ガンランナー(17年ドバイWC、撮影:高橋正和)【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】
◆知っておきたい! 血統表でよく見る名馬
【ガンランナー】
現役時代にBCクラシックをはじめアメリカのダートG1を6勝。米年度代表馬に選出されました。古馬になって本領を発揮したように成長力のあるタイプです。
種牡馬成績も優秀で、初年度産駒から米最優秀2歳牝馬のエコーズールー、プリークネスSの勝ち馬アーリーヴォーティングをはじめ6頭のGI馬を出し、その後もコンスタントに活躍馬を生み出しています。フォーエバーヤングのライバルで2024年の米最優秀3歳牡馬のシエラレオーネも同産駒です。2026年の種付け料はイントゥミスチーフ、ノットディスタイムと同額の25万ドル(約3900万円)。北米の種牡馬のなかでは最高額です。
父はアルゼンチン産のキャンディライド(現役時代に亜米で6戦全勝)。父系をさかのぼるとミスタープロスペクターに到達します。母クワイエットジャイアントは米年度代表馬セイントリアムの半妹にあたる良血で、現役時代に米G2を勝ち、ガンランナーの他に米G3勝ち馬プリティアナを産んでいます。
日本ではまだ大物は出ていませんが、JRAで走った17頭中9頭が勝ち上がり、ドライゼ(ブリーダーズGC3着)、パルクリチュード(フラワーC3着)などを出しています。
基本的にはダート向き。ただ、スピードがあるので芝でまったく走れないわけではありません。距離的な適性は幅広く、配合によってさまざまなタイプが出ています。2歳戦から素質を開化させ、休み明けを苦にせず、人気に推された際の信頼性が高めです。名血クワイエットアメリカンを抱えているので母方に入っても成功する可能性が高いでしょう。
◆血統に関する疑問にズバリ回答!
「トップクラスの種牡馬の高額な種付け料は妥当といえますか?」
先日、社台スタリオンステーションとブリーダーズスタリオンステーションに繋養される種牡馬の、2026年の種付け料が発表されました。1000万円以上の種牡馬は以下のとおりです(カッコ内は2025年種付け料との増減)。
2500万円 キタサンブラック(+500万円)
イクイノックス(+500万円)
2000万円 キズナ(±0)
1800万円 コントレイル(±0)
1500万円 エピファネイア(+300万円)
1200万円 ロードカナロア(+200万円)
スワーヴリチャード(-300万円)
1000万円 ドウデュース(±0)
リアルスティール(+500万円)
サートゥルナーリア(±0)
種付け料を設定する上で重要なのは、種牡馬としての能力だけでなく、需要と供給のバランスです。産駒がデビューする前の若い種牡馬でも、種付け申し込みが殺到するなら、種付け料を上げざるをえません。イクイノックスはこのパターンです。
種付け料はさまざまな思惑で決まります。チャンスを求めて交配頭数を増やしたい若手種牡馬は種付け料を低めに設定しますし、健康上の懸念があり交配頭数を絞りたい種牡馬は高めに設定します。すべて理由があってその価格となっています。その価格が妥当かどうかは生産者が考えることで、この種牡馬は高すぎる、この種牡馬はお得だ、という判断は人により異なるでしょう。交配頭数が多すぎず少なすぎずという種牡馬は、おおむね妥当な種付け料といえるのではないでしょうか。