香港・高層マンション火災 死者128人に 日本は大丈夫?“避難の基本”と合わせて専門家に聞く【Nスタ解説】

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2025年11月28日 20:49  TBS NEWS DIG

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TBS NEWS DIG

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香港の高層マンション火災は、発生から2日以上が経過しました。

【写真で見る】真っ赤な炎をあげ…8棟中7棟が焼けた高層マンション

「自分のマンションは大丈夫なのか」と、不安になっている人もいるかもしれません。日本でも同様の火災が起きる可能性はあるのでしょうか?(11月28日「Nスタ」午後5時すぎの放送より)

高層の消火活動 「はしご車が届かない建物」は規制強化

南波雅俊キャスター:
香港の火災の様子を見ると、31階建ての高層マンションに地上からの放水が届かないという状況がみられました。

日本の場合は、「消火活動」という点はどういう状況なのでしょうか。

元東京消防庁・麻布消防署長の坂口隆夫さんによると、▼11階以上の各部屋には「スプリンクラー」の設置義務、▼7階以上の建物には「連結送水管」の設置義務があるということです。

3階以上の全ての階にこうしたものが設置されていて、高層階にはホースも準備されているため、消火活動が難航して延焼することは考えづらいといいます。

元東京消防庁・麻布消防署長 坂口隆夫さん:
11階以上と10階以下、31mを超える建物と30m以下で基準が全く異なります。11階以上、31m以上超えると、はしご車が届かないため規制が強化されています。

日比麻音子キャスター:
今回の火災が起きた香港のマンションは、40年以上前に作られた建物だということです。日本の古い建物はどうなのでしょうか。

元東京消防庁・麻布消防署長 坂口隆夫さん:
日本のマンションは、古いマンションでもそれなりに安全性が確保されています。私は、日本のマンションの安全性は世界でもハイクラスだと思っていいと思います。

一部屋ずつの耐火構造 延焼しにくい日本の基準

南波キャスター:
香港のマンション火災では、建物同士の距離の近さもポイントになっています。

日本において、建物の距離の基準はどうなっているのでしょうか。

建築基準法に詳しい秋野卓生弁護士によると、マンション間の距離は、防火、日照、衛生など考慮して、都道府県の基準で審査(建築基準法第86条)しているということです。

また、元東京消防庁・麻布消防署長の坂口さんによると、耐火壁・耐火床など、1部屋1部屋が延焼しにくい構造になっているといいます。

元東京消防庁・麻布消防署長 坂口隆夫さん:
ビルなどの日本の耐火建築物は面積で防火区画をしたり、階段室は耐火構造で囲って防火扉を設置したりと、そういう安全性ができています。

マンションはそれにプラスして、1住戸ごとに燃えない構造になっているので、非常に安全性が高いと言えると思います。

「フォーサイト」元編集長 堤伸輔さん:
現地の消防活動に携わっている知人がいます。防護服のようなものを着て入っているそうですが、建物の中の温度が高くなっていて、下の階から上の階へ救援に入ろうとしても、近づきにくいという話を聞きました。

今回、香港のマンション火災の場合は、外側の足場に使われた素材が火の周りを早くしたというような現地の報道もあります。

2017年にはイギリス・ロンドンでも24階建てマンションの火災が発生し、72人が亡くなりました。その際も、外壁の被覆材に違法な物が使われていて、一気に燃え上がったということで、今回の火災と状況が似ています。

エレベーターはNG!火事の時、どう避難する?

南波キャスター:
日本で火事が起きた場合、どのように避難したらいいのでしょうか。

▼エレベーターは使用NG
・停電で止まる
・閉じ込められてしまう危険性がある
・31mを超える建物(11階が目安)では、「非常用エレベーター」が設置されていて停電時でも動くが、消防隊員が消火活動で使用

▼基本は「階段」で避難
・壁の耐火性が高い

▼ベランダの「避難はしご」
・玄関の前で火災など、階段使用が困難な場合に使用するもの

元東京消防庁・麻布消防署長 坂口隆夫さん:
日本のマンションは、階段とベランダの「2方向避難」ができるようになっています。階段が使用できない場合はベランダから、ベランダが使用できない場合は階段から避難ができます。

隣の(部屋の)ベランダとの間には隔て板がありますが、それを破ってまずは隣のベランダに避難。ベランダに設置されている避難ハッチには、避難はしごが格納されていますので、それを下の階のベランダに下ろして避難をする。それを繰り返すことで地上まで避難できるということです。

日比キャスター:
避難経路や避難はしごの使い方は確認しておきたいですね。

==========
<プロフィール>
坂口隆夫さん
市民防災研究所 理事・特別研究員
元東京消防庁麻布消防署長
2016年の「新潟糸魚川大規模火災」などを調査

堤伸輔さん
国際情報誌「フォーサイト」元編集長
BS-TBS「報道1930」ニュース解説

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