行列の待ち時間は1分でわかる! 日常に潜む面白い「算数」

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2025年11月29日 09:01  日刊SPA!

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 人気のラーメン屋で行列ができたり、人気のテーマパークでは数時間並ぶのも当たり前。ただ、せっかく並んだのに想像以上に時間がかかり、次の予定に行くために並ぶのを諦めてしまったこともあるだろう。
 そんなとき、行列の待ち時間を見積もれたら……。「実は算数を使うと、ある程度の行列の待ち時間を見積もることができるのです」と話すのは、東京富士大学経営学部教授で、『難しい式はいらない大学教授の秘密の授業 人生が変わる算数』などの著書を持つ鬼木一直先生だ。

「厳密に計算しなくても、おおよその値がわかるだけでも目安になってとても便利ですよね。算数は私たちの身の回りの日常に数多く存在します。特別な勉強をするのではなく、日常におけるちょっとした疑問に対し、算数が活用できるんです」(鬼木先生)

 今回、そんな日常に潜む「算数」の面白い事例を教えてもらった。

◆◆待ち時間は簡単に予測できる!

 行列ができているお店で「どれくらいの時間がかかるんだろう」と思ったとき、簡単に「待ち時間を見積もる方法」があるという。

「それは、『並んでいる人数を自分の後ろに1分間に並ぶ人数で割ると、それが待ち時間になる』というものです。これは『リトルの法則』と呼ばれています。具体例で説明しましょう。

 例えばテーマパークのアトラクションの行列に並ぶとします。およそ90人の列の最後尾に並びました。自分の後ろに並んだ人数を1分間計ってカウントしたところ、6人増えました。この場合、先ほどのリトルの法則を用いると、

90÷6=15

となり、だいたいの待ち時間が15分間と見積もれるというわけです」(鬼木先生)

 なぜ先頭の減っていく人数を数えないのかという疑問が頭に思い浮かぶかもしれないが、先頭は家族連れがまとめて呼ばれたり、急に多くの席が空いたりするので、むしろ後ろに並んだ人数を数えたほうが安定した値を得ることができるというわけだ。

「リトルの法則は、一見複雑に見えるシステム全体の振る舞いを、簡単な平均値の関係式で理解できる強力なツールです。

 注意点としては、この法則が通用するのは、あるシステムや状態が時間経過とともに変化せず、一定の状態を保っている『定常状態』にある場合のみのため、お店が開店したばかりや急激に空いてきたときなどは、この法則は当てはまりません。

 とはいえ、およその待ち時間を知るのには、かなり有効な手法です」(鬼木先生)

 お客さんの並ぶスピードが遅い場合には、5分間計り、自分の後ろに並んだ人数を5で割れば、さらに精度が高くなる。

「ちなみに、この考え方のもとになっているリトルの法則は、次のようなことに応用されています。

●経営学:生産計画、在庫管理、サービスレベルの評価など
●コンピュータサイエンス:ネットワーク設計、データベース設計、オペレーティング、システムの設計など
●交通工学:交通流の分析、渋滞の予測など

 実にさまざまな分野に応用されています。ぜひ、実践的な数の見積もり方法として活用してみてください」(鬼木先生)

◆◆日常に取り入れて遊び感覚で身につける

 好きな人と嫌いな人にはっきり分かれる教科といわれる算数だが、鬼木先生は「算数は身近なところに多くある」と話す。

「以前、教育系の学会に参加したとき、とある学生と出会いました。その学生は数学科で勉学に励んでいるとのことでした。『数学は面白い?』と聞くと、『面白いです』と答えてくれました。『日常で数学をどのように使っている?』と聞くと、しばらく考えて、『買い物のときの計算ぐらいですね』とのこと。微分・積分はもとより、複素数、幾何学、代数学など難しいことを勉強していながら、四則演算くらいしか思いつかないと言うのです。

 その後も、いろいろな人に算数の活用法について聞いてみましたが、やはり、多くの人が『計算』と答えるのです。それがダメということではありませんが、算数が教科としての勉強の域を出ていないと感じました。

 しかし、実際には日常には算数が溢れています。音楽の音階は簡単な分数で作られていますし、料理には多くの割合が活用されています。スポーツもデータ分析の時代です。さらには、株や投資にも算数が必要ですし、刑事事件捜査にも多くの確率が使われているのです。

 今の小学生はプログラミング教育が必須になっていますが、プログラミング教育の目的の一つは、論理的な考え方を身につけることです。論理的思考の根本も算数といえます」(鬼木先生)

 このように、算数は多くの分野と強い関わりを持っている。

「算数には柔軟な考え方、捉え方があるということを知っていただき、今まで感覚に頼っていたものを、少しでも算数を使っていい方向へ向かうヒントにしてほしいのです。算数の力は論理的思考に繋がっていきます。

 今まで何となく選んでいたものを、『本当はどっちが多いのだろう?』『一番安く買える方法はなんだろう?』と考え始めた時点で、それは『算数』の考え方です」(鬼木先生)

「その程度でいいの?」と驚かれそうだが、鬼木先生は「それで十分。日常に算数を取り入れ、遊び感覚で算数を身につければいいのです」と言う。

「講演会などに呼ばれたとき、『うちの子どもは算数が苦手で、どうしたらいいのでしょうか?』という質問を何度も受けました。人には得意不得意があるものの、『せめて嫌いにならない勉強の方法はないのか?』と考えるようになりました。算数は、基本的な考え方の積み重ねです。公式を覚えるのではなく、イメージを膨らませ、一つひとつの意味を理解することがとても重要だと考えています。

 私には長女とその下に男女の双子がいますが、日常に算数を取り入れ、遊び感覚で算数を教えています。実際は算数という言葉を使うことはほとんどなく、『このケーキ、どうやったら5人で分けられると思う?』というようなやりとりをしています」(鬼木先生)

【プロフィール】鬼木一直(おにき・かずなお)

東京富士大学教授。東京工業大学卒業、東京工業大学修士課程理工学研究科修了。ソニー株式会社入社1年目にハードディスク垂直記録方式の薄膜磁気ヘッドの記録再生確認に成功、その後、世界初の大型液晶ディスプレイ、愛知万博出展50m×10mの超巨大レーザーディスプレイデバイスなど数多くの開発に携わる。その間、出願した特許件数は43件に及ぶ。
著書に『デキる社会人になる子育て術〜元ソニー開発マネージャが教える社会へ踏み出す力の伸ばし方』(幻冬舎)、『パパだからデキる子育て術〜元ソニー開発マネージャが教えるはじめてでも楽しい育児の秘訣71』(幻冬舎)、『What Only DAD Can Do〜Real-Life Parenting Lessons from a Father’s Journey』(サンライズパブリッシング)。最新刊『難しい式はいらない大学教授の秘密の授業 人生が変わる算数』が発売。

<構成/日刊SPA!編集部>

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