語る。



同氏は「北海道の気候でできるブドウはスパークリングワインに適しているというお話を聞き、日本酒と同様にトンネル熟成が新たな話題性や付加価値につながればと考えました」と続けた。


この発想から、北海道ワインプラットフォームとの連携が生まれ、発電所トンネルの温度が一定に保たれた環境を活かしたスパークリングワイン熟成実証が始まった。



ワインの熟成にトンネルを活用する例は国内外にもあるが、スパークリングワインでの実証は珍しい。北海道のブドウは酸味が強く、スパークリングワインに適しているとされることから、この特徴を生かした新たな地域ブランドづくりを目指している。



今年9月に始まったトンネル内でのスパークリングワイン熟成は、8度前後と23度前後という2つの異なる温度環境で1年間実施される。熟成後は北海道大学が香りの分析を行い、低温と高温による熟成の違いを検証する予定だ。



一般的なスパークリングワインの熟成温度(約14度)と比較し、温度差が品質にどのような影響を与えるのかを明らかにしていく。



曾根教授は「一定温度で大量の瓶を長期間保管できる場所はなかなかない。トンネルのような空間が使えるのは面白い取り組みになると思う。多くの生産者は長期間ワインを置く場所を確保できないワイナリーも多い。場所という意味でも、話題性や付加価値がある」と期待を寄せた。


北海道電力は2025年9月から、同様の方法でジンの熟成実証も開始しており、将来的にはマーケティング展開も視野に入れている。まずは1年後に熟成したスパークリングワインを取り出し、結果をもとに今後の展開を検討していく予定だ。()

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