
KDDIは2025年11月28日、5G SAでの低遅延を実現する通信技術「Low Latency, Low Loss, and Scalable Throughput」を一部エリアの基地局に国内で初めて導入した。対象エリアは北海道、千葉、東京、神奈川、石川、福岡の一部で、今後順次拡大する。
L4Sは2024年6月に3GPPで5G Advancedの要素技術として標準化されたもので、ネットワーク混雑時に発生するデータ滞留や欠損を抑える仕組みを備える。混雑時にはパケットが滞留しやすく遅延が増加するほか、送れなかったパケットが破棄されると再送が生じ、さらに遅延が蓄積する。L4Sでは混雑を基地局が早期検知し、利用者端末のアプリ、続いてサーバへと段階的に通知することで、サーバ側が送信速度を即座に調整できる。これにより無駄な再送が抑制され、途切れや遅延の少ない通信が可能となる。
●実証実験でレイテンシと映像の途切れ時間が大幅改善
導入にあたってはエリクソン・ジャパンと共同で、花火大会に相当する混雑環境を想定した映像伝送の検証を実施した。60秒間の映像を送る条件下で、L4Sを利用した場合はレイテンシが約50msから約30msへ縮小し、リアルタイム性が求められるオンラインゲームの推奨値とされる30ms以下に収まった。また、映像が途切れた時間は合計12.6秒から0.1秒へと大きく改善した。
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KDDIは、こうした効果を自動運転車両やドローンの遠隔監視、AIサービスなど、混雑時に安定したリアルタイム性が求められる分野で生かす方針だ。混雑に左右されない通信品質の確保が求められるユースケースの裾野は広く、L4Sがその基盤として機能するとの見方を示している。
●Sub6最多展開の強みを背景に5G SAを強化
KDDIは3.7GHz帯と4.0GHz帯のSub6基地局を4.1万局展開しており、国内MNO4社では最多となる。Sub6エリアでは5G SAサービスをすでに提供しており、2026年3月までに人口カバー率90%超を目指す。ベースとなるエリア品質の底上げに加え、5G Advancedやネットワークスライスの導入など、次の通信需要に向けた技術強化も進める。
KDDIはAI時代の本格化を見据え、5G SAを軸としたネットワークの進化を継続する考えだ。L4Sはその第一歩となり、通信混雑が発生しやすい都市部だけでなく、混雑状況が変動しやすいイベント会場や交通インフラなど、幅広い環境での品質向上が期待される。今後のエリア展開と実用化が通信サービス全体にどのような効果をもたらすか注目される。
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