死者への中傷、異例の起訴 「判例を作る覚悟」 立花被告の認識が鍵

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2025年11月28日 20:25  毎日新聞

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兵庫県警本部から送検される立花孝志容疑者(中央)=神戸市中央区で2025年11月10日午前9時43分、大西岳彦撮影

 死亡した元兵庫県議を中傷したとして、神戸地検は28日、政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志容疑者(58)を名誉毀損(きそん)の罪で起訴した。元県議が亡くなった後に繰り返したとされる立花被告の発言も、地検は中傷に当たると判断した。


 元兵庫県議の竹内英明さん(当時50歳)は生前だけでなく、死後も立花被告に「兵庫県警に逮捕される予定だった」などと発信されていた。死者への名誉毀損罪を争う刑事裁判は異例だが、捜査を進めてきた検察や警察は立証に自信をみせる。


 名誉毀損罪の法定刑は3年以下の拘禁刑か50万円以下の罰金。生前の人と死者に対しては、成立の要件が異なる。


 生きている人に対しては発信内容が事実か虚偽かにかかわらず、相手の社会的評価を損ねたと判断されれば適用される。ただ、発信に公共性や公益性があり、結果的に虚偽だった場合でも、真実と信じるに足りる相当な理由(真実相当性)があれば罰せられない。


 一方で死者に対しては内容が虚偽で、発信者も虚偽だと分かって発信した場合に限って罰せられる。専門家によると、歴史上の人物への批評まで処罰されないようにするためといい、発信者の認識が問われることから立証のハードルが高い。


 ただ、県警は竹内さんから任意で事情聴取を行った事実はなく、逮捕予定もなかった。発信内容の真偽を自ら判断でき、被告がうそと認識していたとみている。地検も同様の見方を示している模様で、捜査関係者は「死者への名誉毀損の判例を作る覚悟で捜査してきた」と語る。


 立花被告は逮捕前、自身の発信は名誉毀損に当たらないと主張していた。しかし被告の弁護士によると、竹内さんの生前に発信した内容については真実相当性を争わない方針に転換。死後の発信を虚偽と認識していたかは明らかにしていない。


 この方針変更は、早期の保釈実現や、別事件で確定した執行猶予(2027年3月まで)の取り消しを避けるためとの見方もある。


 被告側は竹内さんの妻に示談を申し込んだが、妻は拒否して厳罰を求めている。実際に被告が公判でどのような主張をするかは見通せていない。【木山友里亜】



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