画像提供:マイナビニュース長野県中野市は、0歳児の午睡(昼寝)時における安全対策を強化するため、天井カメラ型の午睡チェックシステム「ベビモニ」を市内6つの公立保育園すべての0歳児保育室に導入した。11月11日には、同市立さくら保育園で記者向けの取材会が開かれ、市の担当者や協力企業が導入の背景と期待される効果を説明した。
○「ベビモニ」などを活用した安全な保育環境づくり
冒頭では、中野市保育課の鈴木克彦課長、土屋永志課長補佐が今回の取り組みについて紹介。中野市は「子ども・ど真ん中」を施策のテーマとして掲げ、子どもの安心・安全を最優先とした保育環境の整備に取り組んでいる。
近年はデジタル技術を活用した“保育DX”にも力を入れており、NTT東日本 長野支店の支援のもと、本年度は午睡チェックシステムの導入に加え、おひるね用メッシュベッド、完全給食など3つの施策をスタートさせた。「安全性の向上はもちろんのこと、保育士や保護者の方々の負担軽減にもつながる取り組みを進めています」と土屋氏は語った。
続いて、午睡チェックシステム「ベビモニ」を提供するEMC Healthcareの大槻茂氏が、システムの構造と機能を紹介した。
ベビモニは天井に設置したカメラが子ども一人ひとりの姿勢をAIで検知し、「うつ伏せ寝」を感知するとアプリを通じて保育士のタブレットにアラートを送る仕組みを備える。1台で約10人を同時に監視でき、5分に1度の自動記録によって午睡チェック表も生成されるため、保育士の業務負担を大幅に軽減できるという。同氏は「保育士にも、子どもにもやさしい午睡見守りセンサーとして、安全性と効率性を両立します」と説明した。
導入支援を行ったNTT東日本 長野支店の松島敦氏は、「保育現場では、ICTを活用した働き方改革が求められています。デジタル技術を活用し、地域密着型のサポートとともに、安心・安全な環境づくりを後押ししていきます」と強調。
また、保育・教育施設向け業務支援ツール「CoDMON(コドモン)」と連携することで、午睡情報を含めたさまざまな保育情報を一元管理できる点にも触れ、「現場の稼働削減につながり、子どもと向き合う時間を増やすことができます」と語った。
○静かな午後、0歳児保育室で見守られる安心の午睡時間
この日は、実際の午睡の様子も公開された。天井カメラで検知しながら、保育士が子どもたちの様子を確認する光景が見られ、0歳児クラス主担任のある保育士は「もちろん保育士の目で確認することは続けていますが、さらに“もう一つの目”が加わることで安心感が大きくなりましたね」と話す。
さくら保育園の0歳児保育室では、導入されたばかりの午睡チェックシステムのもと、子どもたちが静かに寝息を立てていた。専用ベッドに横たわる園児は、いずれもゆったりと身体を預け、保育士が一人ひとりの体勢を丁寧に整えていく。子どもにはそっと手を添え、呼吸の確認と姿勢の調整を落ち着いた所作で行う姿が印象的である。
園内にはあたたかな陽が差し込み、子どもたちの寝顔をやさしく包む。保育士は寝具の乱れを直しながら、わずかな変化も見逃さないよう寄り添っていた。ベビモニの天井カメラは、ちょうどその視線を補うように稼働しており、園児の姿勢を継続的に検知することで、保育士の負担軽減と安全確保を両立している。
午後の園内は静けさに満ち、保育士とICT支援による「見守りの二重体制」が自然に溶け込んでいた。安心できる睡眠環境が整うことで、保育の質が高まり、保護者にとっても大きな安心材料となる様子が伝わってきた。
○「安心・安全」と負荷軽減をさらに強化、進化する中野市の保育施策
中野市では今年度、午睡チェックシステムに加えてメッシュ構造の午睡ベッドも導入。通気性が高く、うつ伏せになっても呼吸を妨げにくい構造になっており、さらなる安全性の向上につながっているという。また、これまで家庭から持参していた布団が不要となり、保護者の負担軽減にも寄与している。
さらに10月からは、3歳以上児の「完全給食」も本格的に開始。家庭から主食のご飯を持参する必要がなくなり、保護者からの要望が大きかった取り組みが実現した。
中野市が本年度に導入した午睡センサー・午睡ベッドの施策は、いずれも県内19市で初の試み。また、完全給食は諏訪市、飯山市に続き3番目の試みとなる。安全性を高めつつ、保育士の働き方と保護者の負担軽減を両立するこれらの取り組みは、今後の自治体における保育DXのモデルケースとなりそうだ。(タマク)